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俺が、黒ずくめの人物を注意深く見ていると、憲兵が控え室の扉を開いた。
「では次!第二試合の出場者を読み上げる!名を呼ばれた者は直ちにこちらの扉の前にお集り頂きたい!」
扉の傍に居た別の憲兵に何やら紙が渡され、それに目を通した兵が室内にハッキリと響き渡る程の声音を放った。
その場に居た全員がそれを聞いて兵に注目する。
「では、第二試合!一人目は……セグ・セイダース!」
おぉぉ……と、押さえながらも低く唸る様な感嘆の声がチラホラと上がる。
俺は名前を呼ばれて立ち上がると、急ぐでもなく普通に扉の前に歩み寄った。
「―――対するは、……ユング・ロイド!」
その名前を聞いて、控え室に戦慄が走る!
俺は、先程眺めていた似顔絵のプロフィール内、名前の欄に同じ名前の書かれたものを思いだし、ハッとなってその似顔絵の主を見た!
視線の先にはあの黒ずくめの男が。
いや、名前からすると女なのか?
ユングと聞くと、男女どちらでも通用する様な名前なのだ。
名前の綴りも、普通に読めば”ジャング“と読めるし、その発音なら男らしい名前だったのだが。
俺のそんな複雑な心境を余所に、おおぉー!!と、出場者の残り全員が感嘆の声を上げた。
ユングと呼ばれた黒ずくめは、俺のとなりに来ると、無言で小さい会釈をし、すぐに扉の方を向く。
「よろしい。では、これからお二人は、この扉の向こうを歩いていただき、一つ目の交差点で二手に別れて頂きます。セグ殿は西側へ。ユング殿は東側へ。本戦は東西から双方向き合う形で入場頂き、ステージで礼、のちの合図で試合開始となります」
「わかった」「………」
俺は声を出して、ユングは無言のまま頷いた。
「勝ち残った者は、そのまま反対の選手控え室へ移動願います」
「ああ」「………」
またもやユングは無言だった。
「ふむ。では、ご武運を!」
控え付きの兵はそう言って、俺達の前を閉ざす木造の扉を開けた。
今大会で、予選の時から通ってきた選手用通路。
何度見てもジメジメとした薄暗さには馴染めない。
予選の時は四つのステージを南北から挟んで入場していたから、南北に其々配置された控え室から道なりに進んで入場したが、本線では東西から入場という事で、現在地の北の控え室からは左右に曲がらなければならなかった。
日の光も殆ど届かない石造りの通路は、予選では道なりだったから進みやすかったのだが、途中の曲り角など気付かなかった。
どこら辺にあったのだろうか。
俺は、そんな小さな疑問を振り払う様に軽くふっと息を吐いて一歩足を進めた。
その直後、ユングの足も前へ移動を始め、俺の方が若干先を行く様に前へ進む。
しばらくして。
薄暗い通路を進んでいると。
「うぐッ!?」
俺は突然の息苦しさに、咄嗟に声をあげた。
「そっちじゃない」
不意に耳に届いた声は、低音の女性の声だった。
俺は、どうやら道を間違えたらしく、曲がらなきゃならない交差点を曲がらずに進もうとしていた。
「……っかはっ!ケホッ!ケホ………!」
そこへ、ユングが俺の後ろ襟を掴んで止めたのだ。
一瞬、喉を絞められた感覚に咳き込む。
「……あ、ありがとう」
と、言うべきなのか迷ったが、一応礼を言っておく。
しかし、当のユングは既に東へ歩みを進めていた。
「………」
返ってこない返事に複雑な心境で口を閉ざす。
教えてくれたのだから、良いヤツなのだろうが、無口で無愛想な点では相容れない様だ。
しかし、声を聞いて女だと確信した。
それについては大きな収穫だったかもな。
そう思って、俺は西へ進路を執る。
間もなくして道なりに曲がると、外の明かりが見えてきた。
そして、会場へ出ると盛大な歓声に包まれる。
それは、ゴッツ達三人に会ったからか、フランドゲイル討伐から帰ったタラックの町の、あのお祭り騒ぎにも似た、口笛等も混ざる明るい大歓声と重なって聴こえた。
似たような歓声は他にも味わった事もあるが、ここに語られていない話はいつかまた、書き綴るとしよう。
そうこうしている内に、俺はユングが一足先に待つステージに上がる。
そこで、兵に言われた様に礼をすると、ユングも俺と合わせて礼をした。
二人で揃って中央へ歩み寄る。
そして。
「第一回戦、二試合目は、セグ・セイダース!」
オオォォーーッッ!!!
響動めき混じりの唸るような歓声。
「―――対するは、ユング・ロイド!!」
オオォォーーッッ!!!
アナウンスの声が発せられると同時に一瞬は静まり返った会場だが、ユングの紹介で再び同じテンションの歓声が。
観客達の興奮が冷めやらぬ内に。
「それでは……はじめ!!」
ステージ上の審判から、開始の合図が放たれたのだった!




