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「で、とりあえず今は俺とレティでお茶を嗜んでいた訳だが、グルゴとムーアは何でここに来たのかな?」
「なんだ?私達が居たら邪魔か?」
「釣れないなぁ、セグは」
レティ行着けの喫茶店で、俺とレティは今日会う約束をしていたから、其々コーヒーと紅茶を嗜んでいたのだが、そこへなぜか、約束をしていないはずの全身鎧を着込んだドワーフのグルゴ、それにムーアと名乗る現国王メレルの姿があった。
「グルゴ。そもそもお前は約束も無いのにいきなり来たんだ。それが解っていたら釣れないも何も無いだろ?」
「おお。グルゴもサプライズで来たのか」
俺の話を聞いて、グルゴに仲間意識でも感じたらしいムーアが白い歯を見せて笑う。
「いや、ムーアも、俺は呼んでない上に勝手に俺の大会出場手続きを進めてるし、二人ともなんなんだよ」
「いやあ、実はセグに、大会出場の景気づけにプレゼントを造っててさ、それを届けに来たんだよ。出ることは間違いないと思っていたからね」
屈託の無い愛嬌たっぷりの笑顔で、無二の親友はそう告げた。
「悪いが、そんな鎧なら俺は要らんぞ?」
俺は、グルゴが着込んでいる全身鎧に視線を移して拒否を示す。
「え~!それヒドイなぁ!これ僕の力作なのに~」
まるで子供の様にグルゴがひねた。
「お前、俺が全身鎧を着ないのは知ってるだろ?着たら素早さが落ちて余計攻撃を食らいやすくなるっつーの」
幼馴染みで無二の親友は、俺がスピードブーストを使える事は知っているが、余程の自信作だったのだろう、自らが錬成した鋼鉄の鎧を何としてでも俺に来てほしい様だ。
「セグがこれを見たら着たくなっちゃうかな~、なんて……」
「ならない!」
調子の良い誘いに、即座に否定を差し込む。
「私はたまの休務だったから、こうして足を運んだ訳だ。最近はセグの旅の話が楽しみでな。冒険というものに出られない私の立場に同情してくれるなら、たまには話を聞きに来ても良いであろう?」
グルゴが「そんな~……」等と泣き言を言っている所を差し置いて、ムーアがここに来た理由を述べた。
「……まあ、そう言う事なら。でも、同情はしない。だって俺なんかよりも何不自由無い暮らししてるだろ?」
俺はムーアに流し目で睨む。
「あ、ああ、まあなぁ……」
ムーアもとい、メリル王とは、俺がドラゴンを倒した時から今のような関係になっている。
ドラゴン以外にも数々の害獣認定されたモンスターの駆除をこなしながら、色々な国を旅していた事が王の耳にも入っていた様で、俺がドラゴンを倒して帰った時、王自らが褒美を取らせるという事になった。
そうして、王から直々に賜る褒美を受け取った時、二・三交わした会話で、翌日、俺の家に来る事を約束させられた。
その来訪時に旅の話をした事で、メレル王は俺の旅話の虜になったのだった。
しかし、虜になったのはあくまで”話の内容“であって、俺の”話し方“ではなかった。
その一週間後に二回目の来訪の約束を交わし、その来訪時に王が語り部や吟遊詩人を連れて来られたのには正直驚いた。
「お前の話は、内容には見所があるが話し方がつまらん。せっかくの心を踊らせる大冒険が、お前の話し方では面白さが半減するのだ」等と、人が傷付く事をサラッと言い退けた王は、連れてきた語り部や吟遊詩人に俺の話を聞かせ、「国の英雄の武勇伝である。これを広め、我が国の名誉を他国に知らしめよ」と言って語り部達を旅に出させた。
お陰で俺の知名度は格段に上り、それと共に、国中の人の守護五天への期待も膨れ上がった。
そうして、今に至る。
「……で?今日は語り部は連れてないのかよ?」
俺は、自分の語り部能力の低さを受け入れて、今はもうあの時の事は何とも思ってないのだが、あの時に俺が少なからず傷付いた事を王は後になってから知り、ばつが悪く思っている所へ皮肉を込めて言った。
「あの事は謝ったであろう。そう皮肉を言わないでくれ」
「はは。わかったよ。冗談だ」
そう。
俺が傷付いた事を知った王は、その立場を誇示するでもなく素直に謝ってくれたのだ。
後から傍付きに聞いた話では、俺が喩え守護五天の息子と言えど、その名誉はあくまで父のものであり、その子である俺の様な者は爵位すらも無いに等しく、王がその様な立場の者に頭を下げた事は未だかつて無いと言う。
城の重鎮でさえ、王は謝った事がほとんど無いと言うのだから、俺には本当に何か特別に見てくれている事が窺えた。
年も俺より三つ上なのだが、近しい事もあって親近感もあったのだろう。
また、あの時、王の前でも包み隠さずに不快感を露にした俺が、裏表の無い者だと印象付け、王も堅苦しい城内の者達と接しているよりも、俺達と接している時の方が自然体で居られると感じたらしい。
それが特に居心地の良さを感じさせたと後日談で王から聞いて、こうしてお忍びで立場を抜きにするから、自分を友人として迎えろと、その時一緒に居たレティと共に俺に言ってきたのだった。
グルゴもその直前まで居たのだが、残念ながらその時グルゴは納品のついでに寄っていただけで、すぐに仕事に戻らなければならないと言って、ムーアとは挨拶程度に別れた。
従って、グルゴにとっては俺達が普通の友達の様に接している事が畏れ多くてたまらない。
「ち、ちょっとセグ。仮にもムーアはアレだよ?そんな言葉遣いしてたら……」
グルゴは堪らず口を挟む。
仮にも一国の国王にタメ口で話す俺に、ドワーフの幼馴染みは心配を通り越して恐怖すら覚えながら、そう告げるのだった。




