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俺は、国民の期待というものへの重みを噛み締めながら、ドラゴン討伐後の事を思い出す。
ドラゴンを倒し、オーリーへ帰ると、気付けば瞬く間に国中で噂が広がった。
すると、それまで各地で問題になっていたモンスターを、幾つか討伐してきた事も、国中の人が知れる切っ掛けとなった。
そうして、俺の活躍が知れ渡ると、次期守護五天の座への期待も高まったのだった。
そんな期待をされては、応えなくばセイダースの名が折れる。
俺は、そんな思いから守護五天になる事を決意したのだった。
「おっ!?なんだ、グルゴも来ておったのか!?」
再び店の入り口の鈴が鳴り、入ってきた人物に目をやると、例のドラゴン退治以来付き合いが始まった、ある人物が視界に止まる。
「……えっ?あ、あれ!?」
「「「シッ!!」」」
「―――名は言うなよ!?」
その人物の呼び掛けに、グルゴが危うく驚きながら名前を口走る所だった。
それを三人で慌てて止め、新たに店に入ってきた人物がさらに念を押す。
「今はムーアと呼べ。良いな?」
「……は、はい。わかりました」
ムーアと名乗った人物は、そうグルゴに伝えると、畏まった姿にさらに注意する。
「その改まった態度も無しだぞ。私はお前達の友人だ。そのつもりで接するのだ」
「……は、……あ、いや、わかった。うん」
グルゴがそうまで畏まる相手。
そのムーアと名乗った人物こそが、現、オーリー・ヴァン・メルン国王である、メレル・レイ・ヴァーン・オーレイルズだった。
ちなみに、レイは男性、ヴァーンは元首、オーレイルズはホビットを代表する一族と言う意味だ。
国王は、初代がその座に就いた時代、ボビットの文明は発展が乏しくセカンドネームが無かった為、代表や元首と言う意味の敬称をそのままネームに取り入れた。
つまり、国王の家系なら分家にもオーレイルズと言うフォースネームがあり、国王になったらヴァーンを引き継ぐ。
国王ではない直系はヴァニル、分家はルヴァンというサードネームがあり、其々男性ならレイ、女性ならサラというセカンドネームが付けられた。
そんな、建国からの名前だが、ホビットにとっては重く意味のある名前だった。
「それでよい。して、セグよ。もう大会の手続きは済ませたか?」
メレル王もといムーアが、グルゴが理解した様子を見てからそんな事を切り出した。
「いや、まだだ。どうせまだ閉め切りまでは一ヶ月以上あるだろ?俺はその前にひと旅行ってこようかと思っているんだが……」
「何を言っておる。そんな事をしていると、閉め切りが終わって出られなくなるぞ?」
「……てか、なに自然に話してんの、セグ。相手はメ……じゃない、ムーアだぞ?」
俺が何の躊躇いもなく普通に話す様子を恐る恐る見守るグルゴ。
「大丈夫よ、グルゴ。ムーアがムーアの時は、返ってこうしないとダメなの。私も最初はドキドキしてたけど、グルゴだって初めてじゃないでしょ?」
レティがそう言ってグルゴを見るが、グルゴは。
「そうは言っても、僕は初めて会った時からすれ違いばっかりでほとんど挨拶だけだったし、何度も顔を会わせてるのに、まともにゆっくり話すのはお城の時と今回くらいだから……」
「ああ、そうだったのか。だけど、外では本当に普通で良いんだ。だから言葉遣いとかは気にするな」
俺がグルゴにそう伝えると。
「なんだレティ。最初の頃は私に恋でもしていたのか?」
「う~ん、そう言うドキドキじゃないんだけど」
等とムーアとレティが冗談を言い合う。
「まあ、何にしても俺は絶対に大会に出るさ」
俺は、レティの答えにどことなく安堵してからそう伝える。
「そうか。セグならそう言うと思って、さっきはああ言ったが実はもう手続きは済んでおる」
「はあ!?」
「えっ!?何ソレ!?あれって本人じゃなくても手続きできるの!?」
ムーアの驚きの発言に、俺とグルゴは思わず疑問を呈した。
「いや、本人でなければ本来は無効となるのだが、確認したらまだだったから、”私が“窓口の者に伝えておいたのだ」
「おいおい、勝手に俺の手続きするなよ。職権乱用だぞ?それに、俺は一応、あれで気持ちを切り替えるとか、心新たに決心を固めるとか、心の準備に必要な過程としてとっておいたのに」
俺がそう言うと。
「へえ。ドラゴンを倒したセグでも心の準備なんて要るんだ?」
レティは不思議そうな顔で俺を窺う。
「それはすまなかった。私も良かれと思ってやったんだ。何なら今からでも取り止めておくが」
ムーアが今更そんな事を言った。
「も、もう良いよ。どうせ出るのは決まってるんだから、手続きできたなら問題ない」
レティの前でカッコ悪い所は見せたくない。
そんな思いで強がった。
しかし、さっき言った言葉は本当だった。
いくらドラゴンを倒したとしても、もしかしたら俺以外にもドラゴンを倒せるヤツも居て、退治には行かないまでも大会には出場するかもしれない。
俺は、まだ見ぬ強敵が居るかもしれない不安だけは未だ拭えない自分を鼓舞するために、また、直前で手続きした勢いに任せて大会に出るつもりもあって、手続きを遅くしていたのだった。
「じゃあ、これでセグが出る事は決まったね」
「ああ、そうらしいな」
グルゴの笑顔に、俺は頭を掻きながら答える。
それに合わせて、レティもムーアも、周りから目立たない程度に俺の大会出場を祝福するのだった。




