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グルゴはドワーフなのだが、ドワーフと言えばあのモッサリとした髭を想像する者が多い中、珍しくアゴヒゲをしっかり剃って、濃く青い生肌のアゴを露にしていた。
と言うのも、ドワーフの中では数少ない、エルフとの取引をしている工場に勤めているからだった。
美を好むエルフは、ドワーフの毛むくじゃらな外見を好まない。
従って、エルフに気に入られる為には、種族の共通の誇りである髭を剃らなければならなかった。
その姿は、ドワーフ達の中では異端ではあるが、アゴの青さと脂肪を蓄えた体格を除けば、我らホビットとほとんど見分けがつかない。
体格などは、ホビットにも太った者も居るから尚更だった。
「……それで、何の用で来たんだ?」
俺が素っ気なく言うと。
「何だよ、冷たいな。三ヶ月ぶりの再開なんだから、もっとこう……。おお!久しぶり!元気してたか!?とかあっても良いんじゃないの?」
そろそろお気付きかもしれないが、グルゴはドワーフでありながら、頑固で気の強い性格を持ち合わせてはいない。
いや、物造りなどにかける情熱や意志は他のドワーフに負けないのだが、人との繋りは種族間の壁を作りたくないという自分の信念に沿って、余計な誇りやプライドは捨てると言うのがグルゴのモットーなのだ。
精錬等工場で仕事をしている時には、無口な職人気質で無愛想な一面を見せるが、一歩外に出ればこの通り人懐っこい。
ある意味頑固ではあるが、基本は人の良い、優しい性格なのだ。
そんな所も、ドワーフ社会では異端であった。
「何言ってんだ。お互いに好きな事をやってるんだから、数ヶ月会わない事なんかザラだろ?それに、俺とお前の仲なんだ。そんな頻繁に会えなくても今更他人行儀になる事もない」
「まあそうだね。そんなセグだから、僕はこうして未だに付き合って居られるんだろうな。でもセグは、好きな旅ばっかり行ってないで、ちゃんと騎士団の訓練にももっと出なきゃダメだよ?」
俺にとっての大親友は、そんな俺のダメな所も指摘してくれる。
「規定の三十日はちゃんと行ってる」
「そうじゃなくて。それはあくまで”最低“三十日だろ?実際、勤勉な人はそれ以上に訓練に参加してるって言うじゃないか」
「そんなの、やりたいヤツがやりゃあ良いんだ」
あまりまっとうな事を言われると、子供の様に反発したくもなるものだ。
「まったく。そう言うこと言ってたら、いくらグーリッド様でもセグの事をフォロー出来なくなるかもよ?そうなったら、大会にも出られなくなるんじゃない?」
いや、それは問題ない。
しかし、俺には他の心配もあってグルゴの言葉には反論せず、その事を考えていた。
心配と言うのは、俺の自由が奪われる事だった。
そう。
守護五天ともなれば、旅どころではなくなるのだ。
毎日城に登城して、同盟国の情勢や各国の動きと向き合い、騎士団の管理等も行わなければならない。
それが出来ないなら、最初から守護五天などなるなと父は言う。
しかし、世間のセイダース家への期待はここ数年になって特に大きくなっていた。
それと言うのも、俺が17歳の誕生日を迎えた翌月、初夏の新緑が地上一面を緑に埋め尽くす頃、北西にあるイスラと言う国のバーデスト火山で、リザードドラゴンを倒した事が、最も大きな要因となった。
イスラとは特に同盟をしていた訳でもないのだが、とは言え敵対もしておらず、隣国として貿易では協力体制を執っていた。
そんないわゆる友好国から、ドラゴンの被害を耳にした国王メレルは、これを討伐するために20人もの屈強の騎士達を選別し、派遣したのだが、健闘虚しく一団は半数を失い、半数は大怪我を負って帰還した。
近隣の情勢から、西のドーワ国、南西のルターリン等の不穏な動きや、同盟国であるコルト・コーレリアの交戦状況を鑑み、大隊を向かわせる余裕を失った国王は、ドラゴンの討伐に懸賞金を賭け、旅人に委ねるべくギルドへ依頼したのだった。
それを見た俺は、実力も充分な5人の旅人達とパーティを組み、ドラゴンに挑んだ。
しかし、寄せ集めのパーティは結束も弱く、到着するまでの道程でもモンスター達を相手にした疲れから、ドラゴンを前にして逃げ出す者まで出て、あっという間に散り散りになった。
それでも、俺ともう一人、治癒術師だけはその場に止まり、たった二人でドラゴンに立ち向かったのだ。
治癒術師には、離れた所から俺が下がった時に怪我をしていたら回復を頼み、攻撃は俺一人で担った。
そうして、一時間以上にも及ぶ死闘の末、俺達は何とかドラゴンに打ち勝ったのだ。
この時の話は、他の話も含め、この六年間の旅の話をまた別の物語で語るとしよう。
そう。
俺の旅をまとめた手記でも見れば、その時の話はいつでも思い出せる。
その思い出と共に、今は守護五天になる事の重みを噛み締めていた。




