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――――六年後。
俺は、これまでも旅を繰り返し、数々の害獣討伐等をこなしてきた。
そうしているうちに俺の名声は国中に知り渡り、俺はちょっとだけ有名人にもなっていた。
しかし、有名になったのは名前ばかりで、姿と名前が一致しない人の方が多かった為、普通に外に出ていても誰かに呼び止められる事などは無かった。
それもあって、気兼ね無く例のレティ行き付けの喫茶店に赴き、コーヒーを口に運んでいた。
「とうとう、今年はセグも二十歳を迎える年だから、大会に出るんでしょ?」
そう切り出したのは、レティだった。
いつもの喫茶店で、紅茶を口に運んでから切り出した彼女の言葉は、俺の心を大きく揺さぶる。
「ああ。そうなるだろうな」
この六年の間に、俺の周りの環境は大きく変わっていたのだ。
守護五天の一人、俺の父であるグーリッド・セイダースの引退。
その、中でも一番新しく衝撃的なニュースは、今の俺の心を揺さぶる一番の原因だった。
「お父様の後は、あなたが継がないとね」
「ああ。解ってるさ。そう思って、一応予備騎士団にも入ったし、法術試験も特一級まで取ったんだから」
大人びたレティの微笑みは、俺にこれ以上無い勇気を持たせてくれる。
そんなレティの言葉を、コーヒーを一口咽に流して体に染み渡らせる様に飲み込む。
大会の出場条件は、以下の通りだ。
一、二十歳以上であること。
二、予備含め騎士団に在籍する者。
三、剣や槍、斧等の戦闘経験に長けた者。
四、二級以上の法術試験をクリアしている者。
と言うのが正式な出場条件だった。
俺は、二つ目の条件を満たすため、十五歳になったとき、ようやく入団可能となった予備騎士団に入団した。
予備騎士団と言うのは、読んで字のごとく予備の騎士団だ。
正規の騎士団の様に毎日訓練に明け暮れ、有事に備えて詰所生活を送るものではなく、有事の出兵と、年間30日以上の訓練参加が義務付けられてはいるが、その他は普通に一般的な仕事をして普通に家で暮らす、いわゆる副業的な騎士団である。
幸い、義務付けられた30日と言うのも日にちを選べるので、俺は、旅人稼業が辞められず、なるべくまとめて騎士団の訓練に参加して、他は旅人を本業にしていた。
なぜなら、俺は騎士団の様な拘束的な生活が性に合わないからだ。
やはり、できるだけ自由で居られるならそれに越した事はない。
それに、参加資格は『騎士団に所属するもの』だから、正規か予備かは不問で、正規であれば優秀な者にはシード件が与えられると言う特権があるだけだったのだ。
それならば、予選で負けるような実力ではシードにもなれないし、シードになるくらいの実力があるなら予選からでも負けたりはしないと、タカをくくって予備のまま出場を決めたのだった。
「あっ、セグ!ここに居たのか!」
俺の緊張が高まっている時、突然店の入り口から放たれる声に、思わず振り返った。
「あ、グルゴだわ」
入り口側に背を向けている俺より、向かいから入り口を見れるレティが、先にその声の主に気付く。
その声の主は、俺の幼馴染みであり、無二の親友である、ドワーフのグルゴだった。
レティとグルゴは、俺の紹介によってもう何度も会っていて、既に友人の様に仲が良い。
グルゴは、俺達に気付くと「やあ、レティ。今日も君は素敵だね」等とレティに声をかけながらテーブルまで小走りに近付く。
何やらガチャガチャと音を鳴らせて。
「何だよグルゴ。随分物々しい音をたててるじゃないか」
俺達のテーブルの傍に来たグルゴへ、レティが「ありがと」と返す所に被せて俺はそう尋ねた。
グルゴは、いつになく頑丈そうな全身鎧を着こんでいたのだ。
「わざとらしいな、セグ。僕が戦闘が苦手なのは知ってるじゃないか。そんな僕がここまで来るには、四・五時間も街の外を旅をしてこなきゃならないんだから、仕方ないだろ?」
そう言って、鎧を着込んだグルゴが俺の隣の席に座った。
「わざとらしいのはお前の方だ、グルゴ。いくら街の外はモンスターが居るとはいえ、お前ほど戦えるヤツがそこらのモンスター相手に鎧まで着込む事もないだろ。第一、これまでだって何度もここまで来ていて、鎧なんか着てきた事なんて無かったじゃないか――――」
俺がそう言うと、グルゴはばつの悪い顔をしながら頭を掻く。
そうして口を閉ざすから、俺は追い討ちをかけるようにグルゴの思惑を見透かして言ってやった。
「―――――どうせ、自作の鎧が思いの外良い出来だったから、試用と宣伝を兼ねて着込んできたんだろ?」
「……バレたか……」
俺の止めの言葉に、グルゴは悪戯な笑みを見せた。
俺は、そんなグルゴを笑みを浮かべて見返していた。




