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「なによソレ。私はセグの事をちゃんと知りたいの。教えてくれないなら、川に着いてもお弁当あーげない!」
と、舌を出してプイッとそっぽを向いて見せた。
「教えないなら嫌いになる」とは言わない辺りが、やっぱり俺の見てきたレティそのままだった。
俺は、そんなレティに「……仕方ないな……」と前置きしながら、勘違いについて話し始める。
頭の中では違うことを考えながら―――
―――大体、「教えないなら嫌いになる」と断言された場合、一部の例外を除いて大きく二つに思考が別れるだろう。
一つは”怖くて聞きたくない“か、二つ目は逆に”『真相は実際には嫌いになる事ではなかった』と言う結果に、一縷の期待を込めて聞きたがる“ものじゃないだろうか。
それゆえに、後者の場合、聞けないなら期待も望めないのだから、『教えてくれないなら今から嫌いになるよ?』等と迫るのが定石な気がする。
その二つ以外の、レティの言った「お弁当あげない」という報復は、言い方を変えれば「言っても言わなくても嫌いにはならない」という俺に対しての信用が含まれているか、「嫌いになるとかならないとかいう判断をするほど親密ではない」という俺の存在価値が低いパターンのどちらかしかない。
その二択であれば、こうして公務に空きが出来て、その疲れを癒す時間に俺を誘ってくれる事から考えても、前者の他ない。
つまり、レティはそれだけ俺に多少は信頼を寄せてくれていると言う事だ。
そう言うレティだから、俺も急いで仕度して、レティの暇潰しに付き合うのだ。
この関係は、できれば壊したくないな。
俺は、そんな事を頭の中で考えていながら、口では同時にレティに勘違いについて話していた―――
――――「レティは俺が悪くないのに俺から謝ったから、『セグは優しい』とか『口答えしないで素直に謝る人』とか良い方に思ったかもしれないけど、俺はあの時、『別に明日も暇だから喫茶店に付き合うくらいなら全然いいや』とか、『イチイチ反論するのもめんどくさい』とも思ったから謝っただけだよ。だから、俺なんかそんなに立派なもんじゃない。大体、『明日も付き合う』っていう罰は罰じゃないよ。何か予定でもない限り、良い暇潰しになるだけじゃないか。しかも、予定があったらレティの事だから付き合いを無理強いしたりもしないだろ?それじゃ意味がない。そう言うのは先ず相手の腹の内を探る事が大事で、罰を与える時は相手が嫌がったり痛がる事を要求するもんだ。相手の腹の内を探る事なんていうのは、外交とかでも大事な事だぞ?」――――
―――などと、俺なんかが偉そうに軽くアドバイスっぽい事も交えながら話した。
すると、レティは。
「アハハ!そうよね。私、だから外商とかダメなの。駆け引きとか苦手だから」
と笑って返してきた。
その言葉に、俺は俺が抱くレティの印象を正直に言った。
「まあ、レティこそ優しくて素直な、裏表の無い真っ直ぐな人だから、無理して人の裏を見ようとしなくても、そのままで良いとも思うけどな」
「……そ、そう?」
俺の言葉に、レティは恥ずかしそうに聞き返す。
「ああ。レティはすごく素敵な……っ!?」
言ってる途中で、今、自分がすごく恥ずかしい事を言っている事に気付く。
「……え?」
レティは、突然目を見開く俺に、訝しい顔を向けていた。
しかし、今の俺の言葉……。
これじゃまるで、俺がレティに心を寄せてるみたいじゃないか!?
「……あ、あー、いや、だから、レティは、すごく素敵な……や、夜景!そうだ!夜景だ!すごく素敵な夜景を見たくないか!?」
意識し始めると急速に心拍数が上がって、苦し紛れのごまかしが口をついた!
そして、俺の頭がフル回転する!
「えっ?急にどうしたの?」
「ああ、いや、ふと思い出したんだ!もし機会があったら、今度コルトへ行こう!!」
「えぇっ!?そんな事、急に言われても……」
「わかってるよ!だから、機会があったらさ!コルトの海沿いの町を、裏手の高台から見下ろすとすごく綺麗なんだ!……まあ、公務が落ち着いた時で良いよ。うん。」
「……え、ええ。セグがそう言うなら……」
何やらワケわからないと言った受け答えのレティだったが、尚も俺は誤魔化し続ける。
「ああ、約束な!……さあ!市街地も抜けて自然区まで来たから、川まではあと少しだ!天気も良いし!美味しい弁当を期待してるよ!」
「え?え、ええ!私も作るの手伝ったから、期待してて!」
弁当の事を振ったのが功を奏したか、レティは自らが手伝った弁当への期待に気合いを返す。
「ああ!楽しみだな!」
よし!誤魔化しきれた!
そんな心の中の安堵も込めて、ガッツポーズをすると、レティは返してきた気合いに乗せてガッツポーズを真似る。
互いに思惑の違うガッツポーズを二人で見せ合いながら、後からついてくるアレスを放置している事にも気付かずに笑いあっていた。
アレスはまるで空気の様に存在感を無くし、なるべく俺達が二人だけの時間の様に振る舞えるよう、気を使ってくれていたのだ。
そうして川へ着いた俺達は、早速レティの弁当を堪能した。
弁当を食べた後はレティ愛用の紅茶を嗜み、川に入って水を掛け合ったり、魚を捕まえたりして川遊びを満喫する。
一頻り体を動かした後は川辺に座って旅の話しに興じたのだった。
翌日は結局レティの行き付けの喫茶店で世間話をする。
時にはレティの、貴族の交流での出来事等も話のネタになった。
そうして、俺とレティは日を重ねる毎にお互いが会える時には会うようになり、次第に親密になっていく。
その内、俺が旅に出る時にもレティが弁当を用意してくれたり、見送ってくれたりするようになり、帰ったら例のごとく旅の話で盛り上がる日々を送っていた。
それからと言うもの、俺の中でレティの存在が大きくなっていく。
そして。
段々と深まる二人の関係と共に、六年の年月が流れるのだった――――




