―25―
ドラゴンやグリフィン、キマイラ等の大型モンスターは、その多くが西大陸に生息していて見たことも無いが、倒すと万単位の報酬が貰えるという。
それだけ凶暴で、討伐が難しい事が報酬額に現れているのだ。
しかし、フラゲはどちらかと言えば小型モンスターだ。
そして、小・中型モンスターの単体報酬の相場は千五百を越えることなどまず無い。
なのに、それを越えるとなると、この町にとってのフラゲの驚異がどれだけのものだったのかがよく解る。
圧倒的な数で獲物に群がり、みるみるうちに骨だけにされてしまう。
商隊一つを一度に食い尽くす状況は、その報せを聞いた者達が皆、実物を見ていなければ余計に恐怖に想像を膨らませた事だろう。
何にせよ、報酬だけで百三十万くらいになったのだが、俺達は約束通り、その中から一人五万ずつを分配し、残りはそのままギルドへ寄付した。
その後は身も甲羅も売り捌いて、それらの売上げは全て町へ。
そのまま夜を迎え、タラックの町長達まで顔をだして町は祭りに移行した。
そこで俺達の功績を称えて、町の英雄の称号と、特一級の冒険者の資格を得て、町の永住権と金一封も渡されるが、それらを受けとるのは辞退した。
そして、ゴッツ達と共に町民や旅人達で盛り上がり、盛大な祭りは夜を通して行われた。
そうして俺達のフランドゲイル討伐は幕を閉じたのだった。
――――明くる朝。
祭りでは一応、子供だからと酒を遠慮して早めに床についた俺は、旅支度をして宿を後にする。
町長が用意してくれた良い宿だったが、きらびやかな部屋の内装は俺には合わず、落ち着かなかった。
お陰で結局、あまり眠れてなかったのだが、あと約三週間、まだまだ旅を続けるつもりの俺は、期限のある旅の時間を無駄にしたくなかった。
そうして町を西の門から出ようとしていると。
「もう、行っちゃうんだ」
後ろから、俺にかける声が。
「セグにも色々あるんだろうから、あんまし困らすなよ?」
後ろを振り返ると、リリーとマリウスの姿が。
「……ああ。世話になった」
俺は少し驚きながらも、二人にそう返す。
「なにが『世話になった』だ。世話になったのはこっちだろ」
再び後ろから……つまり、俺が進もうと思っていた門の方から声がかけられた。
「……なんだ。結局三人とも解ってたのか」
再び振り返り、声の主であるゴッツに微笑む。
「『なんだ』じゃねぇよ!早く寝に帰ったと思ったらやっぱりコレじゃねぇか」
「そうだぜ?俺達は仲間だ。仲間には別れ際に挨拶くれぇするもんじゃねぇのか?」
ゴッツ、マリウスが俺との間を積めて笑顔を見せる。
「今生の別れじゃないんだからねっ!あたし達も冒険者だし、これからいつ、どこで会うかわからないんだから」
少し離れた所からリリーがそう言った。
「……ああ、そうだな。まあ、たまには俺の本拠のオーリー・ヴァン・メルンにも冒険がてら寄ってくれよ。できれば、一ヶ月……いや、二ヶ月くらい前に報せをくれれば、俺も家に居るようにするから」
「ああ。そっちに行く事があったら、前もって報せるよ」
「あんたに任せてたらどうせ報せ忘れるだろうから、あたしが手紙出すよ」
「アハハハ!違ぇねぇ!」
俺の提案にゴッツが答えるが、リリーがそれを制してマリウスが止めを挿す。
「「「「アハハハ!」」」」
そんなやり取りが面白くて、四人で笑い合った。
しばらくして。
「……じゃあ、そろそろ行くよ」
俺が、内心少し寂しくなる気持ちを抑えて切り出した。
こんな感情が嫌だから、黙って出ていくつもりだったが。
「ああ。気を付けてな」
「必ず行くから」
「強ぇからって油断すんなよ」
ゴッツ、リリー、マリウスの順で返してくれる。
「ああ。じゃあな」
そう言って三人に背を向けると、右手をあげて手を振った。
恐らく三人も、同じように手を振って見送ってくれてる事だろう。
俺の今回の旅は、レティとの約束もあるから後、約三週間だ。
このテウォール海は内海で、北西のバーデンベルクと言う国から、海峡を渡ってオーリーの南西にあるルターリンと言う国に渡る事ができる。
これまで東大陸側はよく旅をしていたから、今回は西側を回ってルターリンからオーリーへ帰ろうと考えていた。
俺は、未だ見送ってくれているであろう三人との討伐を思い出に残して、西の門を潜る。
そして、いくらか緑が残っている大地を、北西へと向かった。
その後は幾つかの町を経て、時には野宿も強いられながらも旅は順調に進む。
一ヶ月と決めたのも、西大陸を旅する事とフラゲ退治が大きな目標だったため、その後は目立つ出来事もなく、一ヶ月の旅に終わりを迎えたのだった。
そして、戻ってきたオーリーの地。
この数年後には、ある事件が待ち受けている事を、この時の俺は知るよしもなかった。




