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俺が、大金の話に畏れを為していると、三人は何やら現実的な話で盛り上がる。
「ううん。あたし達も、フランドゲイルの驚異が無くなった事だし、これからはまた冒険を再開するでしょ?そしたら、一人五万は装備を換えたり揃えたりするのに使って、後はご家族にでもあげなさい。ただでさえこれまで家の穀潰しみたいな生活してきたんだから。」
「『穀潰し』は言いすぎだろ」
「アハハハ!ゴッツは家事が全くできねぇんだから、俺達の中じゃ一番穀潰しだっただろうな」
リリーが分配を語ると、ゴッツは凹んでマリウスはそんなゴッツを笑う。
「なにを?」などとマリウスに言って、軽くケンカにでもなりそうな二人を放って、リリーは話の続きを話した。
「―――そして、今後はモンスターに脅かされない様に、町の警備対策や腕利きの旅人を育てる養成所等を作るための資金として、残りは全部町やギルドに寄付するの。個人であんまり大金を持ち歩くと、ロクな事になならないしね。もちろん、セグのお陰だから、セグの意見が最優先だけど、セグ。あたし達の町の為に、お願いできない?」
「……そうだな。もしまたフラゲが繁殖したとしても、フラゲの盾とか鎧があれば町の旅人達でもフラゲを倒せるかも知れねぇ。これからは、町の連中もただ怯えているだけじゃなくて、自分達で立ち向かう術を身に付けていかなきゃならねぇんだ。そう考えれば、俺からも頼む、セグ!」
リリーの長い説明の後、マリウスと掴み合ってたゴッツがマリウスを離してリリーに賛同の意を述べる。
「……そうだな。今回はセグが来てくれたから助かったが、フラゲに関わらず今度また町への驚異が迫った時、またセグみたいなすごいヤツが助けてくれるとは限らねぇ。今回、セグのお陰で得たものは、これから自分達で守っていくために使わせてもらいたい。何から何まで甘えっぱなしでセグには悪いが、セグ。俺からも、頼む」
マリウスも、大人三人が俺に向かって頭を下げる。
なんか、この三人を見ていると、本当に生まれ故郷が大切なんだと思わされる。
そして、三人の気持ちは一つになっている。
そんな三人に、俺一人の意見を通すなんて無粋な真似はできないよなぁ。
「いいさ。俺はあんまり大金を手に入れても使い道が解んないし、皆の思うように使ってくれて構わないよ」
「ホントか!?」「良いのか!?」「ホントに!?」
「「「ありがとう!!」」」
三人の声がハモる。
それからと言うもの、打ち上げは盛り上がり、俺まで酒を飲まされて、皆で楽しい時間を過ごした。
そして、やがて月が西の方へ傾き始めた頃、ゴッツも夜食を必要としないくらいに食べ続けたお陰で、皆ではしゃぎ疲れて眠りについたのだった。
――――朝。
陽差しを遮るものがない岩場で、直射の眩しさに目を覚ました俺達は、興奮冷めやらぬ明るさで朝食と身支度を済ませて、一路タラックへと向かう。
道すがら、生き物の死骸の匂いに誘われたのか、行きでは出会わなかった小型のグルというモンスターに数度エンカウントするが、俺達四人で掛かれば敵ではない。
タラックまでの半日強の道のりも、俺達は馬車を守りながら通り抜けた。
夕方近くなった頃。
町に着くと、俺達がフラゲを倒してきたと言う話が既に町中に知れ渡っていた様で、お祭りムードで歓迎される。
「おおっ!?町の勇者たちが帰ってきたぞ!?」
「あっ!!帰ってきた!!四人ともお疲れ様ーっ!!」
「おうっ!やったな、オメーら!!」
町人達が思い思いに歓喜の声をかけてくる。
「おい、チッコイの!お前、スゲーな!」
「やるじゃねーか!!お前らこの町の英雄だよ!!」
「チビは足手まといだったんじゃねえのか!?」
どさくさ紛れにそんな声が俺達に届くと。
「おうっ!今言ったヤツ誰だ!?セグはこの中で誰よりも強くて、一番の功労者だ!!恥ずかしい話だが、俺達の方が足手まといなくらいだった!そんなセグをバカにするヤツぁ俺がぶん殴ってやるから出てこい!!」
「やめなよ!みんな浮かれてるだけなんだから!悪気があって言ってるんじゃないんだから!」
ゴッツが威勢を奮う所に、リリーがなだめる。
「セグもごめんね!気を悪くしないで!」
リリーはそう言って、俺にも謝ってきた。
「余程嬉しいんだろうから、俺は気にしない。実際、俺も含めて皆が命を賭けたんだ。功労は皆均等だよ」
「本当に、セグは達観してんだか、その年でよくまあそんなに落ち着いて居られるもんだ」
「そんな事はないよ。俺だって皆が喜んでくれるのを心の中では嬉しくて堪らないさ」
「はんっ!人生経験として学ぶ事は沢山あるかも知れねえが、人間性は充分に大人だな、セグは」
マリウスがそんな事を言って鼻で笑う。
そうして、町人に至るところで声をかけられながら、俺達は先ず真っ先にギルドへ向い、証拠となる甲羅を渡した。
あの、悪態をついていた受付の女性は俺に深々と頭を下げてきたが、俺はもう、あの時の苛立ちなど忘れていたから、賭けた罰などもさせずに許した。
一部の旅人達が残念そうな顔をしていたが、受付の女性は「あんなことを言っておいてなんだけど、本当に無事に帰ってきて良かった……」等と涙ながらに俺に言う。
やはり、あの時の俺の想像は当たっていたのかもしれない。
そんなやり取りを経ているうちに、甲羅を数え終えて渡された報酬額は一匹あたりで千八百!
三五六匹で、六十四万八百ペイリーだった!!
そして、さらにまとまった数を倒すとその報酬に割り増しが付く。
十匹で一割、二十匹で二割という割合で、普通、百匹も群がるモンスターなどほとんど無い為、百匹以上は一律二倍だった!
つまり、六十四万の報酬は、割り増しがついて百二十八万に!!
日本円に換算したら、二千五百万円を超える。
これは、ギルドが出す小・中型モンスター単体への報酬額としては見たことも無い様な高額だ。
四人でその金額を目の当たりにして、皆で生唾を飲み込むのだった。




