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「いやあ、昨日の茹でフラゲとかフラゲカレーもとてつもなく旨かったが、焼きもなかなか……!」
俺達は、一晩を岩場で明し、予定通り手分けしてウシジゴク討伐等を終えた。
と言っても、結局のところはマリウス達の予想通りだったのか、ウシジゴクを発見することが出来ないという結果に終わったのだ。
『フランドゲイルの餌になって絶滅』
そんな大胆な予想がよもや当たってしまったのか。
単に俺達が発見できなかっただけで、実はどこかに隠れているかもしれないから、フラゲ同様、滅ぼしたとは言えないのかもしれない。
そして、ギルドに報告しに行ったリリーは、牛車ではなく馬車を二台借りてきて、先程皆で甲羅と身を積んだのだった。
既に日はどっぷり落ちて、砂漠での二度目の夜を体験していた。
「ホントだ。この二日間、フラゲ尽くしで豪華な食事にありつけて運が良いね」
先のゴッツの感想にリリーが同意する。
因みに、もうご理解頂いてるとは思うが、『フラゲ』とは、某アイドルグループの歌の略称ではなく、フランドゲイルの略称だ。
ゴッツが言い出した略称だったか、いつの間にか俺達の会話に馴染んでいた。
「しかし、ゴッツが見張りで摘み食いしなかったのが俺には信じられねぇよ」
マリウスが両手のひらを空に向ける仕草でそんな事を言った。
「あたしがちゃんと、ゴッツが食べる分のご飯も用意してたからね。あんた達にもちゃんと弁当置いてったでしょ?」
リリーは俺達が起きる前から朝飯と弁当を作ってくれて、日が上る前にタラックへ向かっていたのだった。
そして、昼に到着したその足でギルドに報告し、馬車の手配をした。
馬車は牛車よりも足が早いから、普通なら予約で押さえられて借りるのが容易ではないのだが、これもまた、フラゲの影響で他の旅人達も討伐に行けなかったせいで、馬車に空きがあったらしい。
さらに、待望のフラゲ殲滅の報せにギルドも貸し出し価格を抑えてくれて、安く貸してくれる事になったと言う。
俺達にとってはありがたい話が重なり、今晩もパーッと盛り上がっていた所だった。
「やべぇ!フラゲのミソが酒に合う!」
「ホントホント!飲むなら焼きが最高ね!」
マリウスの上機嫌な感想にリリーが賛同して、大人三人の酒が進んでいた。
そこへ、ふと気付いた様にゴッツがリリーに話しかける。
「そう言えばよぉ、身の方の売り値相場聞いてきたか?」
「……あ!そうそう!それが凄いの!南の方ではその美味しさと、捕獲する危険度から、一匹あたり千は下らないって話よ!?」
「ゲエッ!?本気かよ!!」
俺は大きい額の金銭感覚が無い為に、リリーの回答にはピンと来ないが、ゴッツ達はかなり驚いていた。
「それどころじゃないわ!甲羅の方も、防具にすると鉄より良質って事で、幅五十センチの標準サイズで一枚千二百!三十センチでも千ペイリーで引き取ってもらえるらしいわ!」
リリーが、身の話で箍が外れた様に勢いに乗って話す。
「おいおい!それじゃ、俺達大金持ちになっちまうじゃねーか!?」
「ちょっと待てよ!?甲羅が三五六枚で、大きいのも小さいのもあるけど平均して一枚標準サイズで計算すると―――」
追い討ちのように続けるリリーにゴッツがさらに驚く横で、マリウスは計算を始めた。
「―――ざっと四十二万!!」
「身の方はかれこれ十匹くらい食っちゃってるから三四十匹以上あるとして、ざっと三十五万!!」
「合わせて八十万近いじゃねえか!?」
マリウスの導きだした数字にリリーが身の方の金額を補足して、ゴッツの今日一番の驚きの声があがった!
「さらに!ギルドのクエスト報酬も巨額だし、全部合わせたらとんでもない金額に……!」
さらにマリウスがそんな事を言うと、言っている途中から言葉を失う。
それを聞いた皆も一様に黙って、宵闇に包まれた岩場に静寂が訪れた。
そして、長くも感じるほんの数秒の沈黙の後、口を開いたのはゴッツだったが。
「セグがほとんど倒してくれたから……」
そう言い始めるゴッツを、俺が遮る。
「いや、これは皆で成し遂げた結果だから、皆で均等に分けよう」
「いやいや、そうはいかねぇよ!やっぱり一番の功労者はセグ、お前だ!」
しかし、尚も言い張るゴッツに、マリウスとリリーは黙ったままだった。
「ダメだ。これは皆で……」
そう俺が言い返そうとした時。
「はいはい!そこまでね!皆で均等に分けるのも良いけど、やっぱり額が大きすぎるから、あたし達の其々の取り分は上限五万!残りは寄付する!それで良いかしら!?」
「五万でもとんでもねぇ額だ」
五万ペイリーを日本円にしたら、およそ百万円だと思ってもらえれば貨幣価値がわかるだろう。
凡そ二十倍くらいである。
俺は、自分のポケットマネーにそんな大金を持った事がないから、想像してみると少し畏れ多い気がして、身震いするのだった。




