↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小さき男の英雄譚  作者: 咲 潤
第二部 小さき男の冒険
23/64

―23―

「いやあ、昨日の茹でフラゲとかフラゲカレーもとてつもなく旨かったが、焼きもなかなか……!」


俺達は、一晩を岩場で明し、予定通り手分けしてウシジゴク討伐等を終えた。


と言っても、結局のところはマリウス達の予想通りだったのか、ウシジゴクを発見することが出来ないという結果に終わったのだ。


『フランドゲイルの餌になって絶滅』


そんな大胆な予想がよもや当たってしまったのか。


単に俺達が発見できなかっただけで、実はどこかに隠れているかもしれないから、フラゲ同様、滅ぼしたとは言えないのかもしれない。


そして、ギルドに報告しに行ったリリーは、牛車ではなく馬車を二台借りてきて、先程皆で甲羅と身を積んだのだった。


既に日はどっぷり落ちて、砂漠での二度目の夜を体験していた。


「ホントだ。この二日間、フラゲ尽くしで豪華な食事にありつけて運が良いね」


先のゴッツの感想にリリーが同意する。


因みに、もうご理解頂いてるとは思うが、『フラゲ』とは、某アイドルグループの歌の略称ではなく、フランドゲイルの略称だ。


ゴッツが言い出した略称だったか、いつの間にか俺達の会話に馴染んでいた。


「しかし、ゴッツが見張りで摘み食いしなかったのが俺には信じられねぇよ」


マリウスが両手のひらを空に向ける仕草でそんな事を言った。


「あたしがちゃんと、ゴッツが食べる分のご飯も用意してたからね。あんた達にもちゃんと弁当置いてったでしょ?」


リリーは俺達が起きる前から朝飯と弁当を作ってくれて、日が上る前にタラックへ向かっていたのだった。


そして、昼に到着したその足でギルドに報告し、馬車の手配をした。


馬車は牛車よりも足が早いから、普通なら予約で押さえられて借りるのが容易ではないのだが、これもまた、フラゲの影響で他の旅人達も討伐に行けなかったせいで、馬車に空きがあったらしい。


さらに、待望のフラゲ殲滅の報せにギルドも貸し出し価格を抑えてくれて、安く貸してくれる事になったと言う。


俺達にとってはありがたい話が重なり、今晩もパーッと盛り上がっていた所だった。


「やべぇ!フラゲのミソが酒に合う!」


「ホントホント!飲むなら焼きが最高ね!」


マリウスの上機嫌な感想にリリーが賛同して、大人三人の酒が進んでいた。


そこへ、ふと気付いた様にゴッツがリリーに話しかける。


「そう言えばよぉ、身の方の売り値相場聞いてきたか?」


「……あ!そうそう!それが凄いの!南の方ではその美味しさと、捕獲する危険度から、一匹あたり千は下らないって話よ!?」


「ゲエッ!?本気かよ!!」


俺は大きい額の金銭感覚が無い為に、リリーの回答にはピンと来ないが、ゴッツ達はかなり驚いていた。


「それどころじゃないわ!甲羅の方も、防具にすると鉄より良質って事で、幅五十センチの標準サイズで一枚千二百!三十センチでも千ペイリーで引き取ってもらえるらしいわ!」


リリーが、身の話で箍(たが)が外れた様に勢いに乗って話す。


「おいおい!それじゃ、俺達大金持ちになっちまうじゃねーか!?」


「ちょっと待てよ!?甲羅が三五六枚で、大きいのも小さいのもあるけど平均して一枚標準サイズで計算すると―――」


追い討ちのように続けるリリーにゴッツがさらに驚く横で、マリウスは計算を始めた。


「―――ざっと四十二万!!」


「身の方はかれこれ十匹くらい食っちゃってるから三四十匹以上あるとして、ざっと三十五万!!」


「合わせて八十万近いじゃねえか!?」


マリウスの導きだした数字にリリーが身の方の金額を補足して、ゴッツの今日一番の驚きの声があがった!


「さらに!ギルドのクエスト報酬も巨額だし、全部合わせたらとんでもない金額に……!」


さらにマリウスがそんな事を言うと、言っている途中から言葉を失う。


それを聞いた皆も一様に黙って、宵闇に包まれた岩場に静寂が訪れた。


そして、長くも感じるほんの数秒の沈黙の後、口を開いたのはゴッツだったが。


「セグがほとんど倒してくれたから……」


そう言い始めるゴッツを、俺が遮る。


「いや、これは皆で成し遂げた結果だから、皆で均等に分けよう」


「いやいや、そうはいかねぇよ!やっぱり一番の功労者はセグ、お前だ!」


しかし、尚も言い張るゴッツに、マリウスとリリーは黙ったままだった。


「ダメだ。これは皆で……」


そう俺が言い返そうとした時。


「はいはい!そこまでね!皆で均等に分けるのも良いけど、やっぱり額が大きすぎるから、あたし達の其々の取り分は上限五万!残りは寄付する!それで良いかしら!?」


「五万でもとんでもねぇ額だ」


五万ペイリーを日本円にしたら、およそ百万円だと思ってもらえれば貨幣価値がわかるだろう。


凡そ二十倍くらいである。


俺は、自分のポケットマネーにそんな大金を持った事がないから、想像してみると少し畏れ多い気がして、身震いするのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。