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小さき男の英雄譚  作者: 咲 潤
第二部 小さき男の冒険
19/64

―19―

金属の具足を着けた俺の足が、平均より一回り小さいフランドゲイルに噛まれていた!


具足のお陰で敵の歯は生足までは届かなかったものの、余程の噛む力があるのか、具足に歯形の凹みができて、無数の牙に圧迫されている!


横幅六十センチ程あるフランドゲイルなら、自分の立ち位置の四・五十センチを残して氷を張れば足も襲われないと思っていたが。


「気を付けろマリウス!!子供か知らないけど、小さいヤツも居る!術を放った後も油断するな!!」


俺は噛まれた右足を振り上げて、地中の小さいフランドゲイルを引っこ抜き、剣で無防備な腹を切り裂く!


小さいと言っても横幅は四十センチ近い。


生足を横から噛みつかれたら、充分に踝から先が無くなっていただろう。


「何っ!?わかった!!任せろ!!」


俺はマリウスの返答を受けて、俺達の考えが極めて当たり前な事を見落としていたのに気付く。


そりゃそうだ。


コイツらも生き物なのだ。


メシ食って生きていれば、繁殖もする。


こんな当たり前な事を見落としてたとは。


俺は先程放った氷を噛み砕いて次々に襲いかかる敵に、再びのスールドレイをお見舞いする!


「食らえ!スールドレイ!!」


そしてすかさず!


「立ち上ぼれ、凍壁!……スールドベル!!」


自らの足元から、俺自身を高く担ぎ上げる氷の壁を立てた!


俺の視線はみるみる高い位置に上がっていき、氷の壁と言うよりは四角い柱の様に築かれた氷に次々にフランドゲイル達が噛みつく!


ガチガチンッ!!


間一髪で、先程と同じ目に合うのを避けた!


というか、二匹程もう少し高い位置に噛みついたヤツが居たから、同じ間違いをしていたら、ふくらはぎが持っていかれたかもしれない。


そう考えながら下を見ていると。


「うわっ!?」


二メートル程の高さまで競り上がった氷の壁の上で、突然左から飛んできた炎の球を避ける!


「やっぱり、情報は本当だったか!」


放ったのは、やはりフランドゲイルだった!


飛んできた方向を向くとすぐに砂に隠れたフランドゲイルの姿が確認できたのだ!


そして、砂に入って見えなくなった敵が、どこから現れるか警戒して周囲を見渡したとき、俺は驚きの光景を目の当たりにする!


「なにっ!?まだこんなに居るのかよ!!?」


見下ろした砂原には、ざっと見ても数十じゃ利かない程の砂の盛り上がりが!!


そして。


地面から高い位置に居る俺への攻撃手段が、ヤツラには飛道具しかないらしく、次々に砂から顔を出してはリドフランを撃ってくるのだ!


「うわっ!?……っちょっ!!クソッ!!」


二発程掠めて髪と服を少しだけ焦がしてしまったが、何とかヤツラの一斉射撃は避けきった!


と思うのも束の間!


すぐに二発目の一斉射撃が!


「クソッ!!どうやら、ヤツラから見える位置でヤツラの噛みつきの射程から外れると、術を使って撃ち落としてくるみたいだ!!みんな、気を付けろ!!」


俺は捨て身で氷の柱から飛び下り、噛まれて砕けたり、欠けたりしている氷の上に着地する!


「セグ!!大丈夫か!?」


遠くから俺を案ずる声が届く。


「ああ!!何とかな!!」


俺は声の主であるマリウスへ、そう叫び返した!


返しながらマリウスの方を見ると、約百メートル程離れた位置で、懸命に法術を連発して戦うマリウスの姿が見えた!


しかし、数が多すぎて手に余る様だ!


足元には岩の足場を術で精製したらしいが、それは最低限、真下からの攻撃しか防ぐ事は出来ない。


マリウスの周りのフランドゲイルは、俺の周りのヤツラの様に数匹がまとまって襲いかかってくる訳ではなく、不規則に三百六十度全方位から飛び掛かられている。


このままではマリウスが危ない……!


「……ッと!!」


マリウスの危機を察知した瞬間、足元の削られた氷が瓦解する!!


「クッソォ!!」


俺は一か八か、俺の持てるエナを集め、大量に法力を練る!


そうしておきながら、俺は瓦解した氷から砂に着地して、その足でマリウスの方へ念力も入れずに走り出した!


マリウスまでの距離は百メートル!


それほど近づくつもりは無い!


ただ、マリウスを囲うフランドゲイルを少しでも多くこっちに引き付けられれば……!


その時、ゴッツ達が既に岩場を離れてこちらに向かってきている事に気付く。


しかし、まだ五十メートルも岩場から離れてないのに、ゴッツ達も早くもフランドゲイルにエンカウントしていた。


それを見て、俺はピンと来る!


音だ!


ゴッツは体格も大きく、金属の具足を履いてドシドシと走る癖がある!


つまり、フランドゲイル達は地中に居るとき、地上の獲物の位置を足音等の音で判別していたのだ!


「……そう言うことなら……」


そう独り言を呟くと、俺はワザと足音を大きくしながら走る!


すると。


先程よりも俺の位置が掴みやすくなったのか、フランドゲイルの飛び出す数が増えてくる!


五十メートルも走った所で、俺はあえて足を止めた。


その瞬間!


今日、何度目かの一斉攻撃が目の前に繰り広げられた!


ざっと見ても遠近問わず十数匹に囲まれながら飛び付かれる!!


俺はそれを見定め!


「スールドレイ!!」


一先ず俺の至近に出てきたヤツラをまとめて仕留める!


しかし、俺の法力はまだ抑えている!


そして、続け様の、コイツが俺の賭けの一撃だ!!


「降り注げ!閃光の雨!……エレーズヴォル!!」


俺は手のひらを空へ向けて右手を真上に挙げ、練りに練った法力をその手から放出したのだった!!

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