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「降り注げ!閃光の雨!……エレーズヴォル!!」
俺は手のひらを空へ向けて右手を真上に挙げ、練りに練った法力をその手から放出したのだった!!
すると、光が右手から放たれ、空へ向かって伸びていく!!
次第にある程度の高さで光が留まると、俺の手から出ていく光をかき集め、上空数十メートルの高さで大きくなっていった!
詠唱を終えてから実に二秒強を要したが、目映い光にフランドゲイル達も動きが止まる!
刹那!
光の球が辺りを真っ白に染めるくらいの光を放つと、破裂するように無数の線を引き、さらにそれらが不規則に曲がりながら降り注ぐ!!
カッッッ!!!
ガガアァァァーーーンン!!!
念のため、自分とマリウスには落ちない様に雷を念力で曲げるつもりでいたが、俺は術師程の法力も無いため、俺やマリウスに直接は落ちなかったものの、至近距離には落ちてしまった!
それによって地面を伝った電気が多少金属の具足を伝う!
「いっ!!?」
一瞬、激痛の様に感じたが、遠くで「グアッ!!」等と言いながら足場の岩に転がったマリウスよりはマシだった様だ。
「すまん!マリウス!!大丈夫か!?」
俺は急いでマリウスに駆け寄りながらそう声をかけた。
「……あ、ああ、大丈夫だ!!それより、チャンスだ!!俺の事は良いから!リリー!ゴッツ!早くヤツラを!!」
マリウスがリリー達にそう告げて、周りを指差す。
俺もマリウスの声につられて周りを見渡すと、辺り一面にフランドゲイル達が帯電した砂から逃げ出し、痺れてひっくり返っているのだ!
「……ここまで効くとはな……」
思わず呟いた俺に。
「仕掛けた本人が何呆けてんだ!!俺は痺れて動けねぇから、早くコイツらにトドメを刺せよ!!セグ!!」
マリウスが振り絞った声で叫ぶ!!
「ああ!わかった!!全部トドメを刺してすぐ行くから、もう少し待ってろよ!!」
俺もそう返して、自らの体に念力を込めた!
「ウオオオォォォォーーーーーッッ!!」
息が続く限り叫び続けながら、フルパワーで砂漠を走り抜ける!!
砂の上に転がるフランドゲイル達は、そんな俺が通り過ぎると、空へ向けて曝け出したままの腹から飛沫が次々と舞った!
リリーやゴッツも、そんな俺に負けじと自分の持てる全力で、同じ様に砂漠を駆け回る!
そうして、何分経っただろうか。
地表に転がるフランドゲイル達の死骸が敷き詰められた砂漠で、全速力で切りまくって息をあげた俺達三人が、未だ痺れて動けないと言うマリウスの体に背中を預けていた。
「……やったな……」
ゴッツが、長らく沈黙に包まれた俺達の空気にポツリと呟いた。
「……ああ。とうとう、俺達を長年悩ませてきた元凶を、セグのお陰でようやく討伐する事ができた」
マリウスがようやく痺れが治まった様子で、伸ばしていた足を膝で折ってゴッツの呟きに答える。
「……俺一人でもよかったけどな」
もちろん冗談だが、俺は力無い笑い声を混ぜてそんな事を言った。
「本当に、そうだったかもね。セグの術、すごかったもんね」
リリーはそう言って、俺の冗談を真に受けた。
「いやいや、冗談だ。そこは『何を~!?』とか『言いやがったな~!?』とか突っ込んで、笑い合う所だろ」
俺は少し慌てて、突っ込みの甘い三人組の、特に男二人に指摘した。
「ハハハ。何を慌ててんだ。大人になると、こんなハメ返しはよくある話だぜ?よく覚えとけよ」
「なに?」
ところが、逆にマリウスから俺が指摘され、思わず聞き返していた。
「『ハメ返し』だ。つまり、真に受けたら洒落にならない冗談をワザと真に受けて、冗談言ったヤツが罰が悪く感じた所を逆にからかう”仕返しワザ“だ。時には、空気読めないヤツが『この場でその冗談は冗談にならねぇ』って冗談を言った時に、暗黙で罪悪感を芽生えさせて解らせる時にも使う。大人の世界は言葉に含まれた裏の意図をちゃんと読み取れないと、言葉通りにばかり受け止めてたら痛い目見るぜ」
「セグが慌てた時に俺も笑ってやろうと思ったのに、マリウスはいちいち説明したがるから笑うタイミング逃したじゃねぇか」
マリウスの説明にゴッツが腑に落ちない顔をするが、俺は素直に聞き入っていた。
「そうか。覚えとくよ。……じゃあ、因みにさっきのリリーのハメ返しは仕返しの方なのか?それとも冗談にならなかった方なのか?」
「……どっちもよ」
俺の質問に、リリーが一瞬の思慮の末におもむろに口を開いた。
「えっ?」
「どっちも。最後のヴォルなんて、返ってあたし達が居ない方が気を使う事もなく放てたでしょうし、そうなったら本当にあたし達が居なくても一人でフランドゲイルの殲滅をやってのけてたんじゃないかって思えたの―――」
俺は口を閉じてリリーの話を聞き続けた。
「―――そしたら、あたし達の無力さを痛感しちゃって、セグの言った冗談も事実を突きつけられた気がしたわ。だから、冗談にならないぞって気付いてほしかったのも半分。でも、同時にセグはそう言う悪意なんて持ち合わせていない事も解ってるつもりだから、仕返しして笑って済まそうと思ったのが半分よ」
リリーがそう言って、俺の方へ微笑みを向けた。
ああ。
何気ない一言が人を傷付ける事があるのは解っていても、多分防ぐ事なんてあまり出来ないのかもな。
生まれや育ちが違えば感じ方も違う人同士では、こうして行き違いが生まれるんだろう。
俺はリリーに笑顔を返しながら、そんな事を頭の中で考えた。
すると。
「まあでも、そうやって互いをわかりあって行けば良い話じゃねぇか!俺はセグが大好きだぜ!」
俺の頭の中を読んだのかと思うくらい、ゴッツの言葉は俺の考えへの回答の様に聞こえるものだった。
「ああ!セグはもう俺達の仲間だ!俺も、改めて歓迎するぜ!」
「ええ、そうよ!あたし達の新しい仲間!本当に頼りになる、心強い友だわ!」
ゴッツの言葉にマリウス、リリーがそんな嬉しい言葉を繋げてくれた!!
俺にとってはこの時が、この三人との出会いが本当に良かったと心の底から思えた瞬間だった。




