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空が陰り始めた。
予想以上にファーストアタックがキツかった為、俺達は少し長めに体を休めながら、戦略を練る事になった。
「―――で、俺がまず一人で走り込んでざっとヤツラを集めた所で、レイズスールを周りに放って、まとめて串刺しにする」
これまで話した内容の最終確認の様に、俺から順番に役割を述べる。
因みに、レイズスールとは、アイスグレイブの事である。
氷が地表から敵に向かって突き出すアレだ。
「そんで、その次に俺が出てって、得意のレイズイースでさらに串刺しにすりゃ良いんだな?」
マリウスが、得意の土の法術で続く事を確認した。
レイズイースは、言わばアースグレイブである。
「あたしはゴッツと一緒に剣で残党狩りね」
「俺は法術が得意じゃないからな」
リリーの確認にゴッツが合わせる。
「リリーは得意な術がフランとイルだからな。それだとフランドゲイルにはあまり効果が期待できないから、悪いけど頼む」
フランは火で、イルは水の事である。
つまり、この世界の属性は地・水・火・風を、順にイース・イル・フラン・アッシュと言う。
そして、それらの派生属性である木・氷・爆発・雷を、順にリーン・スール・バルナ・ヴォルと言う。
法術にはそれらの属性が入り、レイは槍、スレイは刃、リルは回転、リドは球、パームは破裂、ミーヴは振動、チップは針、エレは雨、ウェンは波、ベルは壁……等など、状態を現す言葉を合わせて各属性術を形成する。
地域や種族または術の種類によっては、属性と状態を前後入れ換えたりする事もあるし、回転のリルをネードと言ったり、破裂のパームをバーン、球のリドをドムと言う場合もある。
ここまでのは一例で、世界中には他にも違う呼び名が存在していた。
時には固有名詞の様に全く違う名前が付けられた術もあるのだ。
これらはこのイーシスでの術の名称の様なもので、その名前を口にすることでイメージを高めて属性や状態、形状などを定めやすくするものである。
本編でセイルが術を使うときにカッコつけて英語で言っているのも、セイルなりの術のイメージを定める為のものなのだ。
因みに、属性のイメージ無しに状態のみを想像して術を発すると無属性術となるが、一般的には形や姿が見えない無属性は状態や形状が把握できない為、大した威力を発揮できないのが実状だった。
つまりは無属性法術こそが念力なのである。
言い方を変えれば念力こそが法術の基礎であり、無属性法術の全てなのである。
そして、イーシスでは術を唱えるために一番重要なのがイメージ力なのだ。
だから、言葉に関係なくイメージできるのならば、極論は『フラン』と言いながら水を出す事もできる。
あくまで『想像は口に出すとイメージしやすい』という人間心理に基づいた解釈であり、イメージが強く定まれば定まるほど術も強力になるのだ。
なぜなら『人間が想像できることは、人間が現実にできる事なのだ』から。―― ジュール・ベルヌの手紙より ――
「わかったわ。ゴッツとあたしに任せて!」
リリーの心強い返答と共に、ゴッツも力強い視線を返して二人で頷く。
「ああ。一番危険な役回りですまない」
「何言ってんの!一人で飛び込んで、ヤツラに周りを囲まれるまで引き付ける方がよっぽど危険よ!」
俺の詫びに、リリーは尚も気丈に振る舞ってくれた。
本当に逞しく、頼りになる女リーダーだった。
「……ッウシ!!じゃあそろそろ行こうぜ!?早くしねぇと明るいうちに全部倒し切れねぇからな!」
やはり、決定的な決断を持っていくゴッツに、「「「ヨッシャァ!!」」」などと俺達三人が掛け合った。
「お互い、無理は禁物な!討伐の続きは明日でもできる。まずは生きている事が第一だ」
マリウスが、最後に念を押した。
「……じゃあまずは、俺から……だッ!!」
最後の一文字に力を入れて、俺は念力を込めた最速のスピードで岩場を飛び出した!
さっきはヤツラも油断していたのかもしれないが、本来ならヤツラも術を使うと言われている。
その名の由来でもある火の術だ。
俺達の休憩の合間にも敵はより多くの仲間を集めたに違いない。
それが間違いでなければ、これからの戦いはかなりの混戦になることも予想できるし、そうなればヤツラも俺達を仕留める事を最優先に、我先にと術を乱発されないとも限らない。
そんな事も先程の話し合いでは挙がっていた。
みんなは首尾よく自分の身を守りきれるだろうか。
俺にはそんな不安が拭えないでいた。
ズザザァッ!!
俺が走り出す先に待ち構えていたのか、目の前から一匹のフランドゲイルが飛び出てきた!
頃合いか。
三・四百メートル程岩場から離れた所でのご対面だった。
「ウリャアッ!」
最初の一匹目は剣で葬り去る!
そうして俺は立ち止まり、後ろを振り返ると、俺を追ってきたフランドゲイル達が一斉に八匹程目の前に飛び出した!
その隙間から、第二陣となるマリウスが岩場を飛び出すのを視認する!
距離が遠すぎてマリウスの足元にフランドゲイル達が集まっているのかは確認出来ないが、マリウスは念力も無しに普通に走るスピードで、俺に突き放されたフランドゲイル達を集める。
「天へ突き立て蒼き氷槍……スールドレイ!!」
俺は目の前に飛び出したフランドゲイル達に向かって、俺の足元から四方八方へと放射状にスールドレイを放つ!!
ドガガガッ!!
俺を中心に、氷の花が咲いた様に放たれた氷の槍は、岩場方向を向いていた俺にとって後ろとなる砂漠側から飛び出た敵までまとめて串刺しにした!!
ヨシッ!!
心の中でそんな掛け声を挙げた瞬間だった。
ガキンッ!!
足元で金属音が鳴る!
そして、視線を落とすと同時に右足に痛みが走った!
「なっ!?」
氷の花の中心に立つ俺の足元には、一回り小さいフランドゲイルが、顔を出して足に噛みついていた。




