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76,Q出発ですか?Aはい。ケートスに向かいます。

 昨日は疲れたな……

 あのあと、レヨンさんの家に戻ってきてすぐに気力が尽きてしまい、コガネ君に運んでもらったのだ。

 迷惑をかけてしまったが、コガネ君はなぜか嬉しそうだったからあれで良かったのかもしれない。

 コガネは世話やくの好きだからな~

 今はそんなコガネ君に起こされ、もぞもぞと着替えているところだ。


「アオイちゃーん、起きてる~?」

「はーい、起きてまーす」

「今日はちゃんと起きてるね。朝ご飯できてるよ」


 朝だからか、レヨンさんの声がどことなく緩い。

 なんというか、柔らかい感じだ。


「主、おはよう」

「おはよー、コガネ」

「ピィ!」「チュン」

「サクラもモエギもおはよー」


 勢ぞろいだな~

 まあ、そりゃそうか。

 今から帰るんだもんね。

 ……あっという間の二泊三日でしたな。


「ほら、アオイちゃん。ちゃんと食べないともたないよ」

「はーい。いただきます」

「俺たちはもう食べたから、荷物の確認をしてくる。主はゆっくり食べててくれ」

「うん。ありがとう」


 お言葉に甘えてゆっくりさせていただこう。

 コガネ君がこう言う時は本当にゆっくりしていい時だ。

 急がないといけない時はちゃんと言うからね。


「あ、そうだ。荷物にまだ余裕があるなら、お米持ってく?」

「え!?いいんですか!?」

「いいよ。私仕入れられるし」

「コガネ君に聞いてきます!」

「はいはい。転ぶなよ~」


 まさかの提案だ。

 ぜひ貰っていきたい。

 コガネに無理を言ってでも持っていきたい。


「コガネ~!!」

「どうした?」

「荷物に余裕ってある?」

「ああ。……なんでだ?」

「お米!荷物に余裕があるなら持ってっていいってレヨンさんが!」

「なるほどな……大丈夫だぞ」

「やったー!」


 コガネ君の許可がおりた。

 今度はそれをレヨンさんに伝えるために小走りで戻る。

 全力疾走するとコガネに怒られるんだよね。

 そんなわけで小走りで戻ってきた私を見てレヨンさんが微笑む。


「許可がおりたみたいだね」

「はい!」

「二重袋にしておいたよ。コガネ君に渡しておくから、ご飯食べちゃいな」

「はーい」


 レヨンさんの面倒見のよさよ……

 おねーちゃんと呼びたい感じだね。

 漢字ではなくひらがな表記で。

 子供っぽい感じで。


「……うん。おいしい」


 お米サイコー。

 ヒエンさん、お米は入手できないのかな?

 ヒエンさんが駄目なら入手は相当難しいことになる。

 レヨンさんもだけど、ヒエンさんも顔が広いからね。

 たまに人間じゃない方から薬の注文受けてたりするし。

 ……いや、たまにじゃないな。結構頻繁だな。


「ふう。ごちそうさまでした」


 手を合わせて箸をおく。

 ……食器、どうすればいいんだろう?

 置いておくべきか、流し台と思われる所に持っていくべきか……


「お、食べ終わった?」

「はい。おいしかったです」

「それは良かった。食器は置いといていいよ。コガネ君を手伝ってきな」

「はーい」


 考えている間にレヨンさんが戻ってきた。

 逆らう理由もないので言われた通りコガネのところへ向かう。

 荷造り終わったかな?

 だとしたら私がすることはないのだが。

 ……いっこくらい仕事残っててほしいな。今日何にもしてないや。


「コガネ~。荷造り終わった?することある?」

「もう少しだ。主、そこの箱取ってくれ」

「はーい」


 よし、まだやることは残ってるみたいだ。

 コガネ君が指さした箱を持ち上げながらそんなことを考えた。

 ……この箱、何が入ってるんだ?

 手のひらサイズなのに結構重いんだけど……


「コガネ、これなに?」

「店主から頼まれたものだ。開けていいぞ」


 よし、開けよう。

 そんなわけで箱を開ける。

 中に入っていたのは、薄紫の小さな石だった。

 綺麗。綺麗なんだけど、なにこれ?


「コガネ君、これは?」

「星詠み石、だったか」

「星詠み?」

「ああ。錬金術でつくるらしい。何かの薬に使うんだそうだ」


 なるほど。それでコガネ君に頼んだのか。

 祭り一日目にコガネが二時間くらいどこかに行っていたのは、多分この石を貰いに行っていたんだろう。


「星詠みねぇ……どんな薬だろ?」

「さあな。薬のことは分からん」


 すぱっと言い切ったコガネ君はなんだかかっこよかった。

 分からないことは分からないって言った方がいいんだね。

 いいことを知った。


「星詠みと言ったら星花猫せいかねこだな」

「せい……?」

「星花猫。星詠みをする猫だ。人が星詠みを始める1500年前から星と生きてきた種族だな」

「へぇ~……魔獣?」

「神獣だ」


 魔獣とか言っちゃった。

 怒られそう。誰かに。


「ところで、神獣と魔獣の違いってなに?」

「人に害を及ぼすのが魔獣、及ぼさない魔力が強く珍しいのが神獣だな」

「あれ?意外とざっくり分けてる?」

「そうだな」


 そういえば、コガネ……というか白キツネも神獣なんだよな。神獣っていうと天の上にいるイメージあるけど、そんなことはないのか。

 コガネは「神獣」って感じじゃないんだよな~

 普段から私に世話焼いてるからかな?


「さて、主。準備は終わったぞ」

「お、じゃあ行く感じかな?」

「そうだな。レヨンに挨拶して出よう」

「はーい」


 これでまたしばらくレヨンさんとお別れかぁ……

 寂しいな……

 でもまた遊びに来れるし、文通もできるか。


「レヨンさーん」

「おや、準備は終わった?」

「うん。もう出ます」

「そっか。なら送るよ」

「ありがとうございます」


 レヨンさんは手に小さな袋を持っていた。

 家から出て、丘を下り始めたころにその袋を開け、中身を取り出す。

 ……粉?


「レヨンさん、何ですか、それ」

「魔除けの粉。アオイちゃん、目閉じて」


 言われた通り目を閉じて待機する。

 すると、上から何かが降ってきた。


「もう開けていいよ」

「今の、さっきの粉ですか?」

「そうだよ。気休め程度の力しかないけど、ないよりマシだと思う」


 ……なにが?

 私の頭の上のクエッションマークが見えたのか、コガネ君が説明してくれた。


「魔除けの粉には、使用者を魔物から狙われにくくする効果があるんだ。ただ、そんなに強い効果じゃないし、主の場合元が狙われやすいから、それをほんの少しマシにする感じだな」


 なるほど。いつも丁寧な説明、ありがとうございます。

 というか、そんなものがあるんだね。


「ちなみに五時間くらいで効果切れるからね」

「短い……」

「気休めだって言ったでしょ」


 ほんとに気休めなんですね……

 でもまあ、少しでも襲われにくくなるならありがたいか。


「そんなわけで、お見送りできるのはここまでかな」

「どんなわけですか……」

「情報屋の方が忙しくてね。ごめんね」

「そうなんですか。……それ、お祭り行ってて仕事してなかったからでは?」

「まあ、そうだね」


 そんないい笑顔で言わないでほしい。

 でも、私たちが遊びに来てたのも影響してるのかな。

 だとしたら申し訳ない。


「それじゃ」

「はい。お邪魔しました」

「うん。また遊びにおいでね」

「はい!」


 手を振って別れる。

 コガネもレヨンさんに頭を下げてから歩きだした。

 サクラはだいぶ寂しそうだな。レヨンさん好きだもんね。

 モエギは……ケロッとしてるね。


「さて主」

「なーに?」

「とりあえず馬を借りてくるが、なにか希望はあるか?」

「特になし!!」


 いつも通りだ。希望なんてあるわけがない。

 というか、わからないからリクエスト出来ない。

 コガネも分かって言っているのか、返事を聞いてすぐ馬貸しに歩いて行った。

 少し待つと、一頭の馬を連れて戻ってくる。

 今回のお馬様は見事な栗毛だった。


「主、荷物貸してくれ」

「はーい」


 コガネ君に荷物を渡し、お馬様に頭を下げる。


「ケートスまで、よろしくお願いします」


 お馬様は、ええ。よろしくね。と言ってくれた。

 女性でしたか……

 そんなことをしている間に、コガネ君は荷物を固定し終わっていた。

 馬に跨り、手を差し伸べてくる。

 相変わらず王子だね。


「主、行くぞ」

「うん」

「ピィ!」「チュン」

「うん、お願い」


 さあ、レッツゴーケートス!

 今回は何回襲われるかな!?




 アオイちゃんを見送り、一人家に帰る。

 少し、申し訳ないな。

 本当は仕事が溜まってなどいないのだ。

 情報屋は現在わりと暇である。

 それなのに嘘をついて見送りを切り上げたのは、来客の予感がしたからだ。

 そして、その予想は違わない。


「やあ、どうしたんだい?先代勇者さま」


 私の声に、家の入口に立っていた人物はゆっくりと振り返った。

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