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73,Q楽しいですか?A楽しいです!すごく!

 ……眠い。すごく眠い。

 コガネに起こされた。

 現在7時。いつも通り。

 ……ねっむ。


「アオイちゃん、起きてる?」

「起きてないです……」

「いや、起きてるよね?」

「起きてない……です……」

「コガネ君、アオイちゃん起こして来て」

「分かった」


 布団に戻ろうとしたらコガネ君に引っ張り出された。

 首根っこを掴んでズルッと。

 コガネ君、コガネ君、もうちょっと優しく扱ってくれてもいいのよ?


「主、いい加減起きろ」

「ううう……」

「朝食いらないのか?」

「いる……」


 くっそねみぃ……

 何が悪いって、この布団がフッカフカなんだよ……

 布団最高……レヨンさんいつもこんな布団で寝てるの?

 よく起きられるね……


「主、ほら、自分で歩く」

「うん……歩く……」


 目を擦りながら歩き始めると、コガネ君は私の手を引き始める。

 ……もう、お兄ちゃんと呼んでいい気がしてきた。


「アオイちゃん、おはよう……起きてる?」

「起きて……ます……」

「本当に起きてる?」

「はい……」

「主、いつにもまして眠そうだな」


 グリグリと目を擦り、あくびをしていると、レヨンさんが頭を撫でてきた。

 なんだなんだ。撫でろ撫でろもっと撫でろ。

 手に頭を押し付けていると、ポスポスと軽く叩かれる。

 ……起きろって事かな?

 分かった、分かった。起きるよ。いい加減。


「……おはよーございます」

「おはよう。やっと起きたね」


 私が起きたのを確認して、コガネ君がイスを引く。

 私が座ると、自分も隣に座る。

 それをみて、レヨンさんは笑う。すごく楽しそうに笑う。


「コガネ君、執事感増したね」

「そうか?」

「どっちかっていうと騎士感増してるとおもうんですけどねぇ……」

「騎士兼執事?」

「騎士兼執事ですね」

「なんの話だ?」


 コガネ君、自覚なし。

 こんなに執事感あるのに。騎士感もあるのに。

 そんな事を考えていたら朝食が出てきた……って、え?ちょっと、まてまてまてまて、これって……


「レヨンさん!?」

「なに?」

「これ、米!」

「そうだよ」

「この世界、米、あるんですか!?」

「よし、説明するから落ち着け。そして食え」

「いただきます!」


 コガネ君は出された米を見て物珍しそうにしている。

 つまり、この世界で米はメジャーではない。

 でも、ある。

 多分日本的なところがあるんだろう。島はないけど。


「主、これは上手いのか?」

「美味しいよ。私は食べたくて仕方なかったんだよ」

「……主がもといた世界では一般的だったのか?」

「うん。私の暮らしてた国では主食だったよ」


 言いながら手を合わせる。

 いただきます。


「……ああ……美味しい……やっぱり米美味しい……」


 そんなわけで箸を動かす。

 和食だ。めっちゃ和食だ。

 幸せだ……


「さて。アオイちゃん、米の入手経路、知りたい?」


 口いっぱいに米が入っているので頷くことで答える。

 知りたくないわけがない。


「米は第7大陸で作られてるんだよ」

「……第7大陸、ですか」

「うん。だからすごく珍しい」

「第7大陸でしか育たないんですか?」


 箸を止めて質問すると、レヨンさんは首を振る。

 違うのか。


「第7大陸、絶賛鎖国中なんだよね」

「ふぁ!?」


 いや、なにやってんの!?

 鎖国中!?いつの時代の日本だよ!!


「……あれ?じゃあなんで米入手出来たんですか?」

「ちょっと人脈がね……」

「さ、さすがレヨンさん……」


 鎖国中の第7大陸から米を入手出来る人脈とは一体……


「……あれ?というか大陸単位で鎖国中なんですか?」

「第7大陸は一つの国なんだよ」

「大陸全体が?」

「そう。まあ、小さいしね」


 レヨンさんは言いながら、世界地図を出してくれた。

 そして7と数字が振ってある小さな大陸を指差す。


「ここが第7大陸。第6大陸としか繋がってなくて、大陸全体が一つの国という珍しい所。割と日本っぽいよ、ここ」

「なるほど……日本ポジションですか……」


 そこまで話して、レヨンさんはコガネを見る。


「というか、さっきから日本日本言ってるけど、コガネ君にはそこら辺の事話してあるの?」

「主が異世界から来た、とかそこら辺か?」

「そうそう。知ってるんだね」

「ああ」


 レヨンさんは、コガネ君をじーっと見ていたが、何かに納得したのか1人頷いて席を立った。

 そして、こちらをビシッと指さした。


「アオイちゃん、食べ終わったら私の部屋に来てね。服用意してあるから」

「へ?服?」

「せっかく祭りに行くんだからお洒落しようぜ」


 言いながら親指を立ててくる。

 服かぁ……

 ……あれ?というかなんでレヨンさんは服用意出来たんだろ?

 サイズとか大丈夫なのかな?


「主、食べないのか?」

「食べる。絶対食べる」


 とりあえず食べよう。

 せっかくの和食を逃すわけにはいかない。


 はい。美味しくいただきました。


「ごちそうさまでした〜」


 さて、レヨンさんの部屋はどこだったか……


「ピィ!」

「あ、サクラ」

「チュン」

「おお、モエギ」

「ピィピッ!」「チュン」

「レヨンさんの部屋ってどこか分かる?」

「ピ!」「チュン」


 窓から2羽が入ってきて肩に止まる。

 レヨンさんの部屋も分かるらしいから、案内して貰おう。


「コガネ君、行こ」

「ああ」


 レヨンさんの部屋は1階の奥だった。

 とりあえずノックしようかな。


「レーヨンさーん」

「はいはい。ああ、サクラとモエギも来たんだ」

「ピッ!」「チュン」


 レヨンさんは扉を開けて、中に入るように促してくる。

 お邪魔しまーす。


「よし。じゃあアオイちゃんは着替えようか」

「いきなりですね」

「時間かかりそうだからね〜。で、コガネ君」

「なんだ?」

「祭り、そっちの姿で行くの?」

「ああ」

「じゃあこれ着て」

「……俺もか」

「もちろん」


 コガネ君は着替えを渡され部屋から追い出された。

 ……なんか、レヨンさんとヒエンさんって若干似てるよね。

 そんな事を考えていると、レヨンさんがこちらを向いた。ちょっとびっくりした。


「さあ、アオイちゃん。着替えよう」

「……レヨンさんは?」

「私はこれで行く」

「えー……」


 いつもの服じゃないですかー……

 私たちは着替えさせておいて……

 そんな抗議の目を向けていると、


「まあ、明日は着替えるから」


 と言われた。

 そういえば、2日目の方が賑やかって聞いた覚えがあるんだけど、なにかあるのかな?


「明日はダンスパーティーだからねぇ……今年も壁の花に徹する予定だけど」

「ダンスパーティー!?」

「そうだよ。アオイちゃんはさぞ多くの人に誘われることでしょう」

「え!?私踊れないですよ!?」

「それでも誘われるだろうね」


 レヨンさんは言いながら服を脱げと手振りで急かしてくる。

 分かりましたって。


「ところでアオイちゃん、髪留めとかは持ってきてたりする?」

「うーん……前髪のこれだけですね」

「なら私の付けるか。それは綺麗だからそのまま付けてて」

「はーい」


 ところでレヨンさん、この服めっちゃフリルなんだけど?

 私今日一日これ着てるの?マジで?


「レヨンさん」

「んー?」

「この服ぴったりなのはなぜでしょう?」

「お、よかったぴったりか」

「答える気は……」

「ああ、それ私が作ったからね」

「は!?」

「採寸はモエギの目測だよ。あの子の目測正確なんだよね」


 モエギすげぇ。レヨンさんもすげぇ。


「レヨンさん、服作れるんですか」

「まあ、無駄に長生きだからね。というかほら、座って。髪セットするよ」

「はーい」


 そんなわけで準備完了です。

 長かった……

 コガネ君も髪いじられてたね。

 オールバック。めっちゃカッコイイ。本当にカッコイイんだけどどうしよう。

 そんなコガネ君は着替えてレヨンさんに髪をいじられた私を見てなんか慌ててた。

 手がさまよってたんだけど、あれは一体なんだったのか……


「はーいほら行くよー」

「あ、レヨンさん待って」

「主、足元見ろ、転ぶぞ」

「ピィ!」「チュン」


 ちなみに本日、レヨンさんに踵の高い靴を履かされています。

 本当に転びそう。

 レヨンさん歩くの速い……


「主、大丈夫か?」

「うん……ごめんコガネ君、手を貸してくれ……」


 そんなわけでコガネ君に掴まって歩くとしよう。

 確か広場に行くんだよな……

 ……広場ってどこだっけ?

 まあ、コガネ君が分かってるだろうから大丈夫か。

 いざとなったらサクラとモエギに案内頼めばいいし。


 はい。広場到着。コガネ君がちゃんと行き方知ってました。

 ついでにレヨンさんも見つけてくれた。


「おーい、レヨンさーん」

「おお、アオイちゃん。来たか」

「置いていかないで下さいよ……」


 レヨンさんは誰かと話していたようで、話していた相手の人もこちらを向いた。

 ……あ、ヴィスリさんだ。


「お久しぶりです。ヴィスリさん」

「お久しぶりです。覚えていて貰えたようで何よりです」

「アオイちゃ〜ん。久しぶり」

「あ、ファルさん。お久しぶりです」


 前回キマイラに来た時にお世話になった騎士団長のヴィスリさんと、その契約獣ファルさんだ。


「アオイちゃん可愛い」

「ファルさんも可愛いですね」


 ファルさんは本日動きやすそうだけどふわふわした服を着ていた。

 ヴィスリさんは鎧だから警備とかなのかな?


「それでは、俺はこの辺で。ファル、行くぞ」

「はーい。アオイちゃん、楽しんでね〜」

「はい」


 手を振ってお別れする。

 話している間中、コガネ君は私の髪留めをいじっていた。

 そんなに気になるの?可愛いな。


「おおこれは、ベールさんではないですか」

「どうも。久しいね」

「お久しぶりでございます。……して、お隣の美の結晶のような方はどなたです?」

「私の友人だよ」


 レヨンさんに肩を叩かれた。

 びっくりした。振り返ったら目の前に男の人がいた。

 シルクハットかぶってて燕尾服みたいなの着てる。

 ……なんというか、「紳士」って感じだな……


「アオイちゃん、この人はルチル。キマイラでも有数の貴族サマ。でも偉そうでも高圧的でもない割といい人だよ」

「レヨンさんの説明文が酷すぎるのは気のせいでしょうか?」

「気の所為だよ」


 いや、かなり失礼だったよね?

 でもルチルさんは怒るどころか楽しげに笑っている。


「私が偉いわけではないですからね。むしろ何もしていない私よりベールさんの方が地位が上のべきなのです」

「そんなわけで私はこの人に対して態度がでかい」

「いや自覚あるなら直しましょうよ……」


 レヨンさん自由だな。

 というかルチルさん、本当に紳士なんですね……

 いい人だ……


「さて、いつまでもこうして話していたいのですが、私はそろそろ行かなくてはいけませんね。ベールさん、アオイさん、ゆっくりとお楽しみ下さい」

「おう。じゃあね」


 レヨンさんは片手をポケットに突っ込んでヒラヒラと手を振っている。

 私は頭を下げておく。

 レヨンさんよ、あまりにも態度が大きすぎませんか?


「ルチルはこの収穫祭にも結構な額を出してるんだよね。おかげで豪華になるし露店も多いし」

「すごい人ですね」

「そうだねぇ」


 そんなすごい人に対して態度が大きいレヨンさんであった。

 でもレヨンさんもすごい人なんだよね。

 ……なんか私の周り、すごい人が多すぎる気が……


「さてと。露店めぐり、するかい?」

「します!」

「じゃあ行こう」


 レヨンさんが私の左手を引いて歩き始める。

 さっきとは打って変わってゆっくりした歩だ。

 ちなみに右腕はコガネ君に預けてます。

 あれだ。たまにアニメやらなんやらで見るじゃん?エスコートしたりされたりしてる男女の姿。

 あの感じだ。

 これすごく安定するね。コガネ君が支えてくれてるのかな?


「レヨンさん、あれはなんですか?」

「あれは収穫祭の開催を祝う旗。毎年少しづつデザインが変わるんだよ」

「あれを買うためにわざわざ来る人もいるぞ」

「コレクターか……」


 この状態いいな。両サイドに説明役がいる。

 ヒエンさんからお小遣いもらったし、買っていこうかな?


「買うか?」

「うん……欲しい」

「なら行こうか」


 レヨンさんが手を引いて旗売りの所に歩いていく。

 旗売りは若い男の人だった。

 その男の人はレヨンさんを見て表情を明るくした。


「ベールさん!いらっしゃい!今年は俺がデザインさせて貰えたんですよ!」

「おー。良かったね」

「はい!そんなわけで買ってください!」

「どんなわけだよ。買うけど」

「やったー!」


 顔なじみなのかな?

 男の人は随分可愛らしい笑顔を浮かべている。

 コガネ君は興味深そうに旗を眺めている。

 これ、一つ一つ手描きなのかな?多分そうだよな。

 すごいなぁ……ちゃんとデザイン同じだもんなぁ……


「というかベールさん、隣の子は誰?天使?」

「私の友人。天使って認識でいいよ」

「良くないですよ!?」


 レヨンさんがとんでもない誤認を植え付けようとしていた。

 なにやってんのかな!?なにがしたいのかな!?

 とりあえず誤解を解こう。

 そして旗を買おう。




 はい。もう夕方ですよぉぉぉ!!

 楽しかった。実に楽しかった。

 色々買いすぎてコガネ君の手が埋まってます。

 これ、持って帰るの大変だな……

 夜は飲み会みたいになるからいない方がいいとレヨンさんに言われたので、夕方で退散します。

 そんなわけで今はレヨンさんの家に帰るところ。

 いやあ楽しかった。


「さて。帰って風呂入って寝よ」

「そういえば、この世界お風呂は普通にあるんですよね……」

「あー……私も昔不思議だった。最近は考える事すらしてないや」


 レヨンさんとくだらない会話をしながらのんびり歩くこの感じ、結構好きだな。

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