71,Qお出かけですか?Aレッツゴーレヨンさん家!です。1
「アオイちゃん、水分は?」
「革袋の水筒にたっぷりと」
「主、着替え入れたか?」
「3着入ってるよ」
「チュン」「ピッ!」
「持ったよ」
今日はエキナセアの中が朝から騒がしい。
というのも、レヨンさんに呼ばれて祭りに行くため、今日から五日間ガルダを離れるのだ。
もちろんコガネとモエギ、サクラも一緒だ。
……うん。まあつまりまた1ヶ月ぶっ飛ばしたわけだ。
特に書く事なかったから。
「で、アオイちゃん。これが青龍の涙よ」
「はーい。……コガネ君、どこが1番安全?」
「……俺が持ってようか?」
「お願いします」
受け取った青龍の涙をコガネ君に渡す。
小さい木箱だから私が持ってると無くしそうなんだよね……
「さて……主、そろそろ行こう」
「はーい。それじゃ、ヒエンさん。行ってきます」
「はいはい。気を付けてね」
エキナセアを出て、まずは馬貸しのところに向かう。
今回はクリソベリルは一緒じゃないから、馬車での快適な移動(それでも死にかける)は出来ないのだ。
まあ、馬も好きだよ。死にかけるけど。
「馬か〜そういえば、この世界って馬の種類はどれくらいいるの?」
「種類、か。基本的に天馬、魔馬、空馬……としか分けないな」
「そうなんだ……」
空馬が気になる。飛ぶのかな?
翼でも生えてるのかな?
……それ、ただのユニコーンな気が……
というかユニコーンっているのかな?
居そうではあるけど……
「主、馬の希望はあるか?」
「ううん。コガネに任せる」
「分かった。少し待っててくれ」
コガネ君は馬貸しのところに行ってなにか話し始めた。
それにしても、朝早いと人少ないな……
門が閉じてるとかあるんだっけ?
そんな事を考えていると、後ろから声をかけられた。
「お?なんだ嬢ちゃん、1人か?」
振り返ると、よく日焼けした親父!って感じの人がいた。
……危険ではなさそう、かな。
単に私の見た目が子供だから心配してくれたんだろう。
「いえ、連れが馬を借りに行ってます」
「そうなのか。どっか行くのかい?」
「キマイラに行くんです」
「この時期にキマイラってぇと、収穫祭か」
「はい」
そんな会話をしていたらコガネ君が戻ってきた。
……早く行かないとこの人が威嚇対象になってしまう。
「それじゃ、行きます」
「おう、気ぃつけてな」
ペコリと頭を下げてコガネ君のところに走り寄る。
「主、さっきの知り合い?」
「ううん。初対面」
「…………」
「いい人だったよ?」
「そうか」
コガネ君、コガネ君、無言の威嚇やめよう?
「よし、じゃあ主。荷物渡してくれ」
「はーい」
財布やら何やらを入れた巾着以外をコガネ君に渡し、馬に話しかける。
「重いかも知れませんが、よろしくお願いします」
頭も下げておく。
馬は「可愛い女の子なら大歓迎だぜ!」と言ってくれた。
「主、掴まって」
「はーい」
荷物を固定したコガネ君はヒラリと馬に跨り、私に手を差し出してれる。
相変わらず王子だな……
差し出された手に掴まると、フワリと身体が浮く。
久々の感覚だ。
「主、大丈夫?」
「うん」
「じゃあ行こう」
鞍に着地してすぐに横座りから体勢を変え、鞍に跨りコガネ君に体重を預ける。
これが一番安全だ。
「ピッ!」「チュン」
「はーい。お願いね」
サクラとモエギは今回も交代で見張りをしてくれるらしい。
門を潜り、ガルダを出る。
……久々!
「わあ〜灯棒だ〜」
「前に散々見ただろう?」
「でも久々に見るからね。なんか楽しい」
「そうか。だが主、はしゃぎ過ぎると後が辛いぞ?」
「……そうだね」
そうだった。また命の危機と遭遇するんだった。
その時に疲れきっていたら本当に死ぬ気がする。
今は大人しくしてよう。
「今回もラミアを通って行くんだっけ?」
「いや、今回は行きも帰りもケートス経由だ」
「あ、そうなんだ」
「ああ。パンが食べたい」
「それは確かに」
コガネ、あのお店のパン相当気に入ってたもんね……
私もだけどさ……
「まだあるかな?あのお店」
「あると思うぞ。船が旅用じゃなかったから、ケートスに住んでるんだろう」
「へぇ〜……そうなんだ」
というかなんでコガネ君は船の種類とか分かるの?
もしかしてこの世界では常識なの?
「……主、スピードを上げるぞ」
「はーい……なんかあった?」
「少し嫌な気配がする」
……マジすか。早くね?
でもサクラは降りてきてないな……あくまで勘って感じかな?
「……チュン」
「え?」
「チュン、チュッチュン」
「……マジ?」
「ピーッ!!ピッピィ!!」
……えー……早すぎだろ……まだガルダを出て十五分くらいなんだけど……
まだ灯棒も見えてる範囲なのになぁ……
「主、掴まってろ」
「はーい!」
体勢を変え、コガネ君の首に手を回す。
私が掴まったのを確認し、コガネ君はスピードを上げる。
サクラは上空に戻り、モエギも飛び上がったようだ。
「チュン!」
「分かってる!」
「私には全く分からない!!」
振り返る余裕もないのでコガネ君にしがみついて顔を埋める。
どうやら何かに追いかけられているようだ。
……なんだろな〜今回は前回以上に命の危機を感じる気がするな〜。
「コガネ君、何が来てるの?」
「分かりやすく言うと狼と虎を足して二で割ったような魔物だ」
「……全っ然分からんわ」
「だろうな」
もしかしてコガネ君、元から教える気がないのかな?
少し心の余裕が出てきたので後ろを覗いて見る。
見えたのは、狼と虎を足して二で割ったような生き物だった。
……うわあ……
「コガネ君、あれは何?」
「タイガーウルフだ」
「そのまんまだなぁ……」
「分かりやすくて良いだろ?」
「そうだね……」
この世界、分かりやすさを優先し過ぎてる気がするんだよな……
別に文句は無いけどさ……
「……ところでコガネ君、あれどうするの?」
「逃げ切れるようならそうするが……ダメそうだな」
「……どうするの?」
「倒すか」
……え?なんて?
ちょっ、まっ、コガネ君?
「なにするつもりですかコガネ君」
「安心しろ。魔法飛ばすだけだから」
「……うん。そっか」
そういえば白キツネって、魔法使うの得意な種族だったね……
コガネは基本的に物理攻撃してるから忘れてたよ……
私が謎の笑みを浮かべていると、馬が「嬢ちゃん掴まりな!跳ぶぜ!」と言ってきた。
……跳ぶ?
「ふぃひゃぁぉ!?」
「主、なんて言った!?」
「なにも言っとらんよ!!」
跳んだ。多分跳んでる。おそらく今、宙に浮いてる。
何があったのかは知らないが、今現在馬の足は地面に着いていないらしい。
何も見えないけどね。私今コガネ君にしがみついてるからね。
そろそろ死ぬかな?などと考えていると、再び馬の声がする。「嬢ちゃん口とじな!舌噛むぜ!」
……ああ、着地するのか。
「主、大丈夫か?」
「うん……」
「……休憩するか?」
「タイガーウルフは?」
「溝に落ちたぞ」
「……溝?」
コガネ君が馬の足を止めさせたので、後ろを覗く。
そこには、幅5mくらいの溝があった。
……え?これ跳び越えたの?
「……お馬様、すげぇ……」
「ジャンプ力が高い馬を借りて正解だったな」
お馬様の鬣を撫でながら言うと、お馬様は「褒めてもなにも出ないぜ!」と嬉しそうに言っていた。
タイガーウルフはこの溝の中に落ちたらしい。
「ところでコガネ君、なんの魔法使ったの?」
「簡単な風魔法だ。こちらを風の上に乗せ、タイガーウルフを風の下に入れた」
「……つまり?」
「こちらは高く跳べるが、向こうは跳べない、ということだ」
「なるほど」
とりあえずここを離れよう。
流石にこの溝の横で休憩はしたくないです。
「上がって来ないかな?」
「大丈夫だと思うぞ。あの溝は深さ15メートルくらいあるから」
「……それ、死んだんじゃ……」
「タイガーウルフは生命力が強いから、頭から落ちたりして無ければ生きている……かもしれない」
……アーメン……
タイガーウルフよ……安らかに眠れ……
「チュン、チュン」「ピィッピッピィ!」
「そうだな。主、休憩はもう少し後でいいか?」
「うん。大丈夫だよ」
私の返事を聞いて、コガネ君はお馬様の足を進める。
さて。私はこの後何回くらい生命の危険を感じる事になるのでしょうかね……
空の端が赤く染まり始めた。
もう少ししたら空全体が赤くなるだろう。
ああ……空が綺麗だな……
「主、灯棒が見えたぞ。少し急ぐか?」
「あー……うん。そうだね。早めに宿を確保したいかな」
「分かった。掴まってろ」
私の返事を聞いてコガネ君はスピードを上げる。
……え?なんで朝から夕方に時間が飛んでるのかって?
いつも通りですよ。全部書いたら2、3話埋まるくらい襲われて追い掛け回されたんですよ……
ちなみに今回生命の危険を感じた回数は、最初のタイガーウルフを入れて5回でした。
ほんとに……国外出るのは割と好きなのに……これじゃあ気軽にお出かけとか出来ないよ……
「主、入国」
「はーい」
コガネ君に背中を叩かれ顔を上げる。
そしてケートス入国だ。
……わあ、懐かしい。
「サクラ、モエギ、宿探しお願いしていい?」
「ピィ!」「チュン」
「主、一旦馬貸しのところに行くぞ」
「はーい……あれ?明日は違う馬になるの?」
「いや、明日もこの馬を借りよう。主との相性もいいみたいだしな」
「そっか。それじゃあ、明日もよろしくお願いします」
鬣を撫でながら言うと、お馬様は「おうよ!」と言ってくれた。
「さて……主、1人だと危険だから付いてきてくれ」
「うん。分かった」
私としてもコガネ君が一緒の方が安心だ。
多分これから、また何か面倒事に巻き込まれるだろうからね……




