70,Qその方は?Aエルフさんです!!
ネックレスを取りに行ってから20日くらいが経過した。
……うん。なにもなかった。
毒消しは完璧に作れるようになり、最近は売り切れたら作るスタイルになっている。
で、今は店番中。
今日は割とお客さん来る気がするな。
そんなことを考えながら筆記テスト対策のプリントをめくる。
「ふぁぁ〜ぁぁ」
あくびをしながらプリントを眺めていると、扉が開いた。
やっべ。
「いらっしゃいませ」
ちなみに今の時間は9時15分。
開店直後もいいところだ。
「おっす。アオイさんおはよ」
「おお、レド君か。おはよー」
入ってきたのは、ツンツンと尖った赤髪が特徴の少年だ。
レド君と言って、エキナセアの常連客である。
「今日はどうしたの?」
「これこれ。クエスト」
レド君はそう言って1枚の紙を差し出してくる。
ギルドのクエスト受注証明書だ。
この少年はエキナセアが発注している薬草集めのクエストを高確率で受けてくれるのだ。いい子。
「はいはーい。ちょっと待ってね」
紙を確認してカウンターの下から薬草を入れる用の袋を2枚取り出す。
「これが一杯になるようにお願いします」
「おう!」
レド君は元気に返事をして店から出ていった。
外からコガネちゃんの
「気を付けてね!」
という声が聞こえてきた。
コガネちゃんがお姉さんやってる。可愛い。
そういえば、エキナセア発注の薬草集めのクエストはあまり人気がなかったりする。
報酬はいいが面倒くさいのだ。
薬草はどこにでも自生しているが、流石に大袋2つ分となると移動しながら集めないといけない。
それに、モンスター討伐の依頼なら報酬金と共に討伐したモンスターの素材が手に入るが、薬草集めのクエストは報酬金しか手に入らない。
なので、そこそこの腕前がある冒険者は弱いモンスターを討伐するクエストを受けたがるものなのだ。
「……でもレド君、普通に強いんだよね」
この薬草集めのクエストは、時間はあるが金がない新人冒険者が受けるようなクエストなのだ。
でもレド君は普通に強い。
ヒエンさんがいうには、人間ではないんだとか。
……じゃあ何なのだろうか?
見た目普通の人間だけど……
「ハーフエルフとか?」
……違うかな。レド君、そんなに魔力量は多くないってコガネちゃんが言ってたし。
うーん……分からん。
今度本人に聞いてみよう。
「……植物に関わる種族ってあったっけ?」
レド君は薬草が多く自生している場所が分かると言っていた。
だからレド君とってエキナセアのクエストは面倒ではないし、息抜きにちょうどいいんだとか。あと、報酬が多いから見つけるとすぐに受注するって言ってたな。
そんなことを考えているとチリリン♪と音がして扉が開いた。
おや、お客さんだ。
「いらっしゃいませ」
「こんにちは〜って、あれ?ウィーリアじゃない」
「ウィー……あ、ヒエンさんなら作業部屋に居ますよ」
「あ、そうなんだ。貴女は新しい店員さん?」
「はい。ヒエンさんに拾われました」
「そうなの。……あ、魔法薬2つと魔力消し5つ貰える?」
「はい、少々お待ちください」
言いながら横の棚を開く。えーっと、魔法薬と魔力消しだよな。
……あ、魔力消し在庫少ないや。
「350ヤルになります」
「はーい」
一旦カウンターの上に商品を置いて、お金を出して貰う間に袋に入れる。
この世界、紙は多いんだよな。何故か質もいいし。
結構謎だな。
「はい、350ヤル」
「……ちょうど頂きました。こちら商品になります」
「ありがとう。店番頑張ってね」
「はーい」
……あ、そうだ。魔力消しの在庫。
ヒエンさんに報告しておこう。
そう思ってイスから降りる。
「ヒエンさーん」
「あらアオイちゃん。どうしたの?」
「魔力消しの在庫が少なくなってる」
「あらあら。作らなちゃ。ありがとうね」
「いえいえ」
報告だけして店番に戻る。
今日はお客さん多い気がするからね。
ちゃんとお店にいないと。
「さて。どこまでやったんだったか……」
イスに座り直し、筆記テスト用の対策プリントを眺める。
イセルアさん、だっけな?このプリント作った人。
本当に感謝したい。これ、すごく分かりやすい。
「主、掃除終わったよ」
玄関前を掃除していたコガネちゃんが店の中に入ってきた。
両手で箒を持ってトコトコと歩いてくる。可愛い。
「お疲れ様〜」
コガネちゃんは箒をカウンター内の用具置きにしまいイスに座る。
ちなみに、コガネちゃんも飛び乗ってます。
優雅に座れるのはヒエンさんくらい。
ヒエンさんも身長足りてない気がするんだけど、いっつも優雅に座ってる。
「アオイちゃん」
「あれ?ヒエンさん。どうしたの?」
そんなことを言っていたらヒエンさんが現れた。
手にはメモを持っている。
……これは。
「魔力消しの材料が切れてたからお使いに行ってくれない?ついでにその他諸々も」
「はーい。どこに行けばいいの?」
「西区よ。職人街の外れにある店」
「分かったー」
ヒエンさんがメモと財布(お使い用)の入ったカゴを渡してくる。
それを受け取ってイスから降り、コガネちゃんに声をかける。
「コガネちゃん、店番お願いします」
「うん。……主、大丈夫?」
「大丈夫だよ〜モエギ連れて行くし」
「そっか」
そんな訳で店番をコガネちゃんに任せ、外に出る。
扉を閉めてから上を向き、
「モーエギー」
と呼んでみる。
すると上から急降下してくる黄緑色の物体が。
「チュン」
「お使い行くから付き合ってくれない?」
「チュン」
「ありがとう」
モエギは私の目の高さで止まり、用件を聞くと肩に止まった。
よし。行くか。
大通りに出て列車に乗り、西区を目指す。
メモにはヒエンさん手書きの上手すぎる地図が書いてあった。
……って、メモが2枚?
「なんだろ?」
見てみると、
〈ついでにギルドでクエスト発注してきて♡
内容⇒ブルームドラゴンの花採取
報酬⇒1500ヤル
ランク指定⇒A↑〉
……え?ギルド?マジで?
しかもなに、ブルームドラゴンの花って?
……えー……マジかよー……ギルドかよー……
行くけどさぁ……
「チュン?」
「ううん、なんでもないよ」
モエギが心配そうに擦り寄ってくる。
モッフモフ。でも今の季節は暑い。
「モエギ、その毛皮暑くないの?」
「チュン」
「そっか」
まあ、脱げないのに死ぬほど暑かったら大変どころの騒ぎじゃないもんな。
「チュン、チュン」
「ん?あ、本当だ」
くだらない事を考えている間に列車は西区に到着した。
職人街の外れ、魔女の隠れ家……魔女の隠れ家!?
いや、怪しすぎだろおい!!
でもまあ、ヒエンさんの知り合いだし……怪しくても安全……かな?
「モエギ、魔女の隠れ家って店を探すよ」
「……チュン」
「だよね」
モエギも不審げだ。
不審げではあるがちゃんと探すのがモエギである。
店の特徴を聞いてきた。
「全体にツタが巻き付いてる小さい建物、だって」
「チュン」
私が答えると、モエギは上昇し始める。
おー、高い。モエギちっさ。
上空を旋回しているモエギを眺めること数分。
「チュン、チュッチュン」
「うん。お願い」
見つけたらしく、案内してくれるようだ。
ちょうど私の目線の高さを、ちょうど私の歩行速度で飛ぶモエギの気遣い。
うちのお供、私を甘やかすの好きだよね。
「チュン」
「ここ?」
「チュン」
モエギについて行くと、そこにはツタが巻き付いてる小さい建物が。
……うん。ここだろうな。
「入ろっか」
「チュン」
扉を開ける。……重いんだけど、この扉……
どうにか扉を開けて中に入る。
中は暗く、窓から入る光も弱い。ツタのせいでだな。
「……こんにちは〜?」
声をかけてみるが返事がない。
……留守、ではないと思うんだけどな……
「おやおや、初めて見る子だねぇ」
「ふぁ!?」
キョロキョロと辺りを見渡していると、唐突に声が聞こえてきた。
お年寄りのような喋り方だが、若い女の人の声。
その声は部屋全体から聞こえてきているようでどこか不気味だ。
「そう怖がりなさんな。取って食いやしないよ」
声は楽しげにそう言った。
いや、怖いから。普通に。
「で、こんな怪しいところに何の用だい?」
「あ、えっと、お使いです」
「ほう、ああ。ヒエンかい。見覚えがあると思ったのは制服だからだねぇ」
この状況、どうしたらいいんだろう?
正直何も出来ないっていうか何したらいいの?
ここでお使いの内容言えばいいの?
「さてさて。とりあえず、奥へおいで」
声がそう言うと、何も無いと思っていた壁に切れ目が入り、ドアノブが付き、扉になった。
……えー……なにこれ……
「……チュン、チュンチュン」
「ふぇ……そうなの?」
「チュン」
モエギは嫌な気配はしないって行ってるし、進まないとお使い終わらないし……仕方ないか。
「……お邪魔しまーす……」
この扉は簡単に開いた。扉の奥には先程より広い部屋があり、ろうそくの灯に照らされていた。
……怖い。
「そう怖がらないでお座りな」
奥から声が聞こえてくる。
今度はちゃんと、人が発している感じがした。
そろそろと進むと、人影が見えた。
イスに座っているようだ。
「えーっと……」
「ヒエンのお使いだろう?何を頼まれたんだい?」
イスに座りながらどうしたらいいのか考えていると、そう尋ねられた。
えーっと……メモ……暗くて見えない……
「貸してごらん」
「は、はい」
メモを差し出すと、その人は黒い手袋を着けた手で受け取った。
……顔もフードで隠れてて見えないな。
でも、フードと髪の隙間からチラッと耳が見えた。
「……エルフ?」
「ああ、私はエルフだよ」
マジかよ。
まさかこんなところで会いたい種族リストが1つ達成されるとは……
「さて……バーベナとキブシか」
なるほど。エルフさんだからこの暗さでも大丈夫なんだな。
「はい、これがお使いの品だよ」
「へ?あ、ありがとうございます」
え?今どっから出した?というか全く動いてないよね?なんで袋詰めされてるの?
……って、料金払わなきゃ。
「えっと……いくらですか?」
「300ヤルよ」
「……あ、ピッタリ」
さすがヒエンさん。
「はい、頂きました。……もし個人的に必要な物が出てきたらおいで。貴女になら売ろう」
「ふぇ?ありがとうございます?」
「それに……その体質は大変だろう?なにかあれば相談に乗るよ」
「あ、ありがとうございます」
「ふふ。私は怪しいけど危険ではないからね」
うん。怪しいのは自覚してたのか。
まあ、なにかあれば逃げ込む可能性も……あるにはあるな。
「それじゃあ、そろそろ行きますね」
「ええ。引き留めてごめんね」
袋をカゴに入れて席を立つ。
来た道を戻りドアを開ける。
振り返るとそこは壁だった。
……怖い。
「……………………チュン」
「そうだね」
ずっと大人しいと思っていたら、モエギがガチで怯えていた。
早く帰ろう。
……あ、ギルド行かないと行けないんだった。




