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54,Q大丈夫そうですか?A...駄目かもしれません。

 カウンターの内側に座り、世界統一薬師試験下級用テキストをパラパラとめくる。

 うーん……ワケワカラン。

 誰だよ。リリア・ファールア・ロットって。

 え?世界統一薬師試験作った人?

 知らんがな。

 というかこの人、何を思って階級あんなに多くしたんだろう……嫌がらせか何かか?


「主、眉間に皺が寄ってるよ」

「ゔー……あ、うん」


 コガネちゃんが顔を覗き込んできた。

 言われてから自分がどれだけ険しい顔をしていたかに気付く。

 こりゃ駄目だ。

 店番してる時にこの顔は駄目だ。

 とりあえず眉間を揉みほぐしておく。


「そんなに難しいの?」

「うん。リリア・ファールア・ロットさんへの文句が頭を埋めつしそうだよ」

「……誰?」

「だよね。そうなるよね」


 コガネちゃんも知らないという事はそんなに有名な人じゃないんだろうな。

 ただ単に白キツネが薬師試験に関わりがないからかも知れないが。

 というか、なんで試験作った人の名前は下級用に載ってるんだ?初級用でも良くね?

 わざわざ下級用に載せるから誰だ?って言われるんじゃないかな?

 初級だけ取ってやめる人もいるだろ、普通に。


「で、主。その人誰?」

「薬師試験作った人だって」

「……なぜ初級に載せないの?」

「思うよね〜だよね〜」


 あれ?私、リリア・ファールア・ロットって名前、前にも見た事ある気がする。

 ……うーん……あっ!あれだ。薬師の初級受けた時、待ち時間に読んでた本の主人公。

 あの本、世界で最初の薬師ってタイトルだったよな?

 そうか。そりゃそうか。

 リリアさんが試験作ったっていうなら、最初の薬師が作った本人なのも当たり前……か?


「コガネちゃん、ちょっと手伝ってくれないかしら」

「うん、分かった。主、ちょっと行ってくる」

「はーい。いってらっしゃい」


 コガネちゃんがヒエンさんに呼ばれて作業部屋に行ってしまった。

 まあ、店番くらいは一人で出来ますがね。

 そのくらいの能力はありますよ。

 そもそもお客さんそんなに来ないし。

 ……でも何してるのか気になるな……

 むう……気になる……




 コガネちゃんが作業部屋に行ってから一時間半ほどが経過した。

 その間お客さんは来ていない。

 相変わらずの暇っぷりだ。

 ちなみに私は下級用テキストを二ページしか進んでいない。

 相変わらずの遅さだ。

 ……それにしても……


「気になるな……」


 何してるのかなぁ〜……

 そんな事を考えながらぼんやりしていると、モエギが帰ってきた。


「おかえり。モエギ」

「チュン」

「うん、どうした?」

「チュン、チュッチュ」

「あー……いいけど、大丈夫なの?」

「チュン」

「そっか、気を付けね」


 モエギが飛び去っていった。

 サクラが、今度はギルドに行きたいと言い始めたらしい。

 で、許可を取りに来たのはモエギ。

 サクラはエキナセア上空を飛び回っているそうだ。


「……暇だ……」


 読書をする気力は尽きてしまったので一旦休憩。

 でもそうなるとやる事がない。

 暇だ……とひたすら呟くくらいしかやることがない。


「主、店主が呼んでる」

「おっ。コガネちゃんおかえり〜……今度は私か」

「うん。行ってらっしゃい」


 なんだろな〜

 考えながらイスを降りて作業部屋へ向かう。

 今考えられるのは薬師試験の事だが、実技の練習は明日からって言ってたし、違う気がするなぁ……

 まあ、考えていたら限りがないのでさっさとヒエンさんに正解を聞くとしよう。


「ヒエンさーん?お呼びですか?」

「ええ。アオイちゃん、今から明日の実技練習開始に向けて事前知識を付けて貰うわよ」

「事前知識?」

「ええ。下級の実技は毒消しの製作だから、まずは毒の知識を付けて貰うわ」

「毒消しって、あの水色っぽいやつだよね?というか毒の知識ってなんぞ?」

「ええ。あの水色っぽいのが毒消しよ。毒の知識は……まあ、やってれば分かるわ」


 雑!!説明雑!!もはや説明してないよね!!

 なに!?やってれば分かるって!!


「アオイちゃん、こっちに来て」

「はーい」


 手招きされて近づくと、ヒエンさんは手にドロっとした紫色の液体が入った小瓶を持っていた。

 ……見るからに怪しい。

 紫色って……おいおい……


「アオイちゃん、これ何に見える?」

「えっ……毒に見えるけど……」

「ふふふ……これは呪い消し。毒消しの類なのよ」

「……は?」

「驚いた?」

「……ふぇ?」

「驚いたみたいね」

「……え?それ、毒消しなの?」

「消すのは呪いだけどね」


 ……まじかよ。見た感じ完全に毒じゃん。

 え?これなんて引っ掛け問題?


「ちなみに、こっちが毒よ」


 ヒエンさんはポケットから有色透明な紫色の綺麗な液体が入った小瓶を取り出した。

 ……まって。


「えっ、は?めっちゃ綺麗なんだけど!?」

「不思議でしょう?毒っぽいのが毒消しで、綺麗なのが毒なのよ」

「何かもう意味が分からないよ……」

「まあ、こんなに毒々しい見た目の毒消し系は呪い消しだけだから安心して頂戴」

「うん。何が安心なのか分かんないけど安心したよ」


 ところで、毒消し系ってなんだろう?

 ポーション系と同じ感じなのかな?

 あ、ちなみにポーション系とは、ポーション全般を示す言葉で、ここに含まれる薬は、

 ・ポーション

 ・ハイポーション

 ・メガポーション

 ・ウルトラポーション

 の四種類だ。


「ヒエンさーん。毒消し系って何種類?」

「四種類よ。ちなみに、正式には毒消し・魔消し系って言うの。で、種類は毒消し、魔力消し、呪い消し、邪払い」

「邪払い……」

「なんか禍々しいけど、単に何でも治せる薬だから怖がらなくていいわ」

「万能薬的な?」

「そんなにすごいものでも無いけどね」

「そうなのか……」

「この世に万能薬なんて存在しないのよ」


 それもそうか。

 ……というか、〜系でまとめられる物って、全部四種類なのかな?


「ちなみに毒系も四種類。魔力回復系は全部で十種類あるわ」

「魔力回復系多くない!?」

「魔力回復系は、その系統のなかでも二種類に別れるのよ。単に魔力を回復させるのは三種類。属性ごとに回復させるのが七種類。合計十種類」

「うおお……頭痛くなりそう……」

「魔力回復系は上級にならないと出てこないから今は忘れていいわよ」

「は、はーい」


 上級には出てくるのか……

 というか毒は四種類なのか。


「ヒエンさーん。毒って何があるの?」

「毒は麻痺毒、睡毒、出血毒、即死毒」

「そ、即死毒……」

「素材集めの面倒くささが有名な毒ね」

「……面倒なの?」

「ものすごく。もう作りたくないわ」

「作ったことあるの!?」

「1回だけね。私、とりあえずなんでも1回は作ってみる事にしてるのよ」

「そういう事か……ちなみに作った即死毒はどうしたの?」

「雑草にかけてみたわ」

「……どうなりましたか?」

「雑草が根絶やしになったわよ」

「え、便利」

「ただし土も死んだわ。何植えても育たなくなっちゃった」

「うわぁ」


 便利なような便利じゃないような……

 でも雑草に効くのか。そうか。

 まあ、確かに植物も生物ではあるし、効いて当然……なのかな?


「で、アオイちゃん。アオイちゃんにはこれから、麻痺毒を腕にかけてもらうわ」

「……はい?」

「これ、麻痺毒ね」

「あの、ヒエンさん?」

「10秒くらいで効いてくると思うから、それから5秒くらいしたら毒消しをかけて」

「ひ、ヒエンさーん?」

「ちなみに毒消しは私が作ったわ」

「ねえ、ヒエンさん?おーい」

「さあ、始めましょ」


 ……え?なにが?ヒエンさん?

 私の手には、ヒエンさんから渡された黄色い液体が入った小瓶(これが麻痺毒らしい)と、水色の液体が入った小瓶(こっちは毒消し)が握られている。

 ……マジで腕にかけんの?

 ヒエンさんはものすごくいい笑顔で私を見ている。

 マジでやらされるらしい。


 ……ええい!!こうなりゃ自棄だ!

 思い切って瓶の蓋を開け、中の黄色い液体を左腕にかける。

 10秒くらいで効いてくるって言ってたので、それまでに毒消しの蓋を開けておく。

 ……あと3秒くらいかな?


 かけてから10秒が経過。

 腕がビリビリする。

 動かそうとしても動かない。

 なんか、ジワジワと酷くなってきている。

 もう毒消しかけていいかな?

 ヒエンさんの方を見ると、笑顔で頷いてくれた。

 かけていいらしい。

 毒消しをかけると、一瞬で腕の痺れが取れた。


「おお……」

「すごいでしょう?毒消しの効果」

「うん。でもヒエンさん、それを分からせる為にこんなことを?」

「まあ、それもあるわね。ちゃんと作れた毒消しはそんな風に一瞬で毒の効果を消せるけど、失敗作は毒の効果が消えるまでに時間がかかったり、いくら待っても消えなかったりするの」

「そうなの?」

「ええ。……そんなのを冒険者に売るのは危険でしょう?」

「そう、だね。一瞬で治さないと危険だもんね」

「だからアオイちゃん。明日から作る毒消しは、自分で効果を確かめてみてちょうだい」

「……どゆこと?」

「今やったのと同じ方法。麻痺毒を腕にかけて、毒が効果を発揮し始めたら自分で作った毒消しをかける。ちゃんと効いたらそれでいいし、効果が弱かったらどんな風に弱かったかを紙に書いておいて」


 つまり、ちゃんと治したかったらちゃんとした物を作れ、と。

 どんな風に弱かったをメモするのは、多分、ヒエンさんが毒消しの練習作も売る気だからだろう。

 この毒消しはやっすいけど効果がこんな風に弱いですよ〜っていう紙を置いて売る気なんだろう。

 売らない方がいい気もするが。


「あ、そうだ。アオイちゃん、そこの箱の中に入ってる毒消しは使っていいから、自作のが効かなかったら使って」

「はーい」

「私はこっちで作業してるから、アオイちゃんは店番に戻っていいわよ」

「はーい……ヒエンさん」

「なあに?」

「最初に、毒の知識をつけるって言ってなかった?」

「麻痺毒の効果は身に染みて分かったでしょう?」

「うん……そうだね……身に染みたよ……物理的な意味で」

「ふふふ。ほら、店番」

「はーい」


 ヒエンさんは笑顔で手を振りながら言う。

 いつも通り、会話の主導権を一瞬たりとも渡してくれなかった。

 なので大人しく店番に戻る。


「コガネちゃーん」

「あ、主。おかえり」

「疲れた〜」

「何してたの?」

「腕に麻痺毒かけて毒消しかけて脅されてた」

「……何してたの?」


 誤解を招く言い方をしてしまったので(わざとだが)改めてちゃんと説明する。

 このままだとコガネちゃんがヒエンさんを攻撃しかねない。

 ……でもヒエンさんなら余裕の表情でかわしそうだな。

 まあ、それは置いといて。


「カクカクシカジカなのですよ」

「ああ、そういう事か……」

「まさか自ら腕に麻痺毒かける事になるとは思わなかったよ……」

「……主、頑張って」

「うん……頑張るよ……」


 明日から腕がビリビリする日々を送る事になるのか……

 なんか嫌だな……早くちゃんとした毒消し作れるようになろう。

 そう心に誓って、とりあえず今は店番に集中する事にした。

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