表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
58/148

55,Q効きますか?A…駄目です…腕が…

 薬師試験下級、勉強2日目だ。

 今日から毒消し製作練習に取り掛かる。

 ……何が怖いって、ちゃんと作れないと腕が死ぬのだ。

 リアルに。

 あのビリビリ感はヤバイ。

 痺れてるのは分かるのに触っても感覚無いとか怖すぎる。

 人間、痛覚失ったら死ぬからね?

 痛いって感覚はここに異常がありますよ〜ってサインだからね?

 麻痺毒は痛覚も鈍くするらしいからマジでヤバイ。


「アオイちゃん。そんなに小刻みに震えてもダメよ。というかむしろ手元が狂って危なさ増してるけどいいの?」

「しょうがなくない!?震えてるのは私の意志とは無関係だからしょうがなくない!?」

「まあそれは置いといて」

「置いとくの!?」

「まずは作り方を見せるから、ちゃんと見ていてね」


 相変わらず自由だ。この人。

 だがまあ、薬師としてはすごく優秀らしいので、しっかり見させて頂こう。

 私はそう思い、以前貰ったメモ帳を構えた。


「毒消し製作は、薬研を使わないわ。代わりにナイフを使うの。

 まずは乾燥させた毒消し草をざく切りにするわ。

 別に大きさはどうでもいいし、切る時にサイズを揃える必要もないわよ。

 まあ、こんなもんね。

 で、この雑に切った毒消し草は予め水を張っておいた鍋に入れるわ。

 この後は、いつも通りひたすら鍋を混ぜ続けて……」


 いいながらものすごい手際の良さで毒消し草(薬草より緑色の濃い植物だった)を切り(雑とかいいながら大きさ揃ってる)鍋に入れて(この作業は本当に雑だった。投げたよ。この人)ポーションを作るのと同じ感じで鍋をかき混ぜている。

 今のうちに質問しておこう。


「ヒエンさん、毒消し草の大きさ、どうでもいいって言ってたけど、大き過ぎるのはダメなの?」

「そうね。だいたい3センチ幅以上になると失敗する事が多いわね」

「……それ、先に言って欲しかったな」

「質問しないならそれまでだもの」


 あっぶねぇぇぇ!!

 良かったぁぁ!!質問してて良かったぁぁぁ!!

 ヒエンさん、こういうところあるよね!

 向上心ない奴は切り捨てるぜ、的な感じのところあるよね!!

 良かった!!ビビリで!!

 不確定要素をはっきりさせないと不安になる性格してて良かったぁぁ!!


「アオイちゃん、絶叫してないで鍋の中を見てご覧なさいな」

「なんで絶叫してるって分かったの?」

「気にしない気にしない」

「気になる……って、鍋の中、めっちゃ緑なんだけど」

「毒消し草の成分が出てきたのよ」

「ほぇぇ……」


 すごい綺麗。

 有色透明な緑色。

 ……でも毒消しって水色だったよな?

 ここから色が変わるのかな?


「こんな風に色が出てきたら、ここにポーションの実を入れるわ。今回は2つかしらね」

「ポーションの実なの?」

「ええ。メガポーションの実かと思った?」

「うん。あれは青紫だし」

「まあ、見てれば分かるわよ」

「はーい」


 ヒエンさんはポーションの実を2つ鍋に投げ入れ、再び中身をかき混ぜ始める。

 さて、質問タイムだ。


「ヒエンさん、これ、どのくらいの量でポーションの実何個くらい?」


 我ながら質問が下手だな。

 私が質問受ける側だったら「は?」ってなるわ。

 だが質問を受けるのはヒエンさんなのだ。


「そうねぇ……ポーション作る時よりすこし少ないくらいかしら。ポーションの時の水の量を1とすると、毒消しの時は0.8くらい」

「了解した」


 ほらね。伝わった。

 0.8ね。……これ、割と感覚頼りだな。

 大丈夫かな?なにせ腕がかかってるのだ。

 ちゃんとやらないと……


「さてと。そろそろポーションの実が煮崩れてきたからこれを入れるわ」

「……これは……ブルーベリー?」

「みたいに見えるけど、ヌマスグリっていうの。これを入れるから、毒消しは水色なのよ」

「そうなんだ……なんか、入れる量多くない?」

「1つ1つの実が小さいから量が必要なのよ」

「ちなみにどのくらいよ量入れるの?」

「だいたい、ポーションの実の数×10」

「……結構量いるんだね……」

「そうでもないわ。今回は20個だから……こんくらいかしらね」

「雑!?」

「ふふふ。数えてご覧なさいな」


 ヒエンさんは片手でテキトーに掴んだブルーベリー……じゃなくてヌマスグリを私の手の上に乗せる。

 ……いーち、にーい、さーん、よーん…………

 うおっ全部で22個だ……


「ヒエンさん……これどうやったの?」

「勘……というか感覚ね。何個だった?」

「22個」

「それなら誤差の範囲内ね。アオイちゃん、そのヌマスグリ鍋の中に入れてちょうだい」

「はーい」


 22個は誤差の範囲内。なら、どこまでいくとアウトなんだ?


「ヒエンさん、誤差の範囲内ってどこまで?」

「入れる数÷10×5、かしら」

「つまり、今回は前後10個までが範囲内、と」

「そういう事になるわね」


 結構ざっくりしてた。

 なんというか、雑だな……

 薬作るのって、正確さが命なのかと思ってたけどそうでもないんだな……

 あれか?ポーションとか、毒消しとか、地球にはない物だからか?

 地球の薬って、新薬作るのに数年かかるらしいし……うん。多分異世界だからこんなに雑なんだな。


「さて。アオイちゃん、鍋の中を見て」

「うん……ってすごいね!色変わった!」

「ちゃんと毒消しの色合いになったでしょ?」

「うん!なってる!」

「ヌマスグリをいれてから約十五分でこの色が出るわ。この色が出てきたら、ポーションと同じ感じで濾し器にかけましょうか」

「はーい」


 とりあえずメモを取る。

 約十五分……この、約っていうのが微妙に心配になる要素なんだよね……


「アオイちゃん、そこの箱の中に毒消し用のビンが入ってるから」

「これ?」

「そう。それ」


 毒消し用のビンは、ポーション用のものよりも上に短く、横に長い。

 なんというか、縦長の長方形。

 ポーションのビンは角がほとんどないのだが、このビンはカクカクしてる。


「ヒエンさん、これ、ポーションのときと同じコルクで蓋するの?」

「ええ。うちはコルクの形全部同じだから」

「そうなんだ……」

「というかアオイちゃん、毒消し自体は見るの初めてじゃないでしょ?」

「まあ、買っていくお客さんもいるからね〜。でもコルクの形は見てないよ、普通」

「まあ、それもそうね」


 いいながらヒエンさんは毒消しをビンに注ぎ込んでいる。

 蓋をする部分は細くなっているので、入れるのが地味に大変そうだ。

 だがヒエンさんは慣れているのか、いとも簡単に一滴もこぼさず入れている。

 最近気付いた事なのだが、ヒエンさんは手先が器用なのだ。

 たまにパンで凄くリアルな動物作ってたりもする。

 昨日の午後とか、サクラとモエギだと思われる鳥型のパンを焼いてて、可愛すぎて食べにくかったのだ。

 ヒエンさん、薬屋やめてパン屋開いても生計立てられると思う。

 まあ、それは一旦置いといて、だ。


「これで完成?」

「ええ。じゃあアオイちゃん、やってみましょうか」

「うう……」


 1回目の、腕の生き残りをかけた毒消し作りが始まった。


 えーっと、まずは乾燥させた毒消し草を3センチ幅以内でざく切りにして……こんなもんか。太くて2センチってところだな。

 で、これを鍋の中に入れる。

 そして混ぜる。ひたすら混ぜる。

 水の量はヒエンさんがさっき作った時と同じ量にしてあるので、分量は同じでいい、はずだ。

 そんなことを考えながら鍋をグルグルかき混ぜること約20分。

 鍋の中身が緑色になった。

 ここに、ポーションの実を2つ。

 そして混ぜる。

 混ぜながらヌマスグリの数を数えておく。

 私は感覚で量を合わせるような能力を持ち合わせていないので、普通に数える。

 いーち、にーい、さーん、よーん、ごーお……

 ……よし、20個。なんか不安だから1個追加して21個。

 ちなみに3回数えました。

 数は完璧、な、はずです。はい。

 そんなことをしている間にポーションの実が煮崩れてきた。

 ヌマスグリ投入!!

 で、混ぜる。また混ぜる。

 鍋の中をガン見しながら混ぜる。

 だって、色が変わる瞬間とか気になるじゃん?


「おおっ!」


 色が変わった。

 水色になった。

 よし、ここで濾し器にかける!

 ポーション作りで腕の筋力が鍛えられていた私は、この作業もどうにかこなす。

 後は濾されて落ちてくるのを待つだけだ。



 私の手には黄色の液体が入った小瓶が握られている。

 さっき出来上がった毒消しと、ヒエンさんが作った毒消しは目の前に並べられている。ちなみに蓋は開けてある。

 ……いざ!!

 気合いをいれて腕に麻痺毒をかける。

 してきたよー!ビリビリしてきてるよー!

 さあここで自作の毒消しを……!

 かけたんだけど効果が薄いー!

 すぐには麻痺毒の効果が消えない。

 なんか、ジワジワ効いてるんだけど、それを上回るスピードで毒が回ってる。

 腕が!腕がぁぁぁ!!


「アオイちゃん、アオイちゃん落ち着いて」

「ヒエンさん!腕が!腕が!」

「はい毒消しかけて」

「そうだった!ヒエンさん作の毒消しがあったんだった!」


 ヒエンさんの作った毒消しを腕にかける。

 なんということでしょう!一瞬で麻痺毒の効果が消えたではありませんか!!


「……ヒエンさん、見事に失敗したよ」

「そうね。でも初めて作ってあれならまだいい方よ」

「そうなの?」

「酷い人はむしろ毒の効果を増幅させる危険物を作り上げたりするのよ」

「なにそれむしろすごい……」

「アオイちゃんの作った毒消し、効果が薄かったんでしょう?」

「……なんで分かるの?」

「色が薄いのよ」


 ……言われて見れば。

 ヒエンさん作の毒消しより、私作の毒消しの色は薄いのだ。

 水っぽいのかな?

 なんでだろ……


「今回、失敗した原因は?」

「……分からないでござります」

「じゃあ覚えておいてね。失敗の原因、それはズバリ混ぜ方よ」

「混ぜ方?」

「ええ。アオイちゃん、ポーションの実を入れてからヌマスグリを数え始めて、そっちに意識が集中して鍋のかき混ぜ方が小さかったの」

「……つまり、ちゃんと混ぜれてなかったってこと?」

「そういう事よ」

「……毒消し製作、めんどくさいねぇ……」

「そうね〜ポーション作りに比べたら凄くめんどくさいわねぇ」


 うーん……大変だ。

 とりあえず、メモしておこう。

 混ぜ方に注意、大きく混ぜること……っと。


「アオイちゃん、残りの毒消し、このビンの中に入れておいてくれる?」

「はーい……なんかでっかいビンだけど、この失敗作どうするの?」

「それはそれで、使い道があるのよ」

「へぇー……すごい」


 売るわけではないらしい。

 ちょっと安心。

 さすがにこの失敗作を売るわけにはいかないもんな。

 危険すぎる。

 そんなことを考えながらビンに毒消し(失敗作)を入れていく。

 移し終わったところでヒエンさんに肩を叩かれた。


「お疲れ様。午後はいつも通り店番よろしく」

「はーい」


 気がつけば、もう11時半だ。

 お腹すいた。

 昼食はコガネちゃんと入れ替わりで食べるので、さっさと食べてしまうとしよう。

 そんでもってコガネちゃんと店番代わろう。

 まだ若干痺れている左腕をグルグル回しながら庭に続く扉を開ける。

 今日のお昼ご飯はなんだろな〜

〜どうでもいい豆知識〜


ヌマスグリはブルーベリーの別名です。

つまり、「みたい」とかじゃなくブルーベリーです。

でも地球のそれとは別物です。多分。

大きさは、ブルーベリーよりすこし大きいくらいのイメージです。


⚠︎地球のブルーベリーは目にはいいけど毒消し効果はありません。(当たり前)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ