53,Q働きますか?A当然です。
ガルダに帰ってきて2日目。
今日からエキナセアの店番に復活だ。
ヒエンさんはあと2日くらい休んでいてもいい、と言ってくれたが、自己的に働きたいので働かせていただく。
「主、おはよう」
「おはよーコガネちゃん」
働きたいというのも本心だが、私が働いていればコガネちゃんも働こうとする、つまり久々に制服姿のコガネちゃんが見れる。という邪心もあったりする。
やっぱりコガネちゃん可愛い。
「さて、じゃあ開店しようか」
「うん」
9時になった事を確認して開店準備に取り掛かる。
いつも通り鍵を開け、いつも通り看板を出し、いつも通り札をopenにする。
その後はいつも通りカウンターの内側でコガネちゃんとお喋りだ。
「そういえば、主、それ重くないの?」
「全然重くないよ〜」
「そうなんだ……」
今日の話題はリーンさん作の腕輪だ。
これ、すごく軽い。
何で出来ているのかは分からないが、軽いし硬いし、なんかすごいことは分かる。
むしろそれしか分からない。
「魔法石も見事だね」
「魔法石って、この石だっけ?」
「うん。すごくいい質の魔法が入ってる」
「うーん……すごいことは分かった」
言いながら、深い青色の有色透明な石を眺める。
……石っていうの違和感があるな。
「ねえコガネちゃん。これって宝石かなにか?」
「宝石、というわけではないかな。その魔法石は安い宝石よりもずっと価値があると思うけど」
「宝石じゃないんだ?」
「うん。ベースになる魔石に魔法を閉じ込めるのが魔法石の仕組み。宝石は最初から完成品でしょ?」
「なるほど。出来方の違いか」
そうじゃないかも知れないが、まあ、そんな認識でいいだろう。詳しい知識は必要じゃないし。
というか、なんでこの話題になったんだっけ?
「あ、主。モエギが戻ってきたよ」
「おお、本当だ」
コガネちゃんに肩を叩かれて開けておいた窓に目を向ける。
ちょうど、萌木色の小さな鳥が窓枠に着地していた。
その後、パタパタと飛んでカウンターの上まで来る。
「おかえりモエギ」
「チュン。チュッチューチュンチュッチュン?(ただいまです。サクラが北区まで行きたいって言ってるんですが、大丈夫ですか?)」
「うん。いいよ。ただし2羽が一緒に行動すること」
「チュン」
モエギはペコリと頭を下げて再び外へ飛び出した。
……珍しく長文を喋って(鳴いて?)たな。
サクラは内容をまとめないまま話すので一つの物事を伝えるのにえらく長い時間がかかるのだが、モエギは短くまとめてから話すのでかなり分かりやすい。
なので、モエギが長文話すのはなんか珍しいのだ。
まあ、今回も必要事項だけまとめられていたが。
これがサクラだったら2倍の文章が必要になる。
「元気だね」
「そうだね〜」
「でもまあ、これから暮らす国を見てみたいっていう気持ちは分かるかな」
「あれ?コガネちゃんも行きたかった?」
「いや、私はそこまで動き回らないし」
サクラとモエギは朝からガルダの中を飛び回っているのだ。
サクラが、探検してくる!!と1羽だけで飛び出しそうだったので、モエギと一緒に行ってこい!!と送り出したのだ。
「うーん……でも、行きたかったら行ってもいいと思うよ?ヒエンさんは、きっと軽〜いノリで許してくれるよ?」
「でも、その間主が1人になる」
「なるほど。そこか」
つまりは私1人では心配だと。
うん。言われて気が付いた。私も不安だわ。
「やっぱり、行く時は2人で行こうか」
「うん」
そんな会話をしていると、チリリン♪と音をたてて扉が開いた。
おや。お客さんだ。
さてさて、店番復活後第一号のお客さんはどなたでしょうか?
「いらっしゃいませ〜」
「ませ〜」
コガネちゃんがどこかの森のデパートの二階にいるたぬきのように最後だけ繰り返した。
まあ、そんな事は置いておいて、今はお客さんだ。
「こんにちはー」
言いながら扉を押して入ってきたのは、常連客である二人組の冒険者さんだ。
前に勇者のことを教えてくれた方。
「あ、復活したんだ。良かった良かった」
「?」
「いや、ハーブさんだけだと店の営業が若干不定期だったからさ。君たちがいると安心なんだ」
「あ、なるほど……って、ヒエンさんやっぱり営業サボってたんですか」
「いや、ポーションの追加作ってる時とか買出し行ってる時とか以外は普通に店番してたよ」
完全にサボってたのかと思ったが、ちゃんと営業してたらしい。
ちなみに、私たちが国外にお出かけしていたのはヒエンさんから聞いていたらしい。
そして、早く帰ってこないかな〜。と思っていたらしい。
「それはそうと、本日は何をお求めですか?」
「ポーション4本とハイポーション2本お願い」
「はい。えーっと、100ヤルになります」
「はい。あ、細かくてごめんね〜」
「いえいえ、つり銭が出来て助かります」
エキナセアはよくつり銭切れを起こすのだ。
そのたびにヒエンさんが両替に行っているのだが、どこに行っているのかは知らない。
ギルドで両替とか出来るのかな?
「そういえば、下級の薬師試験が近いけど、君は受けるの?」
「うーん……ヒエンさんに言われたら受けますかね?」
「決まってないのか」
「はい」
「ハーブさん結構気まぐれだけど、試験の2、3ヵ月前になってからいきなり受けろって言ってきたりしない?」
「あ、ありそうです。実際に初級は3ヶ月前に勉強始めましたし」
「それで受かるんだからすごいよね」
まあ、筆記はヒエンさんの山勘が完璧だったからどうにかなっただけなのだが。
のんびり喋っていると、もう一人の冒険者さんが肩を叩いた。あの超イケボの方だ。
「ん?ああ、もう時間か」
「あ、すいません。引き止めちゃって」
「いやいや、話振ったのはこっちだし。それじゃ、また」
「はい。お気を付けて〜」
手を振ってお見送りする。
コガネちゃんも隣で手を振っている。
可愛い。
「主、試験受けないの?」
「え?受けると思ってた?」
「うん。中級くらいまでは一気に取るのかと思ってたかな」
「そうなのか……」
別に取りたくない訳じゃ無いのだが、特別取りたい訳でも無いし、試験の受験料を払うのはヒエンさんだから勝手に決める訳にもいかないし……
聞いてみようかな?
「コガネちゃん、ヒエンさんに聞いたら取っていいって言うと思う?」
「言うと思う。といか取れって言うと思う」
「……やっぱりそうだよね……」
今日の夜にでも聞いてみよう。
持ってて困る事は無いだろうしね。薬師免許。
そんな事を考えていると、再び扉が開いた。
なんだろう。今日はお客さんが多いな。
「こ、こんにちは……」
「あ、クロちゃんとシロちゃん。いらっしゃいませ〜」
「あっ、アオイさん!帰って来たんですね!」
「うん。今日から店番復活だよ」
「よかった〜ハーブさん一人だと午後から店が空いてなかったりしてたから、早く帰って来て欲しかったんです」
「やっぱり2人もそれ考えてたんだね」
「エキナセアの常連客はみんな言ってましたよ」
「そうなんだ……ヒエンさんも店員増やせばいいのに」
いや、増やせないのか?
でも部屋はあと一つ空いていたはずだ。
「うーん……私たちは新しい店員さんが怖いので増えなくてもいいです……」
「……あ!そっか。そういう問題もあるから店員増えないんだね」
「ふぇ?」
「エキナセアって、人じゃない客も多いから……」
「な、なるほど」
私とクロちゃんがお喋りに花を咲かせている間にシロちゃんとコガネちゃんが買い物やり取りを済ませていた。
……見た目真っ白。
2人共、雪原に置いたらどこにいるか分かんなくなりそう。
シロちゃんは髪がクリーム色だからまだどうにか見えそうだけど。
「クロちゃん、クロちゃん、もう行かないといけない時間だよ」
「あ、本当だ。じゃあアオイさん、また」
「うん。気を付けてね〜」
「はいっ!行こう、シロ」
「うん!アオイさん、さよなら〜」
癒し2人が帰っていく。
いやあ、可愛い。
可愛いは正義。
この世に存在するただ一つの共通正義だ。
「ところで主」
「なんだいコガネちゃん」
「店主がこっちに来るよ。試験、受けてもいいか聞いてみたら?」
「うーん……そうだね。聞いてみよう」
というかコガネちゃん、なんでそんなこと分かるの?
あ、魔力波か。
「お疲れ様、アオイちゃん、コガネちゃん」
「ヒエンさーん」
「なあに?アオイちゃん」
「薬師試験の下級を受けてみたいのですが……」
「いいわよ。確か……半年後だったわね」
「あ、いいの?」
「もちろん。私としてもアオイちゃんがポーション系以外も作れるようになってくれればすごく嬉しいわ」
「ああ、なるほど。ところでヒエンさん」
「なあに?アオイちゃん」
「下級って何やるの?」
「内容は初級と同じ感じよ。ただ、筆記の内容が若干めんどくさくなって、実技で作る薬が毒消しになるだけよ」
なるほど。今回も実技8割か。
なら……どうにか……なるか?
前回もなんとかなったし!
「毒消し作りは明日から、今日はとりあえず参考書でも読んでおいて」
「うっ……またあの難しい本ですか……」
「あれが一番ちゃんとしてるのよ。はい。これ」
「いつ取ってきたの?まあ、それは置いといてさ、分厚くね!?」
「仕方ないじゃない?下級だし」
「うう……」
もうあとには引き下がれない。
こうなったら、とりあえず頑張ってみますかね!!




