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異世界に転生しちゃったのでロボット作ってみた  作者: 羽越世雌
第3章:空への憧れと、波乱の試作機編
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第9話:空飛ぶ要塞と、ゲッターばりの合体構想

「いやぁ、ゲッター風ファミリー・パイルダーの分離合体メカニズムの調整も大詰めだが、どうにも我がガレージに漂うこのロマンの気配は隠せんな」


改良型パイルダーのボルト締めとバネの強度テストに没頭していたある日の昼下がり、ツヨシはマグカップのコーヒーをすすりながら、ガレージの作業台にもたれて満足げに頷いていた。

前回の「キング・オーク・ボア撃退事件」以来、アストライア村におけるツヨシの評価は「ただの物好きな変なおっさん」から「村の頼れる守護神(ただし時々爆発する)」へと見事に昇格していた。子供たちは毎日のようにガレージにやってきては、「おっさん、明日のテストフライトでは僕をゲッター1の頭部パーツに乗せてくれ!」と大はしゃぎである。平和なアストライア村の片隅で、完璧なオタク・スローライフが満喫されていた。


――だが、平和というものは、往々にして空の彼方から突然やってくる黒い影によって破られるものである。


「大変だーーっ! ど、大変だツヨシのおじさん!」

遠くから、村の青年が息を切らせて血相を変えて走ってきた。

「どうした、そんなに慌てて。まさかまたオーク・ボアの群れか? 今度は新型パイルダーの座席からポップコーンでも撒き散らして一網打尽にしてや……」

「ちがうっ! 空だ! 空を見てくれ!」


青年が指差した村の北の空。

そこには、さんさんと輝く太陽の光を完全に遮るほど巨大で禍々しい、不気味に黒光りする「要塞」のような影が、ゴゴゴゴゴと重低音の地響きを立てながらゆっくりとこちらに向かって浮遊してきていた。


「な、なんだあれは……?」

村人たちがパニックになって広場へと飛び出してくる。

それは、周辺一帯を牛耳る闇の魔王軍が誇る『移動式・小型空中要塞』だった。王国騎士団すら恐れるその要塞は、近づくものすべてを容赦なく魔導砲で焼き払うという恐怖の代物である。その凶悪な要塞が、よりによってこののどかなアストライア村の上空にさしかかろうとしていたのだ。


「フハハハハ! 愚かなる人間の村よ、我が魔王軍の偉大なる影に震えおののくがいい!」

要塞の甲板から、魔王軍の幹部らしきトカゲ顔の魔導士がメガホン(の代わりの拡声魔道具)を使って高らかに叫ぶ。


村中が絶望のどん底に突き落とされた。誰もが「もうおしまいだ、村は焼き払われる」と頭を抱え、泣き叫ぶ子供たちを抱きしめたその時――。


「……空飛ぶ要塞、だと?」


ツヨシの目が、カッと鋭く光った。

彼の脳裏に、かつて日曜日のテレビ画面にかじりついて観ていた数々の名作アニメのワンシーンが鮮やかに蘇る。空を飛ぶ敵の巨大母艦。そして、それに立ち向かう熱いヒーローたち。


「ふざけやがって……! 空を飛んでいれば何しても許されると思うなよ! あんなデカブツ、昭和のロボットアニメじゃ『中盤のいい感じのやられ役』の定番だぞ!」


ツヨシはコーヒーカップを放り投げると、一目散にガレージへと駆け込んだ。

「おっさん、どこに行くんだよ! あんなの相手に素手で勝てるわけ……!」

「素手じゃねえよ! ちょうど今朝、子供たちの無茶振りに応えて『ゲッター風ファミリー・パイルダー』を組み上げたところだ。これを使わない手はないぜ!」


ガレージのシャッターが勢いよく開き、中から『マジンガー・ツヨシ』が轟音とともに飛び出した。ツヨシはその頭上に、昨日今日で無理やり改造したばかりの「ゲッター風ファミリー・パイルダー」を装着する。もちろん、中にはテストフライトを楽しみにしていた子供たちがぎゅうぎゅう詰めで乗っている。

「おっさん! なんか外が騒がしいけど、今からこれ飛ぶのか!?」

「そうだ! いいかお前たち、今から我が機体は『ゲッターロボ』になる! 合体と分離のロマンを肌で味わうがいい!」


ツヨシはヘルメットのシールドをガチャンと下ろし、コントロールパネルの奥の奥にある、これまで一度も使ったことのない「謎の予備レバー」を力任せに引いた。


「よし……! 今こそ、あのトカゲ野郎の頭上に突撃だ。オープン・ゲットからの、シャイン……じゃなくて、ツヨシ・キックだぁっ!」


――ゴウンッ! バキバキバキッ! ガシャコーンッ!!


マジンガー・ツヨシの背中と頭部から、先ほどまで調整していたばかりの「ゲッター風ファミリー・パイルダー」のパーツが、月光力エネルギーに導かれるようにしてパカーッと三機に分裂し、そしてなぜか勢い余って周囲の農作業用耕運機やオーク・ボアの骨格と無理やりガチャンコとくっついた。

見た目はどう見ても「バランスの崩れたキメラ状態の鉄の塊」なのだが、ツヨシの頭の中では完全に『三つの心が一つになれば、世界を救う嵐を呼ぶ』ような壮大なテーマ曲が響き渡っている。


「名付けて……『ゲッター風・無理やり合体、ツヨシ・ロボ第三形態(ファミリー乗車中)』!」


「名前がガバガバすぎるうえに、子供を乗せたまま合体するなーーッ!!」

遠くの切り株で見ていた村の少年(※パイルダーに乗り損ねた控えの子供)が、あまりの無茶苦茶さに思わず盛大にツッコミを入れた。


だが、ツヨシの勢いはもはや誰にも止められない。

「いっけえええええ――っ! 空飛ぶ要塞め、俺の合体ロマンの錆にしてやるぜ!」


キメラ状態の試作機が、月光力の噴射炎をブォンとすさまじい勢いで吹き上げ、地面を蹴って真上の空へと飛び立った。コクピットの中では、子供たちが「うわあああ重力がすごい!」「目が回るぅ!」と絶叫しているが、ツヨシは「これが男のロマンだ耐えろ!」と一蹴する。


要塞の上で威張っていたトカゲ顔の魔導士は、下から突然飛んできた「なんか色んなものが無理やりくっつき、子供の悲鳴を乗せた謎の鉄の塊」を見て、あまりのシュールさに腰を抜かした。

「な、なんだあれは……!? 魔導砲を撃て! 一斉射撃で撃ち落とせ!」


バババババッ! と要塞からの魔導砲が放たれるが、ツヨシは「変形! オープン・ゲット!」と叫びながら(※特に変形はしていないがパーツが勝手にガタガタ揺れた)、華麗な(?)ジグザグ飛行でこれを奇跡的にすべて回避していく。


「くらえ! これが俺の、全人生をかけた必殺の――『ゲッター……じゃなくて、ツヨシ・ナックル・パンチ!』」


ガチャンッ! と勢いよく飛び出した鉄拳が、要塞のメインエンジン部分に奇跡的な角度でモロに直撃した。

――ドガアアアァァァンッ!!


凄まじい爆発音とともに、空中要塞のバランスが派手に崩れ、黒煙を噴き上げながら「うわぁぁぁ!」という悲鳴を上げてそのまま隣国の荒野へとすごすごと墜落していく。魔王軍の野望は、昭和ロボットアニメへのリスペクトに満ちた(そしてかなり迷惑な)一撃によって、あえなく粉砕されたのであった。


静まり返ったアストライア村の上空。

キメラ状態の試作機からパイルダーをスライドアウトさせ、中から目をグルグルと回しながらフラフラと降りてくる子供たちを横目に、ツヨシは額の汗を拭いながら深々と息をついた。


「ふう……危なかった。やっぱり、空戦には合体機構が不可欠だな。次はもっとこう、変形パターンを五段階くらいに増やして……」

「もう二度とおっさんのロボットには乗らないぞーーっ!!」

子供たちの盛大な泣き声が、のどかな村の空に響き渡るのであった。

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