表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
44/146

第5話 影のパーティー 3

「綺亜」


 と、朝川彼方(あさかわかなた)は、そう話しかけた。


 しかし、話しかけられた当人である綺亜は、ありていに表現してしまえば、上の空だった。


 頬杖をついたまま、窓のほうへぼんやりと視線を泳がせ、まるで教室のざわめきの外にいるように見えた。


 ブロンドの髪の一房が頬にかかっても、払いもせず、その細い肩が、かすかに上下しているだけだった。


 朝川彼方は、桶野川市にある葉坂学園の生徒である。


 桶野川市は、中規模の都市である。


 人口十五万人。


 新興住宅街を擁する市街地と、そのまわりを囲うように点在するのどかな田園風景とが、まだらに混在している。


 春の風が吹くと、住宅地にまで田の土の匂いが運ばれ、夕暮れ時には農道のほうからカエルの声が聞こえてくる、そんなところだ。


 都心から近いということもあり、市役所のある中心市街地は、オフィス街と商業施設もそれなりに活気づいている。


 バスロータリーには人が絶えず行き交い、休日には若い家族連れが駅前のモールに吸い込まれていく。


 桶野川市は、近年、ほどよい暮らしやすさ、を掲げたまちづくりを推し進めている。


 市の中央を流れる桶野川沿いには、長く続く桜並木があり、春には、薄桃色のアーチが川に沿って伸びる。


 川べりの遊歩道を歩く人々の姿は途切れず、花見の季節には屋台も出て、小さな祭りのようなにぎわいを見せる。


 北部の桶野台には、新興住宅街が広がり、若い世帯の流入で活気を帯びている。


 夕方になると、保育園帰りの親子が、手をつないで歩く様子が、目につく。


 一方、郊外には、稲作や梨の栽培が盛んな田園がまだ残っている。


 夏には、青々とした稲が揺れ、秋になると黄金色に染まる風景が広がる。


 特産の桶野梨は、有名である。


 みずみずしく、甘みが強い梨として、近隣の町まで、名が通っている。


 南部の工業団地では、中小企業が集まり、環境技術や精密機械産業の拠点として地域経済を支えている。


 通勤時間帯になると、工業団地へ向かう車列が、ゆっくりと続く。


 交通面では、鉄道で都心まで約四十分と利便性が高い。


 駅前の再開発で、行政、商業、文化機能が集約している。


 新市庁舎や図書館、カフェなどが入る複合施設は、市民の憩いの場となっており、放課後になると学生の姿も多い。


 また、桶野川市立文化ホールでは、定期的に音楽会や演劇などが開かれ、市民文化の拠点として親しまれている。


 一方で、郊外では、高齢化や空き家増加の課題もある。


 そこで、市は、リノベーションや移住支援を通じて、再生を図っている。


 空き家を利用したカフェができたり、地域ボランティアが清掃活動をしたりと、小さな変化が、少しずつ積み重なりつつある。


 葉坂学園は、そんな桶野川市の市街地の外れにある、閑静な住宅街の中に位置する学校だ。


 地域に根ざした教育を掲げ、学力と人間力の両立を重視している。


 校舎は、桶野川駅から徒歩十分ほどの高台にある。


 ガラス張りの校舎と整備された中庭が印象的で、晴れた日は、中庭の噴水が、光を弾いてきらめく。


「綺亜。ちょっと良いかな?」


 もう一度、彼方が、呼びかける。


 綺亜は、はっとしたように、小さく肩を揺らした。


 それから、ゆっくりと彼方に顔を向け、


「……ごめんなさい」


 と、掠れた声で言った。


「呼んでくれた?」


「この前の全園集会で、講演があったよね」


 と、彼方は言った。


「ええ。あったわね」


 綺亜は一応頷いたものの、一拍おいてからの返事である。


 どこか生返事のようにも聞こえた。


 半ば心ここにあらずな調子だった。


 彼方は、そんな綺亜の様子を目に留めながらも、穏やかな声で、続けた。


「W大学の先生が来て、世界と日本を取り巻く経済情勢と、これからの働き方についての話」


「テレビでもたまに見る、有名な教授の講演だったわね」


 と、綺亜は言ったが、やはり、どこか上の空だった。


「アンケートの用紙」


 彼方は、付け加えるようにして、言う。


「僕らの班の分を、委員長に提出しようかなと思って」


 綺亜は、そこでようやく思い出したように、目を瞬かせた。


「あ……そうだったわね」


 と言って、A4サイズの用紙を、丁寧に揃えてから、彼方に手渡した。


「最後の項目の、三百字以上四百字未満で、講演の感想を書いて下さい、っていうの、大変だったよ。綺亜は、うまく書けた?」


 と、彼方が聞いた。


 綺亜は、ペン先を見るような目で、


「……そこそこね」


 とだけ、言った。


 その素っ気なさに、彼方は、少し胸の奥が引っかかった。


 だが、口には出さなかった。


 彼方は、自身の班の生徒の分のアンケート用紙を取りまとめ、教室前方の席へ向かう。


「はい、委員長。僕らの班の分、集まったから渡すね」


 彼方は、クラス委員長である立海凛架(たちうみりんか)に、用紙を手渡した。


 凛架は、


「ありがとう。朝川君の班は、提出物が早くて助かっているわ」


 と柔らかく微笑んだ後、少し真顔になり、


「……倉嶋さん、どうかしたのかしらね」


 と、言った。


「そうだね」


 と、彼方は、控えめに返した。


(立海さんも、気付いていたのか)


 と、彼方は思った。


 彼方自身も、ここ二日ほどの綺亜の様子には、何か胸に重いものを抱えているような、そんな淡い影を感じていた。


(一人で考えたいのかもしれない。綺亜から何か言ってきたら、その時は応えよう)


 来る者拒まず、去る者追わず。


 それが、彼方の考え方である。


 彼方は、もう少し様子を見ようと決めていた。


(佳苗さんに言わせると、僕のこういうところは、日和見主義で良くないらしい)


 御月佳苗(みつきかなえ)は、朝川家に雇われている家政婦である。


 朝川家は、現在、彼方の一人暮らしという状況だった。


 両親は、仕事の関係で、長期出張に出ている。


 本来なら、彼方も両親についていくという選択肢もあった。


 しかし、葉坂学園からの転校を考えると、時期的に中途半端だった。


 それに、新しい生活に慣れるまでの手間や労力を思うと、彼方は、現状維持の一人暮らしを選んだのである。


 両親からの連絡は、ほとんど来ない。


 月に二回ほど、メールがあるのみである。


 連絡の少なさは、よく言えば信頼の裏返し、悪く言えば完全な放任主義だ。


 ただその両親も、学生である息子を一人で置いていくことには多少の不安を抱いたのだろう。


 家政婦の女性に、週三日、来てもらうように手配してくれていた。


 その家政婦が、御月佳苗である。


 週に三度ほど家に来て、炊事、洗濯、掃除といった家事全般をこなしてくれる。


 日曜日には一週間分の買い出しにも出かけてくれる、有能で温かい人物だ。


 感謝をしている一方で少々問題ありといえないこともないがそれについては云々言ってもというのが、彼方の考えだった。


「少し元気がないみたいだけど……朝川君、隣の席だし、何か知ってる?」


 と、凛架は、言った。


 凛架の指摘は、もっともだった。


 この二日間の綺亜は、休み時間も、一人でいることが多かった。


 近づきがたい沈黙のようなものを纏っているせいか、級友たちの中には、綺亜に声をかけるのを遠慮する者も、いた。


「委員長は、優しいねえ」


 と、言ったのは、級友の乃木新谷である。


 椅子の背にもたれかかりながら、わざとらしく感心した顔をしている。


「クラスメートの心配をするのは当たり前のことよ」


「いや、さすが、委員長」


「やけに私のこと褒めてくれるのね」


「そんなことはない。実はさ、今、彼方に用事があるんだよ」


 新谷は、彼方に向き直って、


「彼方。予習を忘れちまってさ。古典の訳、写させてくれ」


「別に構わないけれど……」


「朝川君。甘やかしちゃ駄目よ」


 と、凛架が、横から遮った。


「えっと……」


 彼方は、苦笑した。


 凛架は、新谷に向かって、


「また忘れたの?」


 と、呆れ顔で言う。


「自分でやりなさい」


「自分で辞書で単語を調べたんだけどさ、さっぱりなんだよな」


「辞書で調べたのは何単語?」


 凛架の目が、鋭く光る。


「……三個、かな」


 と、新谷は冷や汗まじりに言った。


「それじゃ調べたうちに入らないし、予習のうちにも入らないじゃない」


「いや、待ってくれよ。俺だって、十分間は頑張ったん……」


 新谷は、自分の失言に気づき、言葉を止めた。


「十分だけ?」


「え、ええとだな、委員長……」


「もう一度言うわ。自分でやりなさい」


 凛架が目を細めると、その白い脚がすっと動き、紺のスカートの生地がふわりと揺れた。


 その瞬間、新谷の顔が引きつり、青ざめていく。


 新谷曰く、立海凛架は、空手の有段者である。


 以前、ほんの出来心で彼女に突っかかったところ、返り討ちに遭ったらしい。


 その話を語る時の新谷は、必ず震え声だ。


 そうした経緯があるせいか、新谷は、凛架には頭があがらない。


 新谷は今でこそ落ち着いているが、かつては少し悪かった時期があり、喧嘩が強いことは彼方も知っていた。


 その新谷が敵わないというのだから、凛架の実力は相当なのだろう。


「きちんとやるのよ、乃木君」


 凛架は、ため息をつきながら言い、


「朝川君も、乃木君をあまり甘やかさないようにね」


 と、釘を刺した。


「そう、だね」


 彼方も苦笑するしかなかった。


「わかったよ。授業中あてられないことを祈るしかねーな」


 と、新谷は、観念したように言った。


「まったく。少しは反省しなさい。いつも注意する私の身にもなって」


「……反省します」


 新谷は、気を取り直したように続けた。


「綺亜ちゃん。今日は朝から元気ないよな」


「そうかな」


 と、彼方は、言った。


「何かあったのかしら」


 と、凛架が、言った。


「彼方も、そっけないよな」


 新谷は、肩をすくめる。


「隣で悩んでる子がいるんなら、ほっとけないのが普通だろ?」


 彼方と新谷とは、十年来の付き合いである。


 言わば、悪友である。


 新谷の言葉には、悪友ゆえの無遠慮さと実直さがあった。


「そうだね」


 と、彼方は、言った。


「何かあったら、倉嶋さんのほうから言ってくるかなと思ってね」


 その言葉に、凛架は、困ったように笑った。


「朝川君の言うこともわかるわ。でも、心配なの」


 彼方は、


(立海さんの言うことも、わかる)


 と、思った。


「それでね、朝川君にお願いなんだけれど……それとなく、倉嶋さんと話をしてもらいたいの」


「僕が?」


「別に、根掘り葉掘り詮索してって言ってるわけじゃないわ」


 凛架は、彼方を見つめながら、言う。


「誰にだって、一人になりたい時はあるし、ゆっくり考えたい時もあるものよ」


「……」


「でもね」


 凛架は続けた。


「女の子は、静かに話を聞いてもらうだけで気持ちが楽になることもあるの。私は、そう」


 と、穏やかに、微笑んだ。


「倉嶋さんが、クラスの中で一番気を許してるのって、朝川君だと思うのよ」


 新谷も、


「俺も、そう思うなあ」


 と、同意した。


 ぱちくりと目を瞬かせた凛架は、


「あら。珍しく気が合った」


 と言った。


 新谷も、少し驚いたように、


「おう。俺も、そう思ったところだ」


 と返す。


 二人は、顔を見合わせ、それからそろって彼方に視線を向けた。


「お願いね、朝川君」


「期待してるぜ、相棒」


 彼方は、二人の期待のこもった眼差しを浴び、後押しされないと動かない自分を、少し反省した。


(日和見から、離れてみよう)


 と、彼方は、心の中で小さくつぶやいた。


 そして、凛架と新谷に向かって頷く。


「わかった。昼休みにでも、話してみるよ」


 と、彼方は言った。







 昼休みになった。


 春先の柔らかな陽射しが、中庭の芝生に、まだらな影を落としている。


 吹き抜ける風は、ほんの少しだけ冷たさを残しながら、冬の名残を撫でるように通り過ぎていく。


 校舎の白壁に反射した光が、芝生の上で揺れ、どこかゆるやかな時間が流れていた。


 ベンチに座った綺亜は、手帳をひざに置いたまま、ペン先で、紙の端をとんとんと叩いていた。


 その音は小さく、しかし一定のリズムを刻み、周囲のざわめきとは無関係に、綺亜だけの空気を作っていた。


 風が少しだけ吹いて、長いブロンドの髪の切れ端を揺らす。


 淡い光を受けて、髪は金糸のように輝き、まるで春の匂いをまとっているようだった。


「……何か用?」


 気配を感じて顔を上げた綺亜は、手帳から視線をはずし、近づいてくる彼方を見た。


 その目は油断のない、しかしどこか疲れたような光を宿している。


 緊張が抜けきれない顔だった。


 彼方は、


「少し、良いかな?」


 と、遠慮がちに声をかけた。


 控えめな声だった。


 だが、その奥には、ささやかな決心のような硬さがあった。


 綺亜は、


「別に、断りなんか必要ないわ」


 と、つれない調子で、言った。


 そのまま、手に持っていたイチゴミルクの紙パックに唇を当てる。


 甘い香りがふわりと広がり、中庭の空気に淡い色を差し込んだようだった。


 彼方は、綺亜の隣に腰を下ろす。


 ベンチが、ぎっと少しだけ軋む。


 その音に、綺亜の眉が、ほんのわずか動いた。


「何か、見ていたの?」


 彼方は、綺亜の手帳にそっと視線を向けながら尋ねた。


「覗き見?」


 綺亜は、わざと棘を含ませて、返す。


「趣味が悪いわね」


「今来たんだから、内容はわからないよ」


 彼方は肩をすくめ、苦笑した。


 綺亜は、一拍おいて、ため息をつく。


「……ま、そうね」


 そう言って、広げていた手帳をぱたんと閉じた。


 その一連の動きは、明確に、それ以上触れてほしくない、と、言っているようだった。


「別に、彼方には、関係のないことよ」


 綺亜の声は、冷たかった。


 だが、彼方は、その奥に微かな揺らぎを感じ取った。


 拒絶の硬さと、どこか迷いのような震えだった。


「……わかった」


 彼方は短く言い、身体の向きを、綺亜へとほんの少し正面に向ける。


 その変化に綺亜が気づいた瞬間、その指先が、わずかに強張った。


「こうしよう」


「……なに?」


 綺亜は、眉を寄せ、警戒するように彼方の顔を見た。


「綺亜」


 名前を呼ぶ声は、普段よりほんの少し低い。


 その低さに、綺亜は目を細めた。


「僕は、護衛される者、なんだろう?」


 静かだが、確信めいた言い方だった。


「綺亜が、転校初日に、僕に言ってくれたよね」


「……そうよ」


 なぜ今それを、と綺亜は感じた。


 真意が読めず、返事は慎重で、どこか戸惑っていた。


「将来のために、学園生活を通して、警護、護衛のイロハを学ぶ。そういう趣旨だったかな」


「そうね」


「護衛する人は、護衛対象のことをよく知っておく必要がある。そうだよね?」


 綺亜のまつ毛が、わずかに震える。


「そうでないと、護衛者は務まらないわ」


 少し気取って言いながらも、声音には何か探るような揺れがあった。


「だったら、護衛される僕も、護衛してくれる綺亜のことを知っておかないと。何も知らない依頼者なんて、みっともない」


「……っ」


 綺亜の髪が、びくりと揺れた。


「ふざけないで!」


 頬を紅潮させ、思わず声を上げる。


 怒りというより、心のどこかを急に突かれた反射のような鋭さがあった。


「ふざけていないよ」


 彼方は、まっすぐ綺亜の目を見て、静かに言った。


 その瞳の芯の強さに、綺亜は、思わず目を逸らす。


 しばらく二人の間に沈黙が降りた。


 遠くでサッカー部の掛け声が響き、校舎の影が少しずつ動いていく。


 綺亜は、視線をそらしながら、靴先で地面を軽く蹴る。


 やがて、重い沈黙を破ったのは、綺亜の方だった。


「……こういう時だけ、そういう目をするのね」


 どこか自嘲めいた声だった。


「絶対に退かないっていう顔」


 そう言うと、綺亜は閉じていた手帳を再び開き、彼方へ差し出した。


 貼られた地図には、赤い丸印が散らばっている。


 折り目の多い紙は、何度も何度も調べた証だった。


「桶野川市の地図?」


 彼方が首をかしげる。


「ここのところ、通行人が突然一時的な意識不明に陥る事件が続いている。これは、そのマッピングよ」


 綺亜は、指で丸印をなぞった。


「この駅前の商店街は、私と彼方があのライダースジャケットの男達と遭遇した時のもの」


「もしかして、この前の"爛の王"…"影法師"の……」


「そう。全部で十三件」


 綺亜は短く言った。


 彼方は息を呑む。


 赤い印は市内に散らばり、点というより線を描いて進行しているように見えた。


「商店街に、美術館、工事現場、病院……本当に色々だね」


 彼方は、顎に手を当て、思案する。


「何か共通項は……」


「あるわ」


 綺亜は、ためらわず答えた。


「今、彼方が言った場所や施設はすべて、倉嶋グループが、出資か企画で関与しているの」


 声は静かだった。


 だが、その奥には固い決意が潜んでいた。


 倉嶋商事。


 倉嶋重化学。


 倉嶋電機。


 名を挙げればきりがない、政財界の巨塔、倉嶋グループ。


 街を、国を動かすほどの力を持つ一族。


 綺亜は、その頂点に立つ倉嶋高明の一人娘だ。


「これは、わかりやすい倉嶋への挑戦なのよ」


 そう言う綺亜の横顔に、彼方は、静かに耳を傾ける。


「これ以上の暴挙を、許すわけにはいかない」


 言葉は強いものの、その手はわずかに震えていた。


「倉嶋の家は代々、この街の"守護者"として、樋野川の地を護ってきたわ」


 綺亜は、続けた。


「私は、倉嶋の名にかけて、"守護者"として、その任を全うしなくちゃいけない」


 綺亜の瞳は、決意と不安が複雑に入り混じって揺れていた。


 その奥には、誰にも語れない重荷の影が潜んでいる。


「だから、"影法師"を討つ……ただ、それだけよ」


 言い終えると、綺亜は、口を閉ざした。


 春風に揺れる中庭に、二人の呼吸だけが残る。


 静かな時間が、ほんの一瞬、永遠のように伸びていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
42bpk4s771sz1iupmgjda531438n_aix_5k_8c_2
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ