4.変わらない約束
三年の月日が流れ、俺は再び王都のロイアード学園に入学した。
エリナを災厄の魔女・アフロディーテの器にさせてしまった理由は、魔女を支配下に置こうとする者達の存在を俺が認識できなかった事だ。
奴等を事前に捕らえることが出来れば、エリナが魔女の器になることはない。
俺は学園に入ると共に、王都の裏社会で生きる人間を雇い、情報を得ることに注視した。
しかし——エリナが学園に入学する年を迎えても、災厄の魔女・アフロディーテに関わる存在を確認することは出来なかった。
少しでも情報を得ることが出来れば、糸口として王子であるカインに伝え、セレナ王国の騎士団を導入してもらうつもりだった。
だが、何も事が起きていない今のままでは、カインを説得することは出来ない。
何も手を打つことが出来ないまま、エリナとリーシャは学園に入学することになる。
前回と同じように、二人は仲の良い関係を築いていた。
このまま行けば、半年後に行われる野外実習の際に、二人は何者かによって拉致されることになる。
そうならない為に、俺は生徒会長となり、立場を利用して行事を変え、エリナに魔法道具である首飾りを手渡した。
「この首飾りは遠く離れていても何処にあるのかが分かるようになっている。何かあった時の為に常に身に着けておいて欲しいんだ」
エリナは笑顔を見せると、なぜか一度受け取った首飾りを俺に返した。
「お兄様の手で私の首に付けてください。『お前は俺の物だ。誰にも渡さない』と強い想いを込めて」
エリナは背中を見せて、そう言った。
今回は、《あの約束を》言われることはなかった。
特別な異性として見られないように気を使って接していた。
だが、エリナの首に首飾りを付けると——
「これは、私の気持ちにお兄様が応えてくださった。とういう事でよろしいですわよね?」
気を使っていた”つもりでしかない”ことが分かった。
言われなかっただけで、彼女の心の在り方は変わっていなかったようだ。
「エリナの気持ちがこの先も変わらなかったら、一緒にセレナ王国を出よう」
背中越しに笑顔を感じさせるとエリナは、
「覆ることのない決定事項ですので、準備は済ませておいてくださいね」
どこかホッとしたような素振りを見せて言った。
「ああ、胸に刻んでおくよ」
前回は守られることのない約束として返事を返したが、今度は必ず守る約束としてエリナに誓った。




