5.異空の庭Ⅰ
エリナとリーシャが学園に入学してから半年の月日が流れた。
依然として、変わらない学園生活を俺たちは送っていた。
だが、このまま何事もなく終わることはない。
脅威は必ず訪れる。
災厄の魔女の力を手に入れようと、二人を狙っている者達がいる限り——
†
一日の授業と生徒会活動を終えた課業後、俺は生徒会室に一人残り、各学年を代表する生徒達から提出された報告書に目を通していた。
この報告書は、改善すべき問題点が纏められている。
新学期始まると、生徒同士の紛糾が目に付き、問題となるが、今は備品などの修理依頼程度の要望だけに留まっている。
平和な学園生活だ。
もしかしたら、何も起きることなく今の生活が続くのではと思わせるほどに。
†
時刻は二十一時。
夜空が広がり、騒がしかった昼が嘘のような静寂。
殆んどの生徒が校舎から割り当てられている寮へと戻り、それぞれの余暇を過ごす時間帯となった。
今日も一日を無事に終えそうだ。
そう思いながら椅子から立ち上がり、俺は帰り支度を始めた。
その時だった——
突如、左手首に付けている腕輪が光を放った。
この腕輪は、エリナに渡した首飾りと対になる造りになっており、装飾された魔石が互いの位置を把握する力を持っている。
また、一定以上の距離を取ると光を放つ仕組みにもなっている。
その光は遠く離れるほど強く輝き、魔力の痕跡となって転移の魔法で追うことが出来る。
「どういう事だ……」
瞬時に来るべき時が来たと察し、冷静に行動を起こそうとするも、光の強さに心が乱れる。
対となった二つの魔法道具は何度も実験を行っていた。
距離による効果と光の強弱は把握しているつもりだった。
首飾りとの距離が遠くなるほど、腕輪は強い光を放ち、国境を越えた隣国の領土にいたとしても光は維持できた。
だが、光は一瞬だけ強い輝きを放つと、徐々に輝きを失いつつあった。
これは、首飾りが魔法道具の効果が維持出来なほど遠い場所にある事を意味する。
信じられない……。
腕輪が光を発してから僅か数分。
この短時間で学園の警備を搔い潜っただけでなく、国外にまでエリナを連れ去ったというのか。
それも、国を幾つも隔てた先に。
「くそっ!」
カインに知らせる時間どころか、考えている余裕さえない。
このままでは完全に光が消え、エリナを見失ってしまう。
俺は即座に大量の魔石を媒体に魔方陣を展開し、転移の魔法でエリナを追った。




