6.異空の庭2
「ここは……」
転移魔法によって発せられた光が収まり、視界が開けると、奇妙な光景が目に映った。
目にしたのは、自身が足を付けている広大な長い橋と、その橋の先にある城らしき建物。
そして、足元に落ちているチェーンの切れたエリナの首飾り。
橋と建物は湖の水に囲まれているものの、湖の先は終わりが見えない。
陸地はなく、どこまでも地平線が続いている。
まるで海の中心にいるかのようだ。
記憶を辿る限りでは、このような地形は存在しない。
”現実に存在しない場所”であるとするならば、ここは……。
「異なる次元に造られた世界、異空の庭か」
膨大な魔力と高度な魔法技術によって異なる次元に創造された世界。
——異空の庭——
異空の庭は造り出すだけでも膨大な魔力を必要とするが、維持するのにもかなりの魔力を消費する。
異空の庭は学園の授業で習うものの、優秀な生徒でも教室ほどの大きさの空間を数時間維持するのがやっとだった。
セレナ王国の上位魔術師である学園の教師たちが総出で動いたとしても、この規模の異空の庭を構築させるだけならともかく、長い時間を維持できるとは思えない。
おそらく、異空の庭には教師たちを超える魔術の使い手たちがいるのだろう。
「くそ……」
これほど大きな異空の庭と、異空の庭を造り出せる者達の存在に気付けなかった自分に苛立ちを覚えた。
だが、今は自分を責めている場合ではない。
一刻も早くエリナを助け出さなくては。
幸いにも、首飾りが外れたことで敵陣のど真ん中に転移しなくてすんだ。
俺一人では正面から挑むのは無謀。
上手く行けば敵を欺くことが出来るかもしれない。
そう思い、エリナが捕らわれているであろう城へと走り出す。
その時だった——
遠くに見える建物の内側から、激しい音と共に強い光が窓から発せられた。
あれは、光魔法が放つ光……。
光魔法は使い手が限られる希少な魔法。
セレナ王国では王族と一部の貴族のみが使えるとされていたが、今年に入って新たな使い手が現れた。
―—リーシャ・ワトソン——
この世界の主人公となる人間。
前回と同様、リーシャも攫われたようだ。
そして、城内で激しい戦闘が行わている——




