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悪役令嬢の為に  作者: ハジ
一章

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2.再会2

「……ハァ……ハァ………ハァ………」


 緊張のあまり、上手く呼吸が出来ずに息が乱れる。


 急激に短くなった手足にバランス感覚が付いて行けず、倒れそうになる。


 だからといって、足が止まる事はない。


「ハァ……ハァ……」


 屋敷を出て庭に向かう。


 そして数十メートル先の花壇で幼い少女を視界に収めた。


 どうか、これが現実であってくれ。


 夢であったとしても、永遠に覚めないでくれ。


 恐る恐る近付き、俺は少女の名前を呼んだ——


「エリナ……」


 水を与えている花に意識を向けていた少女は、名前を呼ばれることで俺の存在に気付き、にこやかな表情を見せた。


「おはようございます、お兄様」


 そこには、十五年間、ずっと見続けてきた笑顔があった。


「エリナ……」


 もう一度、”守れなかった大切な人”の名前を呼んだ。


(すまない……)


 再会できた喜び。


 助けられなかった事への後悔と謝罪。


 救えなかった自分に対しての苛立ちが、胸の中で混ざり合う。


 そんな俺に彼女は——


「はい、エリナです!」


 首を少し横に傾(かし)げ、無邪気な笑顔で俺の荒(すさ)んだ心を癒した。


 流れそうになる涙を堪え、訪れた現実に身を寄せる。


「おはようエリナ。今日も朝から偉いね」


「お兄様、昨日も同じ事を言ってましたよ」


「あれ? そうだったかな?」


「はい、二日続けて言われたのは久しぶりです」


「そっか、いつもは月毎だったかな?」


「いいえ、いつもは二週間置きですよ、お兄様」


 エリナは笑顔で答えた。


 無邪気に俺を揶揄(からか)うエリナが、とても愛おしい。


「もうすぐ朝ごはんだから、遅れないようにね」


「あら、お兄様。今日は一緒にお花にお水あげないのですか?」


「……ごめん。今朝はちょっとやることがあるんだ」


「わかりました。ではお兄様、また後で」


「ああ、また後でね」


 本当は用事などない。


 エリナの言うように、隣りで一緒に花に水を上げたかった。


 けれど、このまま花壇(ここ)に残れば、感情のままエリナを抱きしめて泣いてしまう自分がいる。


 そんな姿を今のエリナに、いや、これからもずっと見せるわけにはいかない。


 今度こそ、俺は必ずエリナを守って見せる。

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