1.エリナの取った選択1
セレナ王国を出た俺とエリナは、ルドア帝国に身を移していた。
ルドア帝国は、セレナ王国とは比較にならないほど広大な領土を持つ大国。
かつてはセレナ王国を含む小国たちと様々な利権を巡って争いを繰り広げていたが、今は平穏な国際交流が築かれている。
俺たちはルドア帝国で世界各地に支部を持つ冒険者組合という組織に籍を置き、冒険者として新しい身分を得た。
冒険者組合は窓口が広く、過去に犯罪歴が無ければ、成人という条件だけで誰でも冒険者に就くことが出来る。
冒険者は主に民間から受けた依頼を生業としていて、組合が受けた依頼を個人やチームが選択した中から受注することで生計が成り立っている。
元々は名前の通り、冒険者は未開の地などへ挑戦する者を指していたが、土地が開拓されつつある現代では、魔物の討伐や行商人の護衛など、戦闘が主な仕事となっていた。
とはいえ、それは実績を重ねたベテランの冒険者が受けられる依頼。
新米の俺たちにはまだ縁の無い仕事だ。
俺たちのような新人に任される仕事は、山での薬草の採取や、人手が不足している業務への支援だった。
体が健康でさえあれば問題なくこなせる仕事だけあって、それほど大きな報酬は得られない。
それでも、若い男女二人が慎ましく生きていくだけなら十分だった。
小さな村の外れで家を借りた俺たちは、午前中に請け負った仕事を夕方前に終わらせると、夕飯の買い出しをしに商店街まで足を延ばす日々を送っていた。
夕飯のメニューは予め決めていることもあれば、その時の気分で決めることもある。
想像だけでレシピを考え、未知の料理に挑戦したこともあった。
その時に成功と言える料理が出来上がることもあったが、失敗と感じることの方が圧倒的に多かった。
そんな、何気ない日々を協力し合って生きて行くのが楽しかった。
幸せなんだなと、感じた。
小さな事でも、新しい経験をし、学んで行くことで、今になって互いに見たことのない表情や感情を目にすることが出来る。
新鮮で、刺激のある新しい発見がある毎日。
こんな日がずっと続けばと願った。
しかし——終わりは早く、唐突に訪れる。
仕事を受けようとして向かった、早朝の冒険者支部。
各国の冒険者組織に対して、民間からではなく、セレナ王国からの依頼が舞い込んだ。
依頼内容は——
——五〇〇年の時を経て蘇った災厄の魔女・アフロディーテの討伐——




