2.卑怯な選択2
新たな結論を出した俺は、過去二回の人生よりもエリナに対する態度を強調させた。
傲慢な人間として育たないように導きながら、俺に対して特別な感情を抱くようにと、意図的にエリナに尽くした。
その結果として、
「お兄様、エリナは将来、誰が何と言おうと、お兄様と結ばれます!」
この言葉を、一度目の生の時よりも二年早く聞くことができた。
兄として、人として、妹に間違った接し方をしているのはわかっている。
それでも、間違っていても、エリナが生き残れる未来があるなら、俺は何だってする。
卑怯者と呼ばれたって構わない。
下衆と罵られようと関係ない。
「エリナ、僕も同じ想いだよ。だから、一緒にセレナ王国を出よう」
†
過去に交わした約束は、エリナが学園を卒業した時、俺への想いが変わらなければ共にセレナ王国を出るというものだった。
このまま学園に進めば、エリナは仮面の男に災厄の魔女・アフロディーテの器として選ばれてしまう。
だから約束の時期を早めた。
違う選択を取った。
この世界では、十五歳を迎えることで成人となり、成人としての資格と権利が得られる。
それらを考慮し、エリナが十五歳になった時、一緒にセレナ王国を発つことにした。
当初、誰にも伝えることなくセレナ王国を出るつもりだったのだが、エリナがそれを拒んだ。
クランベル領の領主であり、俺たちの父親である、ロイド・クランベルには、自分たちの事を話すべきだと主張したのだ。
俺とエリナに母親はいない。
母親は体が弱く、エリナを産んで直ぐに亡くなっている。
当然、エリナに母親の記憶はない。
俺自身も、物心が付く前の出来事だったこともあり、母親の記憶と言えるものは無かった。
その為、ロイドは俺たちにとって唯一の親となる。
しかし、ロイドにとって俺たちは自分の子供として思われていなかった。
本人に直接聞いたわけではないので真意はわからないが、彼の素振りは父親のそれではなかった。
実子である俺とエリナに対して、ありえないほど無関心だった。
俺たちのせいで妻を失ったのだと、憎んでいたのかもしれない。
だから俺は何も言わずに出ていくことに、それほど抵抗を感じなかった。
関心がない事から、気にも留められないだろうが、逢えて不安要素を作ることはない。
けれど、エリナが最低限のけじめだと譲らなかった。
そのけじめは案の定というか、当然のように『好きにしろ』の一言で片付けられることになる。
変わらない態度に少し残念な気持ちにはなったが、良い方向に考えれば、二人の事を認めてもらえたとも取れる。
父親の言葉は、『後の事は気にしなくてもいい』と、そういう話にもなるのだ。
最初はどうなることかと思ったが、大事になることもなく、けじめをつけることで気が晴れ、家門に対しての心残りは無くなった。
「よかったですね。お兄様」
「ああ、そうだな」
住み慣れた屋敷を背にして歩き出す。
それは、これから起こる悲劇に背を向けた事と同じ。
俺だけが知っている、災厄の未来。
俺は、その未来から逃げ出した。
エリナを、守る為に——




