8.異空の庭4
エリナとリーシャを相手に無傷である以上、簡単に隙を見せるとは思えない。
だから俺が身を挺して動きを止める。
躊躇するなと言った意味は、俺もろとも魔法を打てという事。
背中から一瞬だけ戸惑いを感じたが、
「「はい!」」
直ぐに力強い返事が返された。
二人とも理解している。
そうしなければ、この状況を打破出来る可能性がない事を。
エリナとリーシャが互いに距離を取り、左右の位置を陣取ったことを背中越しに感じると、俺は仮面の男に向かって駆けた。
一気に間合いを詰め、剣を斜め頭上から振り下ろす。
男は避ける動作を見せず、その場から動かない。
(今だ!!)
この先をエリナたちに託し、男と一緒に二人の攻撃魔法を受ける覚悟を決めた。
だが——
ありえない現象に目を奪われ、思考が停止する。
仮面の男は、俺の斬撃を避けようとしないだけでなく、防ごうともしなかった。
結果、振り下ろした俺の両腕は男の頭上を通り過ぎ、地面に向かって振り切られた。
しかし、手応えはなく、男にも変化が見られない。
(これは一体………な!?)
いつの間にか、男の左手には剣が握られていた。
その事に気付くと同時に、足元で地面にガランと金属の落ちる音が聞こえた。
視線を下に向ける。
落ちていたのは、俺の剣。
剣が手から離れた感触はなかった。
これは……。
「……あ、あぁ………」
落ちていたのは剣だけではなかった。
剣の柄は、手首から切り離された両手で固く握られていた。
「ぐああああああ!!」
事実を知ることで状況を理解し、脳が強烈な痛みを知らせる。
油断はしていなかった。
魔術師であると同時に格上の剣士である可能性も考量していた。
それなのに、気付く事も出来ずに両手が切断された。
(ま、まだだ……)
まだ終わりじゃない。
両手がなくとも、体は残っている。
驚愕する現象に圧倒されている場合じゃない。
前に進み、体当たりで仮面の男の動きを止めようとした。
けれど——体は言うことを聞いてくれない。
足に力が入らず、上半身がゆっくりと斜めに倒れていく。
体の感覚がいつもと違う。
それもそのはず。
俺の上半身は、両手と同じように腰から下、下半身と切り離されていたのだから。
切り離された体が冷たい地面に落ちると同時に、
「いやあああああああああああ!!」
大聖堂に少女たちの悲鳴が鳴り響いた——




