第9話 完璧な試合展開
今回決まった、初見殺し固定撃ちルート。
だけどもこれは毎回使える訳ではない。
そもそもあちらが普通に突っ込んできたら、もうおじゃんだし。
これは相手が上級者の位置取り、その上で動かない状況、そして……この技を知らないという厳しい条件でしか使えないのだ。
しかもスカッた場合、相手の攻撃ターンが始まる訳だしね。
その場合残されるのはスペシャルをスカらせた無力なマグリス、その後仕事出来るかというと………。
それはともかく、これが当たるという事は相手が上手いという事、そして──こちらの優勢で初動が決まった事を意味するのだ。
『王子っ、バリアお願いっ!』
『あっ、ああ!すぐ行く!』
そして沙倉は全くそこで満足していない。
しっかりと前線を上げる行為を要求し、答える様に味方のアイゼンが物陰から姿を表す。
「良い感じだね」
『ここに建てるぞ!』
王子と呼ばれるプレイヤー操るアイゼンがそのままスペシャル、一夜城壁を展開するのだ。
『金木星音選手がここでバリアを展開だ!しっかりと宝石より前に設置したため、次の展開へと繋げていけます!』
『対して百鬼夜光は、中々動けない様子かっ!?』
『どうするっ?サドニクスさんの復帰待ち!?』
『いや、多分間に合わないと思う。
だから、一鉄のスペシャルで時間をっ……』
最初にデッドしたアイゼン使いの彼女が指示を送るも……少し遅かったみたいだ。
騒がしい中央に、両チームの視線が集まっている。
だからこそ、忍び寄るアサシンには誰も……気づけない。
アナタの後ろにいるの、だぁれ?
『おい火車っ、後ろッッ!!』
『〜ッッッ!……あっ』
そこには腰の辺りまで黒髪を垂らした一人の女性が。
無理やり引ち千切った様な白い布をワンピースとして身につけや彼女、その手には……包丁が握られていた。
そしてきっと、壁にめり込んだ体の一部を見たならば、プレイした事ない人間でもその能力が何となく理解できるだろう。
加えて鋭く突き出され喉元を貫いた包丁、一気に全損した一鉄のHPを見ればそのキャラの末路も。
『red一鉄』が『blue伽羅子』によって倒されました
『……一鉄やり?』
『ナイス、ラムネちゃん!』
そんないつも通りの、こちらまで眠たくなりそうなトーンで喋る彼女……喜京楽夢音。
だけども、その中にはどこか誇らしげなモノも含まれていた。
『一瞬の油断をついた、伽羅子の壁抜けッッ!そのまま火車選手はデッドしてしまう形に!
普段はスローライフ系をプレイしているラムネ選手の活躍が目立ちます!』
「いやぁ本当に、良いタイミングだったね〜」
楽土
・ラムネちゃんがっ!?
アロワナワナ
・バトロワ自信ニキ、やられとるやないか!
アンラッキーガール
・今のは上手いねぇ
ネギだくだく
・アンちゃんが褒めるなら、伽羅子側が上手かったか〜
『くそっっ!』
『あっ……』
『blue伽羅子』が『red餓鬼道』によって倒されました
だがあくまで、アサシン。
1人倒す事はできても紙耐久のため。複数人いる場所に突っ込んでしまっては生きては帰れない。
……まあ、幽霊だから生きてるのかよく分かんないけど。
あっという間に蜂の巣にされてしまうが、十分に注目は集めた。
『red餓鬼道』が『blueアイゼン』によって倒されました
『ちょっと、待っ……』
『red伽羅子』が『blue餓鬼道』によって倒されました
ここから返そうにも、4対2ではあまりにも分が悪過ぎた。
そうして全滅を見届けたところで、チームは宝石の解除を始める。
ここからはスピネオンの防衛と、百鬼夜光の打開という展開。
だがこの初心者即席チームでは、通話があったとしても連携を取るのは中々難しい。
チームワークが大事となる打開は特に。
そうして、じっくりと守りを固めたスピネオンの検問を抜ける事は出来ず……そのまま1戦目は彼らが取ったのだった。
パンパンジー
・初戦は勝ち!
飴雲
・綺麗に固めたな〜
チッチ
・これはもう、ストレート勝ちか?
「今のは上手かった……けど、次はどうだろう?」
初見殺しがしっかり決まった上で、相手の混乱に乗じての勝利だった。
きっと次あの様なショットを決めるのは難しいはず。
もし修正力の高い相手だったら──中々手強いかもしれない。




