第7話 練習試合
『マグリス』を使いたいという酔狂なVtuber、沙倉風音。
彼女と出会ってから、もう一週間が過ぎた。
練習は彼女が望んだ結果毎日1時間以上。
こちらが教えるだけで終わらず、その後も配信でランクを回しているみたいだ。
……ちょっと熱心過ぎる気もするけど。
ただそのおかげで、彼女のランクはもうシルバー。
初心者としては異例のスピードである。
そしてそんな彼女を応援をする人も多くなっていた。
廃都倶楽部界隈からか、それとも別からか。
そこまでは分からないけども、同接は5000人を安定して超えている状況。
少なくとも廃都倶楽部内ではトップ層の集客であり、きっと……デビュー三ヶ月目のVtuberとしても異例の数字のはず。
そんな彼女が、今日試合をするらしい。
それは彼女の所属する株式会社ドリームクエストが主催するドリクエカップ、その練習試合であった。
ナッツ
・楽しみだな〜
楽土
・マグリス、どうなるんだろう?
粘々ギブアップ
・本番で決められるかな?
寒気タン
・弟子の初陣に一言
「ここでスペシャル当てたら……優勝できる、かもね?」
俺が今やっている配信、それは練習試合の観戦配信だった。
ガブtube内のドリクエ公式チャンネル、そこからミラーさせていただいている形。
どうやら始まったら、マッチ参加者……合計8人の通話が聞こえるそうな。
そんな何とも贅沢な配信を、誰でも画面を映して観戦配信してもオッケーとは中々太っ腹な会社である。
その注目度は練習試合とはいえ高いのか、もう3万人を超えていた
……大人気コンテンツすぎる。
そしてそんな会社と、沙倉さんのおこぼれに預かる様に、
「え〜っと、同接3000人ありがとうございます」
パンパンジー
・もちろん2窓するに決まってる!
Ram
・もう大人気配信者じゃないですか、ヤダ〜
マルオ
・そろそろ、†古参†名乗って良い?
プラーO
・初見です、風音ちゃんから来ました!
「初見さん、いらっしゃい〜。
常連組もいつもありがとね!」
そうしてコメント欄と戯れている間に、どうやら時間になったみたいだ。
待機画面から、廃都倶楽部の画面へと変わる。
『では、皆さんこんばんは!
貴方のために輝く緑の太陽、のっ!本日実況解説を務めさせていただく、ペリドット・ラングレイです!
今日一日よろしくお願いしま〜っす!!』
レイ
・あっ、今日はペリっちゃんなんだ
トマトマァァ
・流石に実況解説を同時に出来る人は、この人しかいないか
Ram
・あれ?この人、チャンピオン行ってたよね?
「チャンピオンまで行ったのは見た、かな?」
寒気タン
・橙は見てたの?
「当時まだシルバーだった時は、ほぼ毎回見てたしね。
ただ廃都倶楽部配信を辞めてからは、もう随分見てないかも……」
極楽
・橙にもそんな時期が……
粘々ギブアップ
・今ではこんなに立派になって、お母さん嬉しいよ
「……何を言ってんだ、お前は」
何とも言えないボケにツッコミを入れながら、当時を思い出す。
あの時はまだ高校生。
学校から即帰宅して廃都倶楽部を起動し、夜は彼女の配信を見るという毎日を送っていた。
別に彼女はマグリス使いでは無いけども、同じ役割の餓鬼道を使っていたから立ち回りを参考にしていたのだ。
だから今、彼女のライトグリーンのポニーテールを揺らす一挙手一投足を見るだけで懐かしく感じる。
……いやまあ、こっちが見てなかっただけで普通に活動してたはずだけどね。
『ルールは、シンプル。
5分間の間で、どちらが100カウントを進めて宝石を盗み出すか。
それとも、相手より多くカウントを進められるかだけ!』
『今回は練習のため、8チームによるランダムマッチングの2本先取で行かせていただきます!
組み合わせは事前に抽選されていまして、今日は……こんな感じですね』
画面には、そのマッチングと対戦順がデカデカと表示されていた。
『……準備ができた様なので早速、第1戦目に参りましょうか! スピネオンvs百鬼夜光、果たして勝利はどちらへ!』




