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句集 朝チュンを近頃聞かぬ  作者: 天野幸道


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卯の花

卯の花は白い制服連れてくる


 2021年抒情文芸秋季号佳作 選者 坪内稔典


 文部省唱歌「夏は来ぬ」はご存じかと思います。”卯の花の匂う垣根に”で始まる菓子です。小学校の音楽の時間に習いました。母ももちろん知っていて「夏を感じさせるいい歌ね。」と話していました。

 後年広島の原爆を扱ったアニメ「夏服の少女」を見たとき、少女たちが「夏は来ぬ」とうたっている場面がありました。周囲の大人たちがそれを嬉しそうに聞いている映像は本当に美しく和むものでした。

 戦争で標的になる安いから、白い夏服が着れなくなる、せめて夏を感じさせる「夏は来ぬ」を歌わせてくださいと女の子たちが頼み、先生が黙ってピアノを弾き始める場面です。

 実際の少女たちをモデルにして作成されたドキュメンタリーアニメーションで、残された年老いたお母さんも実際に登場します。涙を抑えることができませんでした。

 それ以来卯の花と聞くと、白い夏服の少女たちを思い浮かべるようになりました。その気持ちを句にしたものです。



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