2ー2
朝食を食べ終えると、紅茶を飲んで少しだけまどろんだ。
この瞬間がたまらないのよね。
「……だから、だまされたと思って、一回だけ付き合ってよ」
あ。昨日ザックを誘っていた女だわ。しつこいったらないのね。
「だまされるくらいなら、最初から関係のない関係のままでいいのではないでしょうか?」
「もう〜!! ザックったらつれないんだからぁ。でも、そこがかわいいのよね」
ふふんと女が鼻を鳴らしたのがわかる。
辞めて。ザックを恋愛対象にしないで。
だってザックはわたくしの大切な人なんだもの。
「じゃあ、これあげるから食べてよ」
「なんですか?」
「お昼のお弁当。どう? 自分以外の人にご飯作ってもらうの、初めてでしょう?」
「こう見えても、わたくしとて幼少時代はありましたから――」
「大人になってからよ。初めてでしょ?」
「そうですね。このままお返ししたらどうなりますか?」
「そうね……」
そう言って女は楽しそうにけらけらと笑った。
「あなたの大切なお嬢様をいじめちゃうかもしれないわよ? それでもいいなら返せばいいわ」
「いじめはよくありませんね。ですが、わかりました。お昼までこのお弁当を預かっておけば問題ないのですよね?」
「ん〜、もうっ!! ちゃんと食べてから返してよ」
本当にしつこい女。なんだってこんなにザックにつっかかるのかしら?
「お弁当が空になればいいわけですね?」
「中身を捨てたりしたらゆるさないんだから」
なんの権利があって、ザックをそこまで困らせるの?
「……そうですか。では、他の方に食べてもらいましょう」
「あなたが食べなさいよ、ザック」
「ですが、わたくしは自分の昼食を用意する時間がありますので」
「男なんだから、たくさん食べてもいいじゃない?」
「では、わたくしが食べることにしますが。今日だけですよ?」
「やった! 感想教えてね」
わざわざわたくしに聞こえるように話をするなんて、本当に嫌な女。
ザックが迷惑してるのがわからないのかしら?
ああ。だけど。わたくしもザックに似たようなことを言ったような気がする。
一緒にご飯を食べましょうなんて、言わなければよかったのかしら?
「ロザリア様、たいへん長らくお待たせしました。仕事部屋へ行きましょう」
ザックは何事もなかったみたいにわたくしに話しかけるから、聞き出すことができない。
ねぇ、貴方。本当はすごく迷惑だったのでしょう?
だったらわたくしに愚痴を言ってもいいのよ?
だけれどザックは一言もしゃべらない。
迷惑な女のアプローチなんてストレス以外ないのに。
「ロザリアさん、おはようございます」
職場の同僚の男の人にあいさつされて、ザックがふっとわたくしから離れた。
「おはようございます」
男の人だけど、この人の刺繍はとても丁寧なのよね。
だけどどうしてザックは離れてしまったのかしら?
友だちが欲しいなんて言わなければよかった。
つづく




