2ー1
わたくしは仮眠室で仮眠したのだけれど、ザックはいつ寝ているのかわからない。
それを聞く勇気もない。
ただ、いつもわたくしが目を覚ますと、すでにザックが朝ご飯の支度をしていてくれる。
「おはよう、ザック」
「おはようございます、ロザリア様」
名前呼びしてってお願いしたのはわたくしなのに、目が覚めて突然呼ばれると恥ずかしくなる。
「朝食の用意ができております。今朝は昨日のフカヒレを使ってスープにしてみました」
「あら? おいしそうね」
「これでしたら、食の細いロザリア様でも完食してくださると思いまして」
ザックは今日も優しい。できればその優しさを、わたくしのためだけに使って欲しいところなのだけど。
「朝食も一緒に食べましょう?」
「はい。よろこんで」
フカヒレのスープはとてもおいしくて、すぐにでもお肌によさそうな気がした。
きのうの言葉が効いたのか、フカヒレは入っていなかったけれど、スープはザックも一緒に飲んでくれた。
新天地に移住して早一ヶ月。生まれつき傲慢なせいかくをしているせいで、くらげ島の元住人とも、新天地の人たちとも距離を縮められずにいる。
わたくしにとって、皇室制度の廃止はそんなにたいしたことがないと思っていたけれど。
お母様はデザイナーとして、お父様は住宅デザイナーとして新天地で活躍しているというのに、わたくしは学校にも行かずにドレスのデザインおよび製作に携わっているものだから、なにかと距離を取られやすい。
現に、今はザックとしかまともに話もしていない。
「ねぇ、ザック」
わたくしは控え目にザックに話しかけた。
「なんでしょう?」
「わたくし、本当に学校に行かなくてもいいのかしら?」
すると、ザックは少し考えた後。
「ロザリア様は、幼少時にあれこれと勉学に励まれたことですし、今さら庶民の勉強をする必要はないと思われます」
なるほど。庶民の勉強か。
でも、学校に行かないと友だちもできないのではなくて?
わたくしがそう言うと、ザックは首を傾げた。
「ロザリア様は、庶民と友だちになりたいのですか?」
「そりゃ、わたくしだって友だちが欲しいわ」
そう言うのを聞くと、ザックは心底驚いたように目を見開いた。
彼のこんな表情を見たのは初めてだから、わたくしもつられて驚いてしまう。
「失礼しました。わたくしはてっきり、ロザリア様は庶民と友だちになるのを嫌っているのかと思っておりましたから」
「でも、友だちがいないのはさみしいわ」
「ミカリン・アールグレイなどとは友だちなのでしょう?」
う〜ん。ミカリンたちとは友だちと言うより距離がある。
「友だちとも違うかしら」
「では、わたくしは――」
言いよどんでザックは口をつぐんだ。
「貴方は?」
「なんでもありません。お気になさらないでください。そういうことでしたら、職場の方々と親睦を持つのはいかがでしょう?」
親睦? ザックに色目を使うような女たちと親睦だなんてありえないわ。
でも、そんなこと恥ずかしくてとても言えない。
ねぇ、ザック。貴方はわたくしのなんなのかしらね?
つづく




