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島娘!!〜波間を駆ける少女たち〜  作者: れんP


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第八話 白波の剣



ここは《島海学園》。


海へ沈んだ世界で、人類を守るため戦う島娘たちの拠点。


半分水没した巨大な学園では、今日も潮風と波音が響いていた。


ゴォォン――。


低い警戒音が学園全体へ流れる。


《近海警戒レベル1》


館内モニターが次々起動した。


廊下。


食堂。


整備ドック。


各所に設置された大型画面へ海域映像が映し出される。


九州たちも一階ホールへ集まっていた。


「始まるよ」


西表島が少し真面目な声で言う。


佐渡島もモニターを見上げた。


周囲には整備士や他の島娘たちもいる。


みんな慣れている様子だった。


だが九州だけは違った。


初めて見る実戦。


初めて見る本物の戦闘。


胸が少しだけ緊張で高鳴る。


モニターには外周海域の映像。


夕焼けの海。


そして、その海面を一人の少女が滑走していた。


白髪。


巨大な大剣。


直島。


「直島先輩……」


九州は思わず呟く。


映像越しでもわかる。


圧倒的な速度。


直島は海面を滑るというより、海そのものを切り裂いて進んでいた。


バシュゥゥッ!!


白い波が一直線に伸びる。


速い。


あまりにも速い。


「うわぁ……!」


九州の目が輝く。


その時。


海中が揺れた。


ゴボゴボッ――。


黒い影が浮上する。


巨大。


魚類型マリンモンスター。


鋭い牙。


赤く光る目。


海面を割って飛び出したその姿に、周囲から小さく息を呑む声が漏れた。


『反応確認。小型マリンモンスター一体』


館内放送が響く。


だが直島は止まらない。


むしろ加速した。


「速っ!?」


九州が声を上げる。


直島の周囲で潮流が爆発的に渦巻く。


海面が盛り上がる。


白波が一直線に走る。


マリンモンスターが咆哮した。


ギャァァァアアア!!


海水を撒き散らしながら突進する。


だが。


次の瞬間。


直島の姿が消えた。


「え……?」


九州が目を見開く。


違う。


速すぎて見えないのだ。


ドォンッ!!


水柱。


巨大な衝撃。


直後、マリンモンスターの身体が大きく裂けた。


ズバァァァン!!


大量の海水が舞い上がる。


モニター越しでもわかる圧倒的な斬撃。


「すご……」


九州は言葉を失った。


直島はそのまま海面を滑走する。


止まらない。


滑らか。


静か。


それでいて圧倒的。


マリンモンスターはまだ生きていた。


傷ついた身体を暴れさせ、巨大な尾で海を叩く。


高波が発生する。


だが直島は波へ真正面から突っ込んだ。


「えぇっ!?」


九州が驚く。


普通なら飲み込まれる。


だが直島は違った。


波の上を走った。


巨大波を蹴るように跳躍する。


そのまま空中で大剣を構えた。


夕焼けを背にしたその姿は、まるで白い流星だった。


次の瞬間。


ズドォォォンッ!!!


一撃。


ただそれだけ。


大剣が振り下ろされた瞬間、海面が真っ二つに割れた。


遅れて衝撃波。


マリンモンスターの身体が完全に断裂する。


沈黙。


そして。


ドバァァァァァンッ!!


巨大な水柱が空へ噴き上がった。


ホール内から歓声が上がる。


「直島先輩やっぱ強ぇ〜!」


「一瞬だったな」


「潮流加速えぐ……」


九州はただモニターを見つめていた。


心臓がどきどきしている。


目が離せない。


直島は静かに海面へ着地する。


水飛沫が広がる。


その姿はまるで海そのものだった。


『対象沈黙確認。海域安全化』


放送が流れる。


戦闘終了。


たった数分。


それだけで終わってしまった。


「すごい……」


九州が呆然と呟く。


西表島が笑う。


「でしょー?」


「直島先輩、学園でもトップクラスだから……」


佐渡島も頷く。


「速いし、強い……」


九州はモニターを見つめ続ける。


直島は討伐後も無駄な動き一つなかった。


静かで。


鋭くて。


だけど、どこか綺麗だった。


「……かっこいい」


ぽつりと漏れる。


西表島がにやにやし始めた。


「おっ、憧れちゃった?」


「えっ!?」


九州の顔が真っ赤になる。


「ち、違っ、いや違わないけど……!」


「ふふっ」


佐渡島が少し笑う。


九州は再びモニターを見る。


海を駆ける姿。


自分にはまだ遠い。


だけど。


「私も……」


胸の奥が熱くなる。


もっと速くなりたい。


もっと強くなりたい。


いつか、あんなふうに海を駆けたい。


九州はぎゅっと拳を握った。


その時だった。


モニターの中で、直島がふと学園側を見る。


映像越し。


それだけなのに。


九州は一瞬、目が合った気がした。


「……!」


ドキッ、と胸が跳ねる。


だが次の瞬間、映像は通常監視画面へ戻った。


ホール内も徐々に日常の空気へ戻っていく。


整備士たちは作業へ戻り、島娘たちも談笑を始める。


だが九州だけはまだ海を見つめていた。


夕焼けの海。


そこには、直島が駆け抜けた白波だけが残っている。


西表島がそんな九州を見て笑う。


「九州ちゃん、完全に火ついた顔してる」


「え?」


「今、“頑張るぞー!”って顔だった!」


「そ、そんな顔してた!?」


「してたしてた♪」


九州は少し恥ずかしそうに笑う。


だけど否定はしなかった。


憧れた。


あの速さに。


あの強さに。


あの海を駆ける姿に。


潮風が吹き抜ける。


九州は夕焼けの海を見ながら、小さく呟いた。


「……私も、あんな島娘になりたい」

ここまで読んでくれてありがとうございます。

次回もお楽しみに

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