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島娘!!〜波間を駆ける少女たち〜  作者: れんP


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第九話 初めての遠征海域



ここは《島海学園》。


世界を覆う海の上に存在する、島娘たちの拠点。


今日も半水没した校舎には潮風が吹き抜けていた。


早朝。


まだ空が薄青い時間。


島海学園の一階ドックには、多くの島娘たちが集まっていた。


巨大水門。


補給クレーン。


整備艇。


そして海へ続く出撃路。


九州は少し緊張した様子で周囲を見回していた。


「いよいよ遠征訓練……………………」


昨日からずっとそわそわしていた。


実際に学園外の海へ出る。


授業とはいえ、本格的な海域訓練だ。


西表島が後ろからひょこっと顔を出す。


「九州ちゃん緊張してる?」


「う、うん…………………ちょっとだけ」


「大丈夫大丈夫!」


西表島は猫仮面を指でくるくる回した。


「訓練海域だし、先生も先輩もいるから!!ね!」


佐渡島も小さく頷く。


「危なくなったらすぐ撤退するから…………」


「そっか……」


少しだけ安心する。


その時。


ゴォン――。


出撃準備を知らせる鐘が鳴った。


前方へ先生が現れる。


濃紺の制服。


鋭い目。


その姿に周囲が静かになった。


「本日の授業は遠征訓練だ」


先生の声がドックへ響く。


「目的は海域移動、潮流維持、索敵訓練。実戦を想定して行う」


大型モニターへ海図が映し出される。


島海学園周辺海域。


比較的安全区域。


そして訓練ルート。


「マリンモンスター反応は少ないが、ゼロではない」


九州はごくりと唾を飲む。


「遭遇時は私の指示に従え。勝手な行動は禁止だ」


みんな「はい!」


先生は全員を見回した。


「では――出撃」


その瞬間。


島娘たちが一斉に海へ飛び出した。


バシャァァッ!!


白い波が広がる。


九州も慌てて水面へ飛び込んだ。


冷たい海。


だが身体は沈まない。


足元へ潮流が集まる。


「行くよ……!」


水面を蹴る。


身体が滑る。


加速。


島海学園が背後へ遠ざかっていく。


「わぁっ……!」


広い海だった。


見渡す限りの青。


遠くには沈んだ都市の残骸。


海面から突き出たビル群。


壊れた橋。


世界が変わった痕跡。


西表島が横を滑走する。


「九州ちゃん速くなってるー!」


「ほんと!?」


「うんうん!」


九州は少し嬉しくなる。


以前より自然に走れていた。


水の流れを感じられる。


海と一緒に進んでいる感覚。


先生が前方から声を飛ばす。


「隊列維持!」


みんなが速度を合わせる。


島娘たちは基本的に集団で動く。


単独行動は危険なのだ。


九州も必死についていく。


やがて学園からかなり離れた。


周囲は静かな海。


波音だけが響いている。


「ここから索敵訓練を行う」


先生が停止する。


みんなも水面へ止まった。


「島娘は海流や水圧変化を感知できる。意識を集中しろ」


九州は目を閉じる。


海の音。


波。


潮流。


遠くの揺れ。


最初は何もわからない。


だが。


「……あ」


少しだけ違和感を感じた。


右方向。


何かが動いた気配。


「先生!」


九州が声を上げる。


先生が視線を向けた。


「右方向です!なにか……!」


その瞬間。


バシャァッ!!


海中から魚型マリンモンスターが飛び出した。


「きゃっ!?」


九州が驚く。


だが先生は冷静だった。


「小型一体。落ち着け」


魚型マリンモンスターが突進してくる。


赤い目。


鋭い牙。


九州の心臓が跳ねた。


怖い。


だけど。


逃げたくない。


先生が叫ぶ。


「迎撃!」


その瞬間、西表島が飛び出した。


「いっくよー!」


水流加速。


小柄な身体が一気に加速する。


魚型が噛みつこうとした瞬間。


西表島が水面を蹴った。


「にゃっ!」


横方向へ高速回転。


そのまま潮流蹴りを叩き込む。


ドォンッ!!


魚型が吹き飛ぶ。


「すご……!」


九州が目を見開く。


佐渡島も続く。


静かに波を操り、水流を糸のように伸ばす。


ズバッ!


魚型の動きが止まった。


先生が最後に潮流弾を放つ。


魚型は完全に沈黙した。


海が静かになる。


九州は少し息を切らしていた。


「はぁ……」


初めて近くで見るマリンモンスター。


映像とは全然違う。


怖かった。


だけど。


「九州ちゃん!」


西表島が笑う。


「ちゃんと感知できてたじゃん!」


「え?」


「最初に気づいたの九州ちゃんだよ!」


九州は少し驚く。


先生も頷いた。


「悪くない感知能力だ」


「ほ、本当ですか!?」


「慢心はするな」


「はい!」


だが嬉しかった。


少しだけ、自信が持てた気がした。


その時だった。


ゴゴゴゴ……。


海面が揺れた。


「……?」


九州が顔を上げる。


波が変わる。


潮流が乱れる。


先生の表情が変わった。


「全員、警戒」


空気が一瞬で張り詰める。


次の瞬間。


ブォォォォォン――!!


警報音。


全員の端末が赤く点滅した。


《高エネルギー反応検出》


《海域深度急変》


《超大型反応接近》


九州の顔が青ざめる。


「ちょ、超大型……?」


海面が盛り上がる。


巨大な影。


深海の闇のような黒。


そして――。


ズモォォォォンッ!!!


海を割って、“それ”が現れた。

ここまで読んでくれてありがとうございます。

次回もお楽しみに

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