第六話 潮流授業と新しい友達
ここは《島海学園》。
世界中の海を漂う人々を守るため、島娘たちが集う海上拠点。
今日も半水没した校舎には波音が響いていた。
窓の外では青い海が揺れている。
教室中央にはホログラム海図。
そして前方では先生が電子端末を操作していた。
「島娘にとって海を知ることは生存に直結する」
先生の声が教室へ響く。
「マリンモンスターとの戦闘では地形、潮流、海域深度、そのすべてが命を左右する」
海図が切り替わる。
赤い危険区域。
沈没都市。
深海亀裂。
九州は真剣な顔で画面を見つめていた。
「現在、この周辺海域は比較的安全だ。だが絶対安全な海など存在しない」
先生が海図を拡大する。
「特に注意すべきは“潮境海域”」
「ちょうきょう……?」
九州が小さく呟く。
先生が頷いた。
「潮流がぶつかり合う危険海域だ。マリンモンスターは強い潮流変化に集まりやすい」
映像が変化する。
荒れ狂う海。
巨大な渦。
その中を泳ぐ異形の影。
九州は息を呑んだ。
「うわぁ……」
「潮境海域では水上機動も不安定になる。未熟な島娘なら簡単に流される」
教室内の空気が少し引き締まる。
だが前列の島娘が元気よく手を上げた。
「先生ー!でも力押しで突破できる子もいるよねー?」
「一部だけだ」
教室に笑いが起こる。
九州は周囲を見回した。
みんな真剣なのに、どこか明るい。
それが少し不思議だった。
先生は再び端末を操作する。
今度はマリンモンスターの映像が表示された。
巨大なクラゲ型。
甲殻類型。
魚類型。
どれも異様な姿をしている。
「マリンモンスターは深海由来の怪物だ。未だ詳細は不明」
「不明なんだ……」
九州が呟く。
「わかっているのは、人類へ強い攻撃性を持つこと。そして通常兵器への耐性が高いことだ」
映像が切り替わる。
戦艦の砲撃。
爆発。
それでも進み続ける怪物。
「そのため現在の対抗戦力は島娘が中心となっている」
九州は自分の手を見る。
まだ実感はない。
だが自分も、その戦力の一人なのだ。
授業はさらに続く。
潮流制御。
緊急避難。
遠征時の基本行動。
九州は必死にメモを取っていた。
「む、難しい……」
「そこ、あとでノート見せてあげよっか?」
突然横から声がした。
「へ?」
振り向く。
そこには猫の仮面をつけた少女がいた。
机へ身を乗り出し、にこにこ笑っている。
「ねぇねぇ、私は西表島!お話ししよ〜♪」
「えっ、あっ」
九州が少し慌てる。
すると隣席から別の少女が控えめに声を出した。
おけさ笠を被った少女だった。
「イリエちゃん、急に話しかけたら困るよぅ......」
九州は慌てて首を振る。
「ううん!大丈夫だよ、」
すると猫仮面の少女――西表島が嬉しそうに笑った。
「ほんと!?やったー♪」
笠の少女も小さく会釈する。
「あ、私は佐渡島......だよ、」
「よろしくお願いします!」
九州が笑顔で返すと、佐渡島は少し安心したように笑った。
西表島はぐいっと顔を近づける。
「九州ちゃんって元気だよねー!」
「そ、そうかな?」
「うんうん!見てて楽しい!」
「えへへ……」
佐渡島が小さく頷く。
「イリエちゃん、元気な子好きだから……」
「だって学園って元気なほうが楽しいじゃん!」
西表島は猫仮面を少し上げながら笑った。
「それに新人来るの久しぶりだし!」
「そうなんだ」
「最近は配属少ないんだよねぇ」
その言葉に少しだけ空気が静かになる。
島娘は貴重な存在。
だからこそ、一人一人が大切だった。
すると先生が黒板を軽く叩いた。
「そこ、私語はほどほどに」
「はーい」
西表島は全く反省していない声で返事する。
教室に小さな笑いが広がった。
授業は後半へ入る。
今度は実践映像だった。
島娘たちの戦闘記録。
高速滑走。
潮流斬撃。
巨大波による制圧。
九州の目が輝く。
「すごい……!」
特に目を引いたのは、一人の白髪の島娘だった。
巨大な大剣。
圧倒的な水上機動。
そして一撃で大型マリンモンスターを斬り裂いていた。
「この人……」
「あぁ、それ直島先輩だよ」
西表島が小声で教える。
「すっごく強いんだー!」
「へぇぇ……」
九州は映像を見つめる。
どこか無表情。
だけど、海を駆ける姿はとても綺麗だった。
「ちょっと怖いけどねぇ」
西表島が苦笑する。
「でも優しいよ?」
佐渡島が小さく言う。
「そうなの?」
「うん……たぶん」
「たぶんなんだ」
九州が思わず笑う。
その時。
キーンコーンカーンコーン――。
授業終了の鐘が響いた。
教室の空気が一気に緩む。
「終わったー!」
「お腹すいた!」
「次なんだっけー?」
先生は電子端末を閉じる。
そして教室全体を見回した。
「そうだおまえ立ち、こんどの授業で遠征訓練するから、鍛えといて」
クラスのみんな
「はーい!」
ここまで読んでくれてありがとうございます。
次回もお楽しみに




