第四十三話 九州の見る未来
ここは《島海学園》。
海に沈んだ世界で、島娘たちが暮らし、人々を守るために戦う海上拠点だ。
五十年前。
世界を沈めた災厄、深海王。
その圧倒的な力の前に、多くの島娘たちが傷付きながらも戦い続けていた。
そして今。
沈んでいった無数の島々の魂が、現代の島娘たちへ力を託した。
光。
優しさ。
願い。
失われた島々の想い。
それら全てが島娘たちの島核へ流れ込んでいく。
だが。
その時。
九州だけは別のものを見ていた。
深海。
さらに深く。
誰も知らない闇。
そこに存在する巨大な黒い繭。
そして。
その中で眠る存在。
ゆっくりと開き始める瞳。
「……まだ、いる……」
九州の顔から血の気が引いていく。
その瞬間。
「九州!」
西表島の声。
ハッと意識が戻る。
「え……?」
「大丈夫~?」
佐渡島も心配そうに覗き込んでいた。
九州は慌てて周囲を見る。
戦場。
深海王。
北四島。
直島。
みんな戦っている。
「あ……」
夢?
幻?
しかし。
胸の奥の不安だけは消えなかった。
その頃。
空中では激戦が続いていた。
キィィィィィ!!
深海王が咆哮する。
無数の触腕。
漆黒の光弾。
津波。
全てが北四島と直島へ襲い掛かる。
「《双界斬》!」
ズバァァァッ!!
北四島の光刀が触腕を切り裂く。
「……はぁっ!」
直島の大剣が光弾を叩き割る。
しかし。
「っ……!」
北四島が膝をつく。
「北四島先輩!」
直島が支える。
北四島は苦笑した。
「ごめん」
「ちょっと疲れちゃった」
肩。
腕。
足。
全身に傷。
双核解放の反動。
限界が近い。
だが。
直島は静かに言った。
「休んで」
「ここからは私もいる」
北四島が少し驚く。
「ふふ」
「頼もしくなったね」
直島は小さく頷く。
「先輩が帰ってきてくれたから」
「私も強くなれた」
北四島の目が優しく細くなる。
「そっか」
「嬉しいな」
その時だった。
「直島先輩!」
九州が駆け寄ってきた。
「?」
「私も戦います!」
西表島。
佐渡島。
屋久島。
奄美大島。
淡路島。
壱岐島。
礼文島。
小豆島。
隠岐島。
与論島。
沖縄本島。
対馬。
種子島。
次々と島娘たちが集まる。
「いつまでも見てるだけじゃない!」
「そうだよぉ!」
「みんなで戦おう!」
「負けない!」
直島は静かにみんなを見る。
そして。
ほんの少し。
笑った。
「うん」
「一緒に」
それだけだった。
しかし。
九州たちは嬉しくなった。
直島が笑った。
いつも無表情な先輩が。
その時。
司令室。
観測員が驚きの声を上げる。
『島核反応が共鳴しています!』
『全員繋がってる!?』
『これは……!』
司令官が目を見開く。
「まさか」
「島海学園全員の島核が一つになろうとしている……?」
ドォォォォォン!!
島娘たちの島核。
その光が空へ昇る。
白。
青。
赤。
緑。
金。
様々な色。
そして。
一つの巨大な光の柱となる。
深海王が怯えた。
キィィィィィ!?
初めて。
王が後退する。
「怖がってる?」
九州が驚く。
北四島も目を細めた。
「なるほど」
「そういうことか」
沖縄本島も気付く。
「深海王は……」
対馬も息を呑む。
「島の魂を恐れている」
深海王。
五十年前。
世界を沈めた王。
だが。
島々を滅ぼし尽くすことはできなかった。
魂。
願い。
想い。
それだけは消せなかった。
そして。
その想いが。
今。
島娘たちの中にある。
「みんな!」
九州が叫ぶ。
「行こう!」
「うん!」
「やるよぉ!」
「負けない!」
島娘たちが飛び出す。
その姿を見て。
北四島は嬉しそうに笑った。
「いい後輩たちだね」
直島も小さく頷く。
「うん」
「自慢」
そして。
深海王。
その巨大な身体。
胸の中央。
そこに。
赤黒い巨大な結晶。
核。
それが露出していた。
「見えた!」
沖縄本島が叫ぶ。
「核だ!」
「そこを壊せば!」
戦場に希望が生まれる。
しかし。
次の瞬間。
九州の顔が凍り付いた。
「だめ!」
突然の叫び。
全員が振り向く。
九州の瞳。
そこには恐怖が浮かんでいた。
「壊しちゃだめ!」
「え?」
西表島が目を丸くする。
佐渡島も驚く。
九州は震えていた。
さっき見た。
深海の底。
巨大な繭。
そして。
その繭と。
今、目の前にある核。
二つは。
繋がっていた。
「その核を壊したら……」
九州の声が震える。
「もっと恐ろしいものが目覚める!」
その言葉と同時に。
深海王の核。
赤黒い結晶の奥。
そこから。
何かの瞳が。
ゆっくりと。
こちらを見返していた。
ここまで読んでくれてありがとうございます。
次回もお楽しみに




