第四十一話 深海の王
ここは《島海学園》。
海に沈んだ世界で、島娘たちが暮らし、人々を守るために戦う海上拠点だ。
島海学園防衛戦。
絶望の中へ現れた伝説の島娘、北四島。
双核解放によって圧倒的な力を見せた彼女によって、戦場には再び希望が戻り始めていた。
しかし。
それは束の間のことだった。
司令室。
観測員の顔色が変わる。
『深海に超高エネルギー反応!』
『反応拡大!』
『まだ上昇しています!』
司令官の表情が険しくなる。
「やはりいたか……」
戦場。
ゴゴゴゴゴ……
海そのものが揺れていた。
変異超大型の下。
さらに深い海底。
そこから何かが浮上してくる。
「なんだ……?」
九州が呟く。
西表島も佐渡島も海を見つめる。
そして。
ゆっくりと。
巨大な瞳が開いた。
それだけで空気が凍り付く。
「う……」
九州の身体が震える。
本能が警鐘を鳴らす。
危険。
今までの敵とは違う。
生物として格が違う。
ドォォォォォン!!
海面が爆発した。
巨大な水柱。
そして。
姿を現す。
黒い巨体。
全身を覆う紺色の結晶。
十本を超える触腕。
頭部には王冠のような角。
そして。
二つの赤い瞳。
変異超大型ですら子供のように見える。
圧倒的な巨体。
「大き……」
西表島が言葉を失う。
「そんな……」
佐渡島も青ざめる。
司令室。
観測員が震える。
『全長……測定不能!』
『島海学園全域を超えています!』
『分類不能!!』
誰もが絶句する。
そして。
その怪物が。
キィィィィィィィ……
静かな鳴き声を上げた。
次の瞬間。
変異超大型。
それが。
まるで家臣のように頭を下げた。
戦場が静まり返る。
「え?」
九州は目を見開く。
沖縄本島も。
対馬も。
種子島も。
直島でさえ息を呑んだ。
変異超大型。
あれほどの怪物。
それですら。
王ではなかった。
「冗談でしょ……」
沖縄本島が呟く。
その時。
北四島が小さく笑った。
「なるほど」
「ようやく出てきたんだね」
九州は驚く。
「あの人……知ってる?」
北四島は空中に浮かびながら巨大な怪物を見る。
「五十年前」
「世界を沈めた存在」
その言葉に。
司令官が目を見開いた。
「まさか……」
北四島は静かに告げる。
「深海王」
「マリンモンスターの始祖」
「全ての元凶」
戦場の空気が凍る。
五十年前。
世界を沈めた災厄。
伝説。
いや。
悪夢。
それが目の前にいる。
その瞬間。
深海王が視線を向ける。
ギロリ。
赤い瞳。
そして。
キィィィィィィィ!!
咆哮。
世界が揺れる。
空の雲が吹き飛ぶ。
海が荒れ狂う。
大量のマリンモンスターたちが歓喜するように叫び始めた。
キシャァァ!!
ギギィィ!!
戦場全体が震える。
「まずい!」
対馬が叫ぶ。
「来る!」
深海王の巨大な触腕。
それが持ち上がる。
そして。
振り下ろされる。
ドゴォォォォォォォン!!
巨大な津波。
いや。
海そのものが壁になった。
「うそ!」
九州が叫ぶ。
高さ数百メートル。
学園を飲み込む大津波。
誰も止められない。
しかし。
「やれやれ」
北四島がため息をついた。
「大人しく寝てればよかったのに」
二本の光刀。
六枚の羽。
双核解放。
そして。
彼女の背後に巨大な光の輪が出現する。
沖縄本島が目を見開く。
「まさか!」
直島も驚く。
「……その技」
北四島は微笑む。
「久しぶりだから上手くいくかな?」
そして。
「《海界絶断》」
光が走る。
ズバァァァァァァァ!!
信じられないことが起きた。
数百メートルの津波。
それが真っ二つに切断された。
海が左右へ割れる。
巨大な水の壁が学園の両脇を通り過ぎていく。
「すごい……」
九州は声を失う。
島娘たち全員が呆然と見つめる。
しかし。
北四島の表情が曇った。
「……硬いなぁ」
九州は気付かなかった。
だが。
直島は見ていた。
北四島の右腕。
そこから血が流れている。
沖縄本島も気付く。
「反動……?」
北四島は笑う。
「うーん」
「やっぱり歳かな」
だが。
その時。
深海王。
その巨大な口がゆっくりと開いた。
中には。
漆黒の太陽のような球体。
司令室。
観測員が悲鳴を上げた。
『エネルギー反応異常上昇!!』
『駄目です!!』
『これが放たれたら島海学園だけじゃありません!!』
『周辺海上都市まで消滅します!!』
全員の顔色が変わる。
そして。
北四島でさえ。
初めて真剣な表情になった。
「……まずいね」
さらに。
彼女の隣へ。
静かに一人の少女が立つ。
白い髪。
巨大な大剣。
直島だった。
「一人じゃない」
北四島が少し驚く。
直島は静かに言う。
「私も戦う」
「だから」
「先輩」
「一緒に倒そう」
その言葉に。
北四島は優しく笑った。
「うん」
「頼もしい後輩だ」
そして。
最強だった先代。
最強となった現代。
二人の島娘が。
真の王へ向かって飛び出した。
ここまで読んでくれてありがとうございます。
次回もお楽しみに




