第三十七話 最強の島娘
ここは《島海学園》。
海に沈んだ世界で、島娘たちが暮らし、人々を守るために戦う海上拠点だ。
島海学園防衛戦。
戦いはさらに激しさを増していた。
超大型マリンモンスター。
群れを統べる王。
そしてその咆哮によって復活するマリンモンスターたち。
絶望的な能力だった。
司令室も騒然としていた。
『あり得ない……』
『倒した敵がまた立ち上がるなんて……』
『このままでは消耗戦になります!』
観測員たちの顔には焦りが浮かんでいた。
司令官は険しい顔のまま海図を見つめる。
そして。
「……やはりあれを倒すしかないか」
静かに呟いた。
その頃。
戦場ではさらに混乱が広がっていた。
「きゃっ!」
島娘の一人が吹き飛ばされる。
その前へ飛び込んだのは屋久島だった。
「下がれ!」
巨大な一撃。
大型マリンモンスターが海へ沈む。
しかし。
次の瞬間。
黒い結晶が集まり始める。
再生。
復活。
再び立ち上がる。
「ちっ……!」
屋久島が顔を歪める。
終わらない。
何体倒しても終わらない。
まさに悪夢だった。
「九州!」
西表島の声。
九州も我に返る。
目の前には中型マリンモンスター。
「はぁっ!」
武器を振るう。
撃破。
だが。
「また!?」
先ほど倒した個体が立ち上がる。
佐渡島も顔を青くしていた。
「そんな……」
疲労が溜まる。
恐怖もある。
それでも戦うしかない。
その時だった。
ドォォォォォン!!
戦場全体を揺らす衝撃。
全員が振り向く。
最前線。
そこにいたのは。
直島だった。
巨大な大剣。
白い髪。
無表情。
そして。
その周囲。
大型マリンモンスター十数体が一撃で吹き飛んでいた。
「直島先輩……!」
九州は思わず声を上げる。
直島は一人で進んでいた。
群れの中へ。
まるで恐れを知らないかのように。
「危険だ!」
沖縄本島が叫ぶ。
しかし。
直島は止まらない。
「倒す」
短い言葉。
その瞳は超大型を見据えていた。
バシャァァァッ!!
加速。
大型を斬る。
中型を吹き飛ばす。
小型を薙ぎ払う。
誰も追い付けない。
圧倒的。
まさに最強。
「すごい……」
九州だけではない。
島娘たち全員が見ていた。
憧れ。
希望。
島海学園最強の島娘。
直島。
そして。
直島の進路を塞ぐように。
超大型マリンモンスターが動いた。
赤い瞳。
黒い結晶。
巨大な腕が振り下ろされる。
ゴォォォォッ!!
海面そのものが吹き飛ぶ。
だが。
直島は避けた。
「……遅い」
一瞬だった。
大剣が閃く。
ズバァァァァッ!!
超大型の腕。
その一部が切り裂かれる。
黒い血が噴き出した。
戦場が静まり返る。
「傷を……」
「つけた……?」
誰も信じられなかった。
今まで誰も有効打を与えられなかった怪物。
その巨体を。
直島が斬った。
『直島が押してるぞ!』
『いける!』
希望が生まれる。
しかし。
次の瞬間だった。
キシャァァァァァァァァ!!
超大型が咆哮する。
そして。
全身の黒い結晶が赤く輝いた。
「!」
直島の表情が初めて変わる。
危険を察知した。
だが。
遅かった。
ドゴォォォォォン!!
超大型の尾が海面を薙ぎ払う。
音速。
いや。
それ以上。
直島は大剣で防御する。
しかし。
「っ……!」
初めて。
直島が吹き飛ばされた。
「直島先輩!!」
九州が叫ぶ。
海面を転がる。
何十メートルも。
やがて停止する。
動かない。
「うそ……」
西表島の顔が青ざめる。
沖縄本島も目を見開いていた。
対馬も。
種子島も。
誰もが衝撃を受ける。
最強。
負けない存在。
その直島が。
吹き飛ばされた。
超大型はゆっくりと前進する。
まるで勝利を確信した王のように。
そして。
その巨大な口が開く。
漆黒の光。
再び。
「あれはまずい!」
沖縄本島が叫ぶ。
だが間に合わない。
もし放たれれば。
前線は壊滅する。
島海学園にも直撃する。
誰もが絶望した。
その瞬間。
海面を叩く音。
バシャッ。
ゆっくり。
一人の少女が立ち上がった。
白い髪。
巨大な大剣。
直島だった。
額から血が流れている。
制服も破れていた。
それでも。
倒れていなかった。
「まだ」
静かな声。
「終わってない」
大剣を握る。
立ち上がる。
その背中を見て。
九州の胸が熱くなる。
西表島も。
佐渡島も。
そして島娘たち全員が。
恐怖より先に。
勇気を思い出していた。
直島は超大型を見上げる。
赤い瞳。
そして。
初めて。
直島の島核が輝き始めた。
眩い光。
沖縄本島が目を見開く。
「まさか……」
対馬も驚愕する。
「直島……お前……!」
種子島が息を呑む。
司令室でも観測員たちが騒ぎ始めた。
『高エネルギー反応!』
『直島の島核出力急上昇!』
司令官が立ち上がる。
「ついに……」
そして。
誰も見たことのない光が。
夜の海を照らし始めていた。
ここまで読んでくれてありがとうございます。
次回もお楽しみに




