第三十五話 開戦
ここは《島海学園》。
海に沈んだ世界で、島娘たちが暮らし、人々を守るために戦う海上拠点だ。
ついに始まる。
島海学園防衛戦。
夜の海。
静寂はすでに消えていた。
警報が鳴り続けている。
赤い警告灯が学園全体を照らしていた。
海上都市側でも避難誘導が進んでいる。
一般人を乗せた船が次々と安全海域へ向かっていた。
その頃。
学園正面海域。
無数の島娘たちが配置についていた。
沖縄本島。
対馬。
種子島。
奄美大島。
屋久島。
淡路島。
そして直島。
最前線には精鋭たちが並んでいる。
その後方。
九州たち新人組も配置についていた。
九州は深く息を吐く。
手のひらに汗が滲んでいた。
隣には西表島。
そして佐渡島。
三人とも戦闘服姿だった。
「ついにだね……」
九州が呟く。
「うん……」
佐渡島の声も少し震えていた。
だが西表島だけは。
「やるぞー!」
と拳を突き上げていた。
緊張していないわけではない。
それでも仲間を元気付けようとしているのだろう。
九州は少しだけ笑った。
その時。
司令室から通信が入る。
『全戦闘員へ』
司令官の声だった。
全員が耳を傾ける。
『敵群との接触まで三分』
空気が張り詰める。
海風が吹く。
波が揺れる。
そして。
遠くの闇の中。
赤い光が現れた。
一つ。
二つ。
十。
百。
千。
無数。
マリンモンスターの目だった。
「来た……」
誰かが呟く。
九州も息を呑む。
海を埋め尽くしている。
本当に軍勢だった。
小型。
中型。
大型。
数え切れない。
そしてその奥。
巨大な山のような影。
超大型マリンモンスター。
黒い結晶に覆われた怪物がゆっくりと近付いていた。
その姿だけで圧迫感がある。
以前より明らかに大きい。
成長しているのだ。
『総員戦闘準備』
通信が続く。
島娘たちが武器を構える。
槍。
刀。
弓。
大剣。
様々な武器が月明かりを反射した。
そして。
『戦闘開始』
その瞬間だった。
ドォォォォォン!!
海上砲台が火を吹く。
島海学園が保有する固定砲台群。
砲弾が夜空を裂いた。
直後。
敵群の中で爆発が起こる。
大量の水柱。
吹き飛ぶ小型マリンモンスター。
しかし。
数が多すぎた。
『第一波接近!』
通信が響く。
「行くぞ!」
沖縄本島が飛び出した。
バシャァァッ!!
海面を裂く。
その速度は圧倒的だった。
対馬も続く。
種子島も。
奄美大島も。
前衛部隊が一斉に突撃する。
そして。
激突。
ギャァァァァッ!!
マリンモンスターの叫び。
武器が閃く。
海が赤く染まる。
戦いが始まった。
沖縄本島の一撃が大型を真っ二つにする。
対馬の槍が敵を貫く。
種子島の攻撃が群れを吹き飛ばす。
島娘たちは強かった。
しかし。
敵も多い。
倒しても倒しても押し寄せてくる。
まるで黒い津波だった。
『中型接近!』
後方へ通信が飛ぶ。
九州たちの区域にも敵が到達した。
海面から飛び出す異形。
鋭い牙。
巨大な爪。
「来る!」
九州が叫ぶ。
マリンモンスターが突進してくる。
怖い。
身体が震える。
だが。
逃げない。
九州は武器を握り締める。
そして踏み込んだ。
「やぁぁぁっ!」
一撃。
敵へ叩き込む。
衝撃。
マリンモンスターが吹き飛んだ。
初めての実戦だった。
訓練とは違う。
だが倒せた。
「九州!」
西表島が叫ぶ。
横から別の敵が飛び出した。
九州が反応するより早い。
ザシュッ!!
西表島が斬り裂く。
敵が消滅した。
「気を付けて!」
「ありがとう!」
今度は佐渡島の前へ敵が現れる。
佐渡島が震える手を前へ出した。
「お願い……!」
島核が輝く。
そして。
周囲の鉄片や瓦礫が黄金へ変化した。
大量の黄金塊。
それが敵へ激突する。
ドォン!
中型が吹き飛ぶ。
「や、やった……!」
佐渡島が目を見開く。
九州も笑う。
「すごい!」
戦える。
自分たちも。
そう思った瞬間だった。
ドォォォォォン!!
遠くで巨大な爆発が起きた。
全員が顔を上げる。
最前線。
そこにいたのは直島だった。
巨大な大剣を振り下ろしている。
その周囲には大型マリンモンスターの死骸が散乱していた。
一人で何十体も倒している。
圧倒的だった。
「すごい……」
九州は思わず見入る。
憧れの先輩。
やはり別格だった。
だが。
その時。
司令室から悲鳴のような報告が飛ぶ。
『超大型反応上昇!』
戦場がざわつく。
遠くの海。
黒い巨体が止まった。
赤い瞳が輝く。
そして。
超大型マリンモンスターがゆっくりと口を開いた。
不気味な光が集まっていく。
直島が目を見開く。
沖縄本島も叫ぶ。
「全員離れろ!!」
次の瞬間。
キシャァァァァァァァァァァァァッ!!
咆哮と共に放たれた漆黒の光線が海を薙ぎ払った。
海面が裂ける。
巨大な水柱が天へ届く。
爆風が戦場を襲う。
島娘たちが吹き飛ばされる。
九州も衝撃で倒れ込んだ。
「きゃぁっ!」
耳が痛い。
海が揺れる。
空気が震える。
誰もが理解した。
あれは今までの敵ではない。
災害そのものだ。
そして超大型は再び咆哮する。
その声に呼応するように。
海の奥からさらに新たな群れが姿を現した。
誰も予想していなかった。
敵はまだ全力ではなかったのである。
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次回もお楽しみに




