第二十六話 島海学園料理大会
ここは《島海学園》。
海に沈んだ世界で、島娘たちが暮らし、人々を守るために戦う海上拠点。
文化祭も終わり、大掃除も終わり、学園には再び穏やかな日々が流れていた。
ある日の昼休み。
九州たちは食堂で昼食を食べていた。
「おいしい~」
西表島が魚の煮付けを頬張る。
佐渡島は静かにご飯を食べていた。
九州も穏やかな時間を楽しんでいる。
その時だった。
食堂中央の放送スピーカーから音が流れる。
『全島娘へ連絡』
食堂が静かになる。
『本日の放課後、食堂主催による料理大会を開催する』
一瞬の沈黙。
そして。
「料理大会!?」
あちこちから声が上がる。
九州も驚いた。
『優勝者には特製海鮮パフェ無料券十枚を贈呈』
その瞬間。
西表島が立ち上がった。
「出る!!」
「早い!?」
九州が驚く。
海鮮パフェ十枚に釣られていた。
放課後。
食堂特設会場。
予想以上に多くの島娘が集まっていた。
長机が並び、調理器具が準備されている。
司会は食堂のおばちゃんだった。
「今日のテーマは魚料理!」
歓声が上がる。
島海学園らしい内容だった。
「では参加者紹介!」
まず西表島。
「優勝するよー!」
次に淡路島。
「任せて!」
対馬。
「料理は得意だ!」
種子島。
「ほどほどに頑張るよ」
奄美大島。
「楽しもうかな」
そして。
九州。
「え、えっと……頑張ります!」
拍手が起きる。
佐渡島は参加しないらしい。
観客席で応援担当だった。
「がんばって……」
小さく手を振る。
そして大会開始。
「スタート!」
一斉に調理が始まる。
包丁の音。
焼く音。
煮る音。
食堂は一気に賑やかになった。
九州は魚の照り焼きを作ることにした。
実家で少し料理をした経験がある。
丁寧に下処理を行う。
味付けも慎重。
失敗はしたくない。
隣を見る。
淡路島は勢いで料理していた。
「えーい!」
「雑じゃない!?」
九州が驚く。
さらに隣。
西表島。
「ふふふ」
なぜか笑っている。
鍋の中から紫色の煙が出ていた。
「何作ってるの!?」
「秘密!」
全然秘密にした方がいい状態だった。
対馬は意外にも上手だった。
包丁さばきも綺麗。
手際も良い。
「すごい……」
九州が感心する。
対馬は少し照れた。
「遠征先で自炊してるからな」
なるほど。
経験者だった。
種子島は淡々と料理している。
無駄がない。
見ているだけで上手だと分かった。
そして奄美大島。
「んー」
のんびりしている。
しかし完成品は異様に美味しそうだった。
「なんで!?」
九州は驚く。
料理上手が多かった。
一時間後。
ついに審査の時間。
完成した料理が並ぶ。
どれも美味しそうだった。
ただし一つを除いて。
「……」
「……」
「……」
西表島の料理である。
見た目が危険だった。
黒い。
煙が出ている。
少し動いている気がする。
「これは?」
審査員のおばちゃんが聞く。
「魚スペシャル!」
「何が入ってるの?」
「色々!」
絶対危険だった。
まずは九州の照り焼き。
審査員たちが食べる。
「おいしい!」
「丁寧だね」
九州はほっとした。
次に対馬。
「これは上手い!」
高評価。
種子島。
「完成度が高い」
さらに高評価。
奄美大島。
「うまっ!」
会場がざわつく。
かなりの強敵だった。
そして。
問題の西表島。
全員が見守る。
審査員が一口。
数秒後。
「ごほっ!?」
吹き出した。
「だめだこれ!」
会場は大爆笑だった。
西表島本人だけ納得していない。
「なんでー!?」
結果発表。
第三位。
九州。
「やった!」
思わず笑顔になる。
第二位。
対馬。
「惜しいな」
そして。
優勝。
奄美大島。
大きな拍手が響く。
奄美大島は少し驚いた顔をしていた。
「まさか勝つとは」
本人も予想外だったらしい。
そして。
特別賞。
「西表島」
「やったー!」
喜ぶ。
『勇気賞』
会場が再び笑いに包まれた。
「勇気賞って何!?」
九州も笑う。
夕方。
大会は無事終了した。
みんなで残った料理を食べる。
勝敗はあった。
でも楽しい時間だった。
「次は負けない!」
西表島が言う。
「まず料理を覚えよう?」
九州が突っ込む。
笑い声が響く。
窓の外では夕日が海を赤く染めていた。
平和な日常。
かけがえのない時間。
しかしその頃。
島海学園の司令室では緊張が高まっていた。
観測班からの報告書が次々と届いている。
《大型マリンモンスター群確認》
《進路不明》
《超大型反応継続》
司令官は静かに海図を見つめる。
嵐はまだ来ない。
だが確実に近付いていた。
そして九州たちは、その事実をまだ知らないままだった。
ここまで読んでくれてありがとうございます。
次回もお楽しみに




