第二十四話 島海学園かくれんぼ大会
ここは《島海学園》。
海に沈んだ世界で、島娘たちが暮らし、人々を守るために戦う海上拠点。
島海交流祭は大成功で終わった。
来場者たちも帰り、学園には再び穏やかな日常が戻ってきている。
文化祭の片付けもほとんど終わったある日の午後。
九州たちは教室でのんびりしていた。
「ふわぁ……」
九州が大きな欠伸をする。
窓の外では海が静かに揺れていた。
平和だった。
すると。
ガラッ!
教室の扉が勢いよく開く。
「みんなー!!」
西表島だった。
嫌な予感がする。
九州は即座にそう思った。
「どうしたの?」
「かくれんぼしよう!」
予想通りだった。
「なんで急に!?」
「暇だから!」
元気よく言い切った。
佐渡島が苦笑する。
「それ理由になるのかな……」
しかし西表島はもう止まらない。
「島海学園全部使ってやるんだよ!」
「広すぎない!?」
九州が驚く。
島海学園は巨大だ。
旧校舎。
訓練施設。
食堂。
図書室。
屋上。
水路。
倉庫。
半分沈んだ区域。
本気で隠れたら見つからない。
だが。
「面白そう」
誰かが言った。
振り向く。
淡路島だった。
「やる!」
「賛成!」
対馬も乗ってくる。
気付けばどんどん人数が増えていた。
屋久島。
種子島。
奄美大島。
さらに他の島娘たちまで集まる。
いつの間にか大規模イベントになっていた。
数十分後。
学園中央ホール。
参加者は二十人以上。
先生が頭を抱えている。
「なんでこうなった……」
誰も分からない。
ただ一つ確かなのは。
西表島が原因ということだけだった。
ルール説明が始まる。
鬼は一人。
制限時間は一時間。
見つかった人は中央ホールへ戻る。
最後まで見つからなかった人が勝ち。
「鬼は誰?」
西表島が箱を持ってくる。
くじ引きだった。
全員が紙を引く。
九州も引く。
開く。
白紙。
セーフ。
周囲でも安堵の声が聞こえる。
そして。
「……」
静かになった。
みんなが一人の少女を見る。
白紙ではなかった。
鬼。
その文字。
持っていたのは。
直島だった。
「……」
沈黙。
「終わった」
淡路島が言った。
「終わったね」
対馬も頷く。
九州も同意だった。
直島に見つからない自信がない。
直島は無表情だった。
「始める」
その一言でみんな散った。
バシャァッ!!
水路へ飛び込む者。
廊下を走る者。
階段を駆け上がる者。
一斉に消えていく。
九州も慌てて走った。
「どこに隠れよう!?」
悩む。
教室はまずい。
見つかる。
食堂もだめ。
倉庫も怪しい。
「うーん……」
考えた末。
九州は旧図書室へ向かった。
使われなくなった古い施設だ。
本棚がたくさんある。
隠れる場所も多い。
「ここなら!」
本棚の影へ潜り込む。
静か。
波の音だけが聞こえる。
「大丈夫かな……」
その時。
遠くから悲鳴が聞こえた。
「見つかったぁぁぁ!」
淡路島だった。
開始五分。
早すぎる。
さらに。
「なんでいるのー!?」
今度は対馬。
十分後。
「うぅ……」
西表島も捕まった。
早かった。
あまりにも早かった。
九州は震える。
「直島先輩怖い……」
まるで狩人だった。
学園中を移動しながら次々と発見しているらしい。
二十分経過。
三十分経過。
九州はまだ無事だった。
「もしかしていける?」
少し期待する。
だが。
ガタン。
どこかで音がした。
九州の身体が固まる。
足音。
近付いてくる。
ゆっくり。
静かに。
そして。
本棚の向こうから声。
「九州」
「ひゃあっ!?」
見つかった。
終わった。
九州はがっくり肩を落とす。
直島は少しだけ首を傾げた。
「良い場所だった」
「ありがとうございます……」
褒められたのか分からない。
結局。
九州も中央ホール送りになった。
そして残り十分。
まだ見つかっていない者がいた。
屋久島。
奄美大島。
そして佐渡島。
「佐渡ちゃんすごい!」
西表島が驚く。
みんなで待つ。
すると。
放送が流れた。
『残り一分』
最後の追い込みである。
しかし。
結局。
時間切れ。
優勝者は。
佐渡島だった。
「え?」
本人が一番驚いていた。
「どこに隠れてたの!?」
西表島が聞く。
佐渡島は少し恥ずかしそうに答えた。
「旧倉庫の荷物の中……」
みんな沈黙した。
確かに見つからない。
だが。
「苦しくなかった?」
九州が聞く。
「ちょっとだけ……」
苦しかったらしい。
その後。
優勝祝いとして食堂で特別デザートが振る舞われた。
島娘たちは大盛り上がりだった。
笑い声が絶えない。
平和な時間。
楽しい日常。
九州はみんなの顔を見ながら思う。
島海学園へ来てよかった。
最初は不安だった。
知らない場所だった。
でも今は違う。
仲間がいる。
友達がいる。
大切な居場所がある。
窓の外では夕焼けが海を染めていた。
その頃。
学園から遥か遠く。
深海の底。
黒い結晶に覆われた超大型マリンモンスターの周囲には、以前より遥かに多くのマリンモンスターが集結していた。
まるで軍勢。
まるで王国。
そして巨大な怪物は静かに目を開く。
深海が揺れる。
だがその異変を知る者は、まだ誰もいなかった。
ここまで読んでくれてありがとうございます。
次回もお楽しみに




