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島娘!!〜波間を駆ける少女たち〜  作者: れんP


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第十二話 白刃が刻んだ傷跡



ここは《島海学園》。


海に沈んだ世界で、人類と島娘たちが生きるための海上拠点。


だが今、その学園には重い緊張感が漂っていた。


《第一級警戒態勢》


警報灯が赤く点滅している。


格納ドックでは整備士たちが慌ただしく動き回り、武装コンテナが次々と運搬されていた。


外周防壁では島娘たちが待機している。


誰もが知っていた。


あの超大型マリンモンスターは、これまでの敵とは違う。


九州は一階の海上通路から外海を見つめていた。


夜の海。


黒く静かな水面。


だがその奥には、巨大な脅威が潜んでいる。


「……」


怖かった。


本当に。


自分では何もできなかった。


逃げることしか。


その時。


「こんなとこにいたのかい」


振り返る。


イリナだった。


長い髪が潮風に揺れている。


「イリナさん……」


「休まなくていいのかい?」


「……なんか、眠れなくて」


イリナは九州の隣へ立つ。


二人で海を見る。


波音だけが静かに響いていた。


「怖かったかい?」


九州は少し黙る。


そして小さく頷いた。


「……はい」


「そうだろうねぇ」


イリナは笑わなかった。


茶化しもしない。


ただ静かに海を見ている。


「私、何もできなくて……」


九州は拳を握る。


「直島先輩たちみたいに戦えなかった」


「当たり前さ」


「え……?」


「君はまだ来たばかりだよ」


イリナはゆっくり言う。


「最初から戦える子なんていない」


「でも……」


「それでも前を向く。それが島娘だ」


九州は海を見る。


夜の海。


怖い。


だけど。


逃げたくないとも思っていた。


その時だった。


ブォォォォン――!!


突然、学園中へ警報が響く。


《外周海域で高エネルギー反応》


《超大型反応再接近》


九州の身体がびくっと震えた。


イリナの目が鋭くなる。


「来たか……!」


同時に館内放送。


《戦闘員、迎撃準備》


《全戦闘班、出撃》


学園の空気が一瞬で変わった。


島娘たちが一斉に動き出す。


水路を滑走する音。


整備員の叫び声。


武装搬送ドローン。


島海学園全体が戦闘態勢へ移行する。


九州も立ち上がる。


「私も……!」


だがイリナが肩へ手を置いた。


「君は待機」


「でも!」


「今の君じゃ死ぬ」


真っ直ぐな言葉だった。


九州は言い返せない。


悔しかった。


でも、その通りだった。


イリナは少しだけ優しく笑う。


「今は見て学ぶんだ」


そう言い残し、海へ飛び出した。


バシャァッ!!


白い波が広がる。


九州はその背中を見るしかなかった。


大型モニターが起動する。


学園中の人々が集まり始める。


そこに映し出されたのは――荒れ狂う海。


超大型マリンモンスター。


巨大だった。


夜の海を覆う黒い影。


その周囲だけ海が歪んで見える。


「キシャァァァァァァァ!!」


咆哮。


水圧だけで海面が吹き飛ぶ。


だが。


その前へ立つ影があった。


直島。


白髪の島娘。


大剣を背負った少女。


九州は思わず息を呑む。


「直島先輩……」


直島は静かだった。


荒れ狂う海の中で、一人だけ異様に静か。


そして。


次の瞬間。


バシュゥゥゥゥッ!!!


加速。


海面が爆発する。


速い。


前よりさらに速かった。


超大型が触手を振り下ろす。


ズガァァァン!!


海面が砕ける。


だが直島は止まらない。


触手の隙間を駆け抜ける。


波を蹴る。


空中へ跳ぶ。


その姿はまるで白い閃光だった。


「すごい……」


九州の声が漏れる。


イリナたち上級島娘も攻撃を仕掛ける。


巨大潮流砲撃。


水刃。


連携攻撃。


海面が次々と爆発した。


だが超大型は止まらない。


咆哮しながら暴れ続ける。


その時。


直島の周囲の海が静かになった。


「……斬る」


小さな声。


直後。


海が裂けた。


ドォォォォォンッ!!!!


とてつもない衝撃。


直島が一瞬で超大型の懐へ入り込む。


大剣が振り抜かれる。


白い斬光。


次の瞬間。


ズバァァァァァァンッ!!!!


超大型の身体が大きく裂けた。


黒い体液が海へ噴き出す。


「ギシャァァァァァァァァァッ!!!」


絶叫。


海が揺れる。


巨大怪物が苦しむように暴れ始めた。


九州が目を見開く。


「やった……!?」


だが。


超大型は沈まなかった。


裂けた身体を引きずりながら、ゆっくりと後退を始める。


「逃げる気か!」


先生の声。


イリナが追撃しようとする。


だが直島が手を上げた。


「深追い禁止」


「でも!」


「海域が悪い」


直島の視線は暗い深海へ向いていた。


そこは完全な闇。


超大型の本領は深海戦なのだろう。


直島は静かに大剣を下ろす。


「致命傷は入れた」


海中へ沈んでいく巨大な影。


やがて反応が遠ざかっていく。


警報音が少しずつ弱まった。


《超大型反応後退》


《脅威レベル低下》


学園内に安堵の空気が流れる。


九州はモニターを見つめていた。


直島。


あの一撃。


あの強さ。


そして。


「致命傷……」


つまり。


あの怪物はまだ生きている。


夜の海が静かに揺れる。


深海の奥へ消えていく巨大な影。


まるで――また戻ってくると言うように。

ここまで読んでくれてありがとうございます。

次回もお楽しみに

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