1話 ダンジョン最下層1000階にて
ぼんやりと前が視え始める
「あら、起きた?」
声が聞こえる、こんなところに人なんていないはずなのに
「えっと、すいま、、、」
目が合う
どこまでも吸い込まれそうな黒の瞳がこちらを見る
「、っ、ぁ、あ、、、!?」
全身が震える
3対の漆黒の翼
煌めく白銀の髪
そして何より、神様と思ってしまうほど美しい身体
動くことができない、それは蛇に睨まれた蛙の様に
自分がどれだけ矮小な存在かがわかる
それだけ目の前の女性から、あふれ出る魔力、いや魔力よりももっと上の 神力のほうが正しいか
そう思考を巡らせていると
「ちょっとー、私がどうしたのよ、っていうかどうやってここに来たわけ?アンタ落ちてきたわよね」
話しかけられる、声を聴くだけで頭が揺れる
それでも一応、応えないと
回らない口を動かして
「自分はーー」
見知らぬ場所という不安感と恐怖を抱えながら目の前の女性に経緯を話した
「、、、アンタ、人族でしょ、なんで生きてんのよ」
いやそれは自分でも驚いている
「、、、自分でも何が何だか分かってなくて」
事実だ、ラルトの攻撃で落ちてきたことしか覚えてない
というか、聞きたいことがあるんだった
「すいません、自分落ちてくるとき右腕が千切れかけていたと思うんですけど」
目を見やる
そこには一切の傷跡もなく、いつも通りの腕だった
「あーそれね、なんかやばそうだったから、適当に治しといたわよ」
、、、は?今、「適当に治しといた」って言ったかのか?
この世界でそんなことができるのは 聖女様や大神官の上位の人間だけだろう
それを適当にできるのか?
いや、先に感謝を伝えるべきだろう
「ありがとうございます、これでまだ調合できま、、、、す?」
、、、やっべなんも考えずに口から出てしまった
今の時代調合師のことなんて馬鹿にされて、、
「ふーん、調合できるのね」
あれ?意外と普通?
「っと、自己紹介が遅れたわ、私は エリス・カーリーン 元々女神だから今は地上に堕ちて堕女神ってところかしら」
、、、ゑ‘‘
マジすか、女神さまですか
「、、、、、」
声も出ねーわ
いやでも、容姿は女神様みたいに美しいし
「なに、堕天しちゃ悪いの?!」
それはダメだろ
「あ、今アンタ、ダメだろって思ったわね」
何で心読めるんすか
というか、なんで堕天したんだろう
「因みになんで堕天したんですか」
「よく聞いてくれたわ!!そうなのよ!天界で私だけ仲間外れにされたから悪戯しただけよ?!そしたらこの仕打ち!ほんと許せないわ!!」
「悪戯ってなにしたんですか」
「えっとねぇ、確か結婚式呼んでくれなかったから ~天界で一番美しい方へ幸せを願ってます~ って送ったら何か誰が美しいか戦争が始まって、首謀者の私が堕とされたのよ、全く」
それってもしかして
「いつのことですか?」
「人族風にいうとねぇ、2500年前かしら」
大戦線神話時代の時期じゃん!?
「地上への影響とかって、、」
「精霊ちゃんとか神獣ちゃんが起きちゃった、っていうのは聞いたわよ」
あの時代、貴方のせいじゃないですか!!!
「そんなことより、アンタ名前は?」
「あ、遅れました アール・ユーティスです」
「そう、じゃアルね」
「えぇ、はい」
「これからの方針を決めるわよ」
「何があるんですか」
「アル、アンタ戻りたくないの?」
「別に戻っても誰も俺のことなん、て、、」
(まあ良い、行くなら何度も言うが気をつけろよ)
「いえ、戻りたいです」
「よし!じゃあ戻りましょうか」
「そんなすぐに帰れるんですか?」
「え、だって普通に戻ればいいじゃない」
「戻るって、1000階層からですか?」
「そりゃもちろ、ん、え?ちょっとまって、アル、アンタ弱すぎない?!」
「なんでわかるんですか?」
「神眼使ったからよ」
そんなのがあるんだなぁ
「えぇ、これじゃ999階のヒュドラちゃんも倒せないわよ」
「いや、ヒュドラって最強の毒牙の九頭竜って言われてる神獣ですよね?」
「いやいや、999階のヒュドラちゃんは本来の力の1000分の1に制限されてるわよ」
「それでもですよ」
神獣、まして俺みたいな最弱職業じゃ相手にもならない
「あ、でもあなた調合師でしょ、ここなんていくらでも素材が落ちてるわよ」
「調合できても戦えないですから、、」
「別に戦わなくてもいいじゃない」
「えっ?」
「隠れて通ればいいじゃない」
「でも神獣相手にできますか?」
「うーん微妙ね」
「えぇ」
やっぱり戻れないのか
そう思っていたが
「私が鍛えてあげるわ」
「鍛えるってどうやって?」
「私が相手してあげる」
「ボコボコにされる気しかしないんですけど」
「大丈夫よ、ポーションでも飲んで回復したらいいわ、最悪私が治してあげる☆」
「そういう問題ですか」
「ええ、そういう問題よ」
どうやら堕女神様ことエリスさまが相手してくれるらしい
「それはそれでアル、あなた誰を信仰してるの?」
「誰もしてませんよ」
「あれ、今の人族は神を信仰してるんじゃないの?」
「そもそも調合師なんてハズレの職業を渡してきた人たちを信仰する気はありませんよ」
「そう、だったら尚更いいわね」
「何がですか?」
「アル、私を信仰してみない?」
宗教勧誘のお誘いでした




