0話 プロローグ
「残念だが、、アール・ユーティス、君は調合師だ」
鑑定士の神官に告げられる
その言葉は俺の人生を狂わすのに十分だった
この世界では基本的に十歳頃に 職業鑑定 をすることになる
例をいうなら 剣士 だったり 魔法使い だったり
戦闘系以外だと 商人 とか 鍛冶師 とかかな
そんでその中の一つ 調合師 所謂 ハズレ というやつだ
そもそも調合師というのは 回復薬・魔法薬 を作ることができる唯一の職業である
そこまではいいのだ
問題は、、、いかんせん効果がしょぼいのだ
わざわざ調合師に頼まずとも買ったほうが安い というのも理由でもある
、、、さっき作ることができるのは調合師だけと話したって?
確かにそうだ、そう作ることができるのは調合師だけだ
あくまでも作ることができるのはだが
ご存じの通りこの世界には魔力を持った動物
通称 魔獣・魔物が蔓延っている
そして奴らを倒すとアイテムがドロップする
そのアイテムの中にポーションも入っている
しかも調合師が作るより最弱の魔物、スライムのポーションのほうが効果がいい
しかも強い魔物・魔獣であればあるほど効果が向上する
調合師に依頼が来るのはよっぽど腕が良い調合師か
魔物・魔獣大暴走の際に大量にポーションが必要になった時くらいかな
そんなこんなで調合師の職業をもらってしまった俺は生贄にされている
、、、生贄とは?
それを話すには少し歴史の勉強をすることになる
かつてこの世界は魔物・魔獣で溢れかえり
今はいないが精霊だったり
今は眠っている神獣が闊歩していた
その時代を 大戦線神話時代
そんな人族には過酷な世界で知性のある魔物・魔獣は人族に交渉を掛けた
自分たちがお前たちを守る代わりに対価として自分たちの要求を呑めと
優しいというか温厚な奴らは人族を守り、食事を用意して寝床を用意しろ、ぐらいなんだが
まあ、冷酷といいますかひどい奴らは食事を毎日よこせ
っていうのもあった
で話は戻るけど基本的に街とか村はそういう守り神っていうのかな守り魔がいる
それで例外なく俺の街にもいる
その守り魔は、吸血鬼だ
だから対価として血液を飲ませろ、要求はこれだ
それをするのは奴隷だったり、刑罰だったり
、、、俺みたいなハズレ職業だったりだ
だから俺は今吸血鬼が住んでる家?館に行っている
「すいません、ルナさん遅れました」
ドアを閉めながら湿っぽい廊下を歩く
目指すは不機嫌であろう彼女がいる部屋だ
「入りますよ?」
一応聞いておく、返ってきた応えは
「、、、さっさと来い」
不機嫌さと苛立ちを滲ませた声が聞こえる
「失礼しま、、」
「遅い」
俺の声を遮り吸血鬼こと ルナティア・ランスロット 愛称 ルナさんが勢いよく俺を押し倒す
カプッ
そんな音とともに首元に痛みを感じる
「じっとしてろ、動いたら傷ができる」
チューチューと血を吸うルナさん
そのまま数分が経ち
満足したのか俺から離れるルナさん
「その調子で健康で過ごせ、健康な奴の血は美味いからな」
上機嫌に呟く
「それはよかった」
そうそうルナさんに聞くことがあったんだった
「ルナさん、ルナさん、スライムの核ってありますか」
「あるが、、、何する気じゃ?」
「いや、ちょっとばかし調合に使いたいと思って」
「別にくれてや、、、いや、やらん」
なんでそこで渋るのよ
「ちょっとー、なんでですか」
「無条件でやるほど我は甘くない」
「えー、いいじゃないですか」
「やらんもんはやらん」
「、、ルナさんのケチ、」
そう俺が呟くと
「もう一回言ってみろ、回答によっては、」
「いえ、別に、特に、何も」
「よし、それでいい」
「それで、条件はなんですか」
ルナさんのお願いだ
きっと血をもっと吸わせろとかだろう
しかし、ルナさんの答えは俺の予想を反した
「お前は調合師だろう、調合の様子を見せてくれ」
「そんなのでいいんですか?」
「そうだ、それでよい、文句があるか?」
「いいですけど、、、ちょっと待ってくださいね」
調合といっても準備することが結構ある
1 作るポーションを決める
2 材料を用意
3 釜とか調合台とかの準備
4 作成
基本はこれだが瓶とかも必要になる
「とりあえず、魔力回復のポーション作りますね」
「なんでもいいが、、、作ったポーションはどうしている?」
「別に僕は収納用空間魔法のスキルは持ってますが精々ポーション10本と調合セットがギリギリなので、適当に水やりに使ってます」
「、、、ポーションを水やりに使っているのか?」
「ええ、別に使い道もないですし、売り物にもなりませんし」
「次からは我がそのポーションを買い取る」
「なんでですか?別にいっぱいありますよね?」
「あるにはあるが何かイヤな予感がするだけじゃ」
「怖いこと言わないでくださいよ」
「それより、ポーションはできたのか?」
「はい、効果もしょぼいですけど」
「飲まんとわからんだろう」
「そうですけど、いらないと思いますけどね」
ルナさんがポーションを飲み終わると
「お前、いつもこれを水やりに使っているのか?」
「飲むこともありますけど、おいしくないので植物にあげてます」
「そうか、いやなに思っていたよりも魔力が濃いな」
「そうですか?効果があるのなら売り物にしてみましょうか」
「いやいや、魔力濃度は濃いが効果自体は薄くて使い勝手の悪いものは売り物にはできんだろう」
「、、、そうですか、、、」
「ちと言い過ぎたが、別に気に病むことはない、我が直々に教えてやろう」
「いいんですか!?」
「別に構わん」
「あ、ありがとうございます、もっと頑張りますね!」
「まあ、精進しろ」
やった!これからはルナさんに教われる!
今ならこれも言えるかも
「じゃあ、これから近くのダンジョン行ってきますね!」
「あほか」
ペシッ
「大丈夫ですよ、初級ダンジョンですし」
「ゴブリンも倒せん奴が何をいうか」
「いやでも、スライムは倒せましたよ」
「そのスライムは傷ついていて、疲れていたスライムだろう?」
「い、いいんですよ、倒せたので」
「、、、はあ、まあいいんじゃないか、我はもう知らん」
ぷいっ と拗ねた様子のルナさん
「わかりました、行ってきます」
「気をつけろよ、我はお前の血が飲めなくなるのは困るからな」
「はい、死なないように頑張ります」
「と、いってもお前の様子ぐらいなら見えるがな」
「そうなんですか?」
「侮るなよ、これでも元吸血鬼最強だぞ」
「ソウナンデスネー」
「お前、信じておらんな」
「イエイエソンナコトハ」
「まあ良い、行くなら何度も言うが気をつけろよ」
「分かってますって」
「なら良い、まあ暇つぶしに見ていてやる」
ルナさんとの会話を終わる
何か買おうかなと悩んでいた時
「っは、落ちこぼれがのうのうと歩いてらぁ」
「ぶっ殺しちまうぞあぁ?」「ちょっとルナティア様のお気に入りだからって調子乗んじゃねぇぞ」
うげ、面倒なのに絡まれた
無視してもいいが後々厄介なのでのらりくらり躱そう
「ラルト君ごめん、二人とももごめん」
とりあえず謝ってみたが、、?
「、、、お前、誰が さん を外していいって言った?」
「そうだ、生意気だ!」「敬語を使えよ敬語を」
、、、ミスった、どうにかしないと
「えっと、その、、」
「、、ッち、イラつくな、おいアール」
「は、はい」
「六時の始夜の鐘の時、初級のダンジョンのところに来い」
「わ、わかった、わかりました」
「ッち、イラつく顔しやがって」
「逃げるなよぉ」「楽しみにしてろよぉ」
そう言って帰っていった
なんて迷惑な奴らなんだ全く
でも、逆らえない
アイツは職業が魔法剣士
そのほかの二人も 盾使い と 魔法使い
レアだ
俺の調合師なんて話にならないくらい
しかもアイツはスキル 剣術 をもってるから余計に貴重だ
仕方ない あいつらとの用事が終わってからダンジョンに行くか
そうとなったら、入るだけポーションと調合セットを詰め込んでから行くか
始夜の鐘が鳴るころ、意外にラルト一人だけが来た
「このダンジョンって誰も来ないって知ってるな」
来て早々ラルトが投げかけてくる
「うん」
「、、、お前ごときがいなくなっても誰も困らないな?」
「、、、、、、うん、、、、、、、、」
「そうか、いまイラついてるんだよな」
次の言葉は簡単に予想できた
ラルトの体からにじみ出る 魔力と闘気
「だからさ、死んでくれよ」
「?!」
分かっていてもやはり震える
言葉を言い終わる前に剣で刺そうとしてくる
避けたつもりだったが
「、、ッ痛!」
右肩を掠めた
そう思ったのは間違いだった
右肩より下の感覚が無かった
恐る恐る右肩を見るそれは今にも取れ落ちそうな右腕だった
痛かった、辛かった
それより先に来たのは 恐怖
無我夢中で逃げた
街には逃げられない
残るはダンジョンの中しかない
「予想通りだな」
ラルトが最初から待っていたといわんばかりに片手に集中させた魔力の塊を俺に向けて放った
「じゃあな、せめて来世を楽しめよ」
着弾と同時に地盤が揺れる
そして割れた、その下はずっとずっと暗闇が続く深淵だった
最後に見たのはラルトの心底、腹が立つ、嗤った顔だった
落ちて
落ちて
堕ちて
落下は止まった
背中に衝撃を感じる
全身の骨が悲鳴を上げ、内臓がつぶれそうな痛さ
気を失う、自分でも解った
疲れた
そう瞼を閉じる際、最後に見たのは漆黒に染まった3対の翼と人離れした美貌を持つ女性の顔だった




