7話 9ヵ月後 アラスカ
ナツメです。
今日はセルゲイさん達歩兵隊の皆と、狩りに来ています。
最近はなぜかクマタローがあんまり来なくなったし、
温かくなったからかイルカとかもあんまり取れなくて、
筋肉族の「肉喰いたい!!」が爆発した感じ。
当然私もお肉食べたい!のでお手伝い。
「そっち行ったぞー!」
「角に気をつけろー!」
「任せろ!」
パン、と乾いた音。
皆こんなところで生き延びてきただけあって狩りも上手。
あっという間にカリブーを1匹仕留めちゃった。
私、出る幕無し。
「隊長!やりましたね!」
「まて、まだ安心するには早い! これっぽっちじゃ満足できないだろ! せめてもう一頭だ!」
「「「Yes sir!」」」
「ミーシャ、そいつ運んでくれ」
「はーい」
うん、わかってた。
森から運び出すの大変だもんね。
こういうのならお任せだよ。
で、2頭めを探してた時。
「ミーシャ! おい、ミーシャ!」
セルゲイさんが慌てた様子で私を呼んだ。
「どしたの?」
「いいから来い、でも静かに! 音を立てるなよ!」
「なんで?」
「いいから!」
よくわかんないままセルゲイさんのところまで行ったら、
倒木の根返りで土がめくれ上がった陰で腹ばいになってた。
「あっち、あの奥、見てみろ!」
双眼鏡を渡された。
なんだろ?
「何が……ええっ!?」
「だからでかい声出すなって!」
「あ、うん、でも、あれ……」
双眼鏡の中に映ったのは、日だまりで丸くなっている母熊と、そのそばに身を寄せた2頭の小熊だった。
その少し離れた場所で、もう1頭の大きな熊がのんびりと寝そべっている。
「最近来なかったわけだ。あいつもやるなあ」
セルゲイさんが、顎に手を当てて唸る。
「え、じゃあクマタロー……お父さん?」
「だろうな」
なんかすごいもの見ちゃった気がする。
あのクマタローの、肉とか持ってきてくれてゴロゴロしてたクマタローの、
お嫁さん。
しかも子供まで。
「……帰るか。なんか気が抜けた」
「……そうだね」
その間も、母熊と小熊たちは身を寄せ合って動かない。
日向ぼっこを楽しんでるみたいに、静かに丸まっている。
私は双眼鏡をもう一度だけ覗いた。
小熊が、もぞっと動いた。
その頭を、母熊が前脚で引き寄せる。
そのちょっとむこうで、クマタローがのんびりと転がってる。
パン
遠くで乾いた発砲音がして、クマタローがゆっくりと顔を上げた。
――こっちを向く。
目が合った気がした。
それから何事もなかったみたいに、また頭を下ろした。
「……帰ろ」
小さくつぶやいて、双眼鏡を下ろす。
「おう」
セルゲイさんが短く答えた。
二人で音を立てないように後ろへ下がる。
森の空気が、少しだけ緩んだ気がした。
「隊長、どこ行ってたんですか!」
「ちょっとな。で、どうだった?」
「sir! 確保したであります!」
全身枝やクモの巣、葉っぱだらけの3人が笑ってた。
「よしよくやった! 帰ったら……血抜きして寝かせて、今日ってわけにはいかねえが肉祭りだ!」
「「「「ヒャッハー!」」」」
「基地まで運ぶぞ! 最後の一仕事だ!」
「おまかせー! おっにく! おっにく!」
高カロリー錠剤をかみ砕いて、
縛り上げた2頭をまとめて抱え上げる。
このくらいならどうってことないからね!
ちょっと振り返って森の奥を見る。
なんか黒いものが動いた気がした。
「おーい、ミーシャ、帰るぞー!」
「はーい!」
ばいばい、クマタロー。
奥さん、大事にするんだよ?




