5話 半年+1か月 アラスカ あふたー
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通信が繋がった次の日。
朝起きようとしたら体が悲鳴を上げてた。
体中が痛い。
ちょっと動かすだけで変な声が出る。
でも、今日の仕事もあるし。
頑張らないと。
で、コアが破損した『ヤツラ』みたいなギクシャクした動きでご飯食べに行ったら、
ちょうどユイが食べ終わったところだった。
「あれ、ナツメ、どしたの?」
「あ、ユイー、あぅ、あちこち、痛くて、うまく、動けなくて……」
ユイの顔が真っ青になった。
「ちょっと、大丈夫? セルゲイさーん、ジョンのとこまで運んであげて!」
「ちょ、大げさ、私のごは……」
「取っておいてあげるから!」
有無を言わさずセルゲイさんに抱え上げられてそのままジョンの医務室へ放り込まれてしまった。
ユイの漫画で見たお姫様抱っこじゃなくて、荷物みたいに肩に担がれたのがなんか納得いかない。
ジョンは衛生兵なんだけど、ここには他に医療の心得がある人がいないから、そのままお医者さん代わりに色々やってくれてる。
「昨日、発電機のハンドル回してたら、今朝から全身が……」
診察台に下ろされながら答えると、ジョンは一瞬きょとんとして、それから「あー……」となんとも言えない顔をした。
「熱は?」
「たぶん、ないです」
「息苦しさ、痺れ、関節が抜けそうな感じは?」
「ないです。単純に、動くと痛いです……」
「腕上げてみて」
「いたたたたた」
「じゃあ足」
「はー……いぎぃっ!?」
横で見ていたセルゲイさんが、腕を組んでうなずいた。
「筋肉痛だな」
「筋肉痛だね」
ジョンまでうなずいた。
えっ。
「き、筋肉痛……?」
「そう、筋肉痛。戦中にもよくあったんじゃない?」
思い返してみると厳しい作戦の時にあったような気がするけど……
「こんなに痛かった覚えないよ?」
「そりゃそうだ。痛いとか思うゆとり無かったろ。」
そういえば戦争中は帰還するとすぐ医療層に放り込まれた覚えがある。
あの時も休んだらこんな風になったのかな・・・あたたたた
「ま、とりあえずマッサージでほぐそうか。
あ、脱がすからセルゲイは出てって」
「どして? いぎぃっ!?・・・」
「J……ナツメはそろそろ年頃の女の子の機微ってのも覚えようね?」
「そういえばミーシャも女だったか」
「なんだとー!! あひぃっ!?」
よくわからないうちにセルゲイさんが追い出されて、ジョンに上も下も脱がされた。
下着だけでベッドにうつ伏せに放り出されたまま動けない私の背中を容赦なく押し込む。
「に”ぎゃぁぁぁぁ!? 痛い痛い痛いぃぃ!!」
「なるほど。この辺は?」
腰の上のほうがぐいっと押される。
「あたたた!あ、あれ、なんかきもち・・・」
「ふーん……じゃあ、これなら?」
腕が持ち上げられて、思いっきり上に伸ばされる。
「あ”、お”ぁ、お”ぅ”ぅ”っ!?」
「なるほど。じゃあこれも効くかな?」
両足を、脹脛と脛がくっつくまで曲げられる。
「ひぎぃっ!? それ、だめ、ほんにぎゃぁぁぁ!?」
ジョンが揉んだり関節を曲げたり伸ばしたりするたびに体の中でなんかベリベリと剥がれる感じがして、変な声が勝手に出る。
ジョンは私の悲鳴を無視。全く手加減する気配がない。
息も絶え絶えに悲鳴も上げられなくなった頃、やっとジョンの処置?が終わったらしい。
「どう?少しは楽になったかな?」
言われて手足を動かしてみる。
まだ痛いけどさっきみたいに動けないほどじゃない。
「あ、すごい!! ジョン、ありがとー!! あいたたた……!」
「こらこら、無理しない。
あくまでも緩和処置だからね?
今日から4日くらい安静に。仕事もしないでいいから休んでること」
「え、でも、哨戒とか当番とか……」
「もう戦争は終わったんだから。ちゃんと休みなさい。」
さもないと強制入院させるぞって勢いでジョンに詰め寄られて思わずうなずいた私はあんまり悪くないと思う。
で、そのあと全身湿布だらけにされて、1日3回ちゃんと飲むようにって鎮痛剤貰ってやっと放免された。
「でも休みって、ここ、医療層ないよね?」
なんかジョンがそこからかーって顔で額押さえてる。
「誰か……ユイ君にでも教わりなさい」
「はーい」
そっか、戦争終わったなら、次の作戦もないんだよね。
休みって……仕事の後のとは違うのかな?
でもあれは時間決まってるし……
寝てるだけで、いいのかな?
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