11話 11ヵ月くらい アラスカー五大湖間 ①
ナツメです。
今日で移動行程はだいたい半分くらいになりました。
現在地はカナダ中央から西部に入りかけのくらいの湿地帯です。
冬の湿地帯は危ないからって狩りもできません。
お肉……
とか考えながら窓から外を見てると先頭車が停止して、
それを合図に半円形みたいに全車が停止しました。
「今日の移動はここまで。キャンプ準備!」
車が完全に止まってエンジンも止まると、いつもなら雪煙も収まるのに、
なんか今日は周囲がうっすら白くぼやけてるような?
車から降りてみるとアラスカほどじゃないけどこの辺も十分寒い……
あれ、今日はそんなに寒くない?
降りてみると地面も凍ってない。
きょろきょろしてるとタイガの奥の方から霧が流れてきてる。
どゆこと?
「ああ、凍ってないのが気になりますか」
車から降りてきた少佐が体を伸ばしながら説明してくれた。
「往路で確認しましたが、この先に戦前の温泉施設があるんですよ」
「「「温泉んんん!?」」」
うわびっくりしたぁ!?
後ろから大きな声を上げたのはグエンおじいちゃんとユイと……伍長!?
あんな声出せたの!?
「少佐! 健康維持と衛生管理の為にも今夜はそこを利用しよう!(すべき!)(です!)」
喰いつくみたいに進言してる……
なんでそんなに真剣なの!?
「洗浄剤でいいんじゃないの?」
「ダメ! 温泉は魂が休めるの!!」
マジな目のユイに、あ、はい、ソウデスカとしか言えなかった。
少佐も苦笑いみたいに笑いながら、
「1日を争うわけでもないですし、いいんじゃないですか?」
許可出ちゃった。
「よっしゃー! 野郎ども! 今夜は温泉よ!!」
「「「「Yeah!!」」」
ノリノリだ……伍長まで……
なんかあの宴会以降、ユイがトップな雰囲気がつづいてるんだよね。
少佐は少佐で何も言わないし。
「温泉ってそんなにいいの?」
隣にいたクローディアさんに聞いてみた。
「シャワーで十分……じゃないかな?」
だよねえ?
意気揚々と荷物をまとめる皆についてタイガの中へ入っていく。
体も動かしたかったし丁度いいんだけど……
「なんかあったかいよね?」
「温泉地なら地熱でしょ。まだお湯が出てる証拠よね」
ユイのテンションが高い。
タイガの中を進んでくと、ちょっと先に草ぼうぼうの元道路らしいスペースと、コンクリートの橋がかかった小川があった。
「お水は汲めるかな?」
橋から下を見てみると……湯気の出ている川!?
温排水?!
うそ、終わったんじゃなかったの!?
「周辺警戒!」
反射的に警戒報告!
「! どうした!」
「温排水! 『ヤツラ』かも!」
皆即全方位警戒に入った......と思ったら
「……ぶははははは!!」
セルゲイさんに笑いながら頭をポンポン叩かれた。
何故!?
「笑ってないで警戒しないと!」
「違う違う、温排水でもそれは温泉の排水だ」
「へ?」
セルゲイさんの指さす方には、
雪でつぶれた丸太を組んだ建物と、
古そうだけどちゃんと立ってる立派な建物。
そして道路わきに斜めになってる「HOT SPRING」 の看板。
「いらないお湯を排水して流してるんだよ」
「へー、これが。初めて見た」
何もなくてもお湯が流れてる川なんて変なの。
これじゃお魚も住めないじゃん。
そんなことを言い合いながら歩いてると、皆が一番頑丈そうな建物の前で止まった。
窓は板戸が閉まってて、入口もロックされてるけどガラス越しに見える中は綺麗そう。
「ハロルド、鍵開けて建物強度確認。使えそうなら今夜はここを使います。
終わったら歩兵隊と手すきメンバーで内部清掃を。洗浄剤は使っていいから」
「うええ、人使い荒いなあ」
「久しぶりにベッドで寝られるかもよ」
「……了解」
あっという間に入り口の鍵を開けると歩兵隊と一緒に中へ入ってった。
相変わらず手早いなー。
「アレックス達は夕食準備よろしく」
「アイ、マム」
「あと手すきメンバーは……一緒に来て」
正面から入って、広いホールの横の案内板に従って裏へ向かってく。
裏手は石造りの庭みたい。
真ん中にある池みたいな湯だまりから排水溝を通って、庭の縁の切りかけから外へ流れてる。
水は澄んでるのに、卵が腐ったみたいな臭いがすごい。
一面に敷き詰めてある石の表面には苔みたいなのが生えてるところも。
でも入り口と思われる建物側にシャワーブースがある。
なんで庭にシャワーがあるの?
「なにここ?」
「温泉よ温泉!!」
テンションの高いユイがシャワーをひねって水が出ないのを確認すると、ぐるっと見回して宣言する。
「床掃除すれば使えそう!
みんな、掃除するよ!」
うえ?掃除?
クローディアさんと顔を見合わせる。
するの?って顔になるよね、うん。
「この程度なら洗浄剤撒いて、
一回お湯流せば使えるようになるでしょ。
洗浄剤が効くのを待ってる間にご飯にしようか。」
言ってる間にみんなが洗浄剤を撒き始める。
段取りが速い。そんなにお風呂って楽しみなの?
てかこの洗浄剤の飛沫で服も体もピッカピカだけど
まだお風呂とか入る気?
わかんないなあ。
とか悩んでたら、
ホテル内からガスマスクつけた歩兵隊の皆が出てきた。
開いたドアの中は白く煙ってる。
「かなり虫がいたから洗浄剤に追加して燻蒸してきた。
2時間もすれば落ち着くだろ。」
お疲れ様。
生きてたら洗浄剤効かないけど、死んだ虫なら分解されるもんね。
久しぶりにベッドで寝られるのはいいなあ。
ってそれよりご飯ご飯!
レーションだけど食べないと何も始まらない!
アレックスさん、今行くからねー!
次回 温泉回…かな




