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絶滅戦争のそのあとで  作者: とおエイ


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11/13

10話 10ヵ月とちょっと アラスカー五大湖間 

ナツメです。


私たちは今、アラスカから五大湖近く――旧世紀にはCFSノースベイって呼ばれてた基地へ向かってます。

今はそこの地下施設が北米管区統括になってるんだって。

よく、あんな距離で電波拾えたよね。


この辺ではもう冬が始まってて、一面雪原。

移動距離は大体1日100㎞くらい。

時速20㎞程度だけど、冬が始まったこの季節では多分最速。

雪上車が動かなくなったらアウトだから、毎日夕方から整備してる。


今日は一昨日みんなで狩ったお肉が食べられる日!


雪上車を半円に止めて風よけにし、真ん中で焚き火がぱちぱちと音を立てている。

じゃあ料理だね! 

って張り切ってたら……


「ナツメ、クローディア、伍長!……あとセルゲイ達!お前らはそこ座ってろ」


「「「「「「「!?」」」」」」」


元主計長、現料理長のアレックスに、私たちはまとめて戦力外通告された。


「なんでー?!」


抗議する私。クローディアさんも隣でうなづいてる。

伍長は……うん、期待してない。


「お前ら、基地にいたとき何やったか忘れたとは言わせんぞ!

 まずナツメ!」


「私!?」


「『手伝えることある―?』って来たから経験者かと思って

魚焼かせた時、『時短』って言って火力最大にしやがったよな?」


「だって、強火なら早く焼けるって昔の隊の人たちが……」


お腹すいてたんだもん!


「火力上げりゃ中が焼けるころには真っ黒こげになるんだよ!」


そんなぁ!?食べられたからいいと思ってたのに!?

後から思えば苦かったけど......!


クローディアさんは自慢げに腕を組む。


「私はちゃんと鱗取れた」


「それで終わりじゃダメなんだよ!」


「鱗とって焼けば食べられる」


「血とワタ抜いてから焼くのが料理!」


あ、視線そらした。


レン伍長はいつも通り何も……


「……俺はレシピ通りに作ったはずだが」


え、伍長もやってたの!?


「 「適量」って書かれてるのに岩塩ブロックごと載せて何がレシピ通りか!!

 あんなの喰ったら一般人は死ぬの!!」


「適量ってのは好きな量という意味ではないのか? それにちゃんと塩味になったぞ?」


「塩味てのは塩の味しかしないって意味じゃない!!!」


最終的に私たちは焚き火の前に並ばされ、


「絶対に!手を!出すなよ?」


とぶっとい釘を刺された。

そこで鼻で笑ったのがセルゲイさんたちだ。


「さすがの強化兵も、こっち方面じゃ形無しだな」


「だってレーションは蓋開ければ食べられたし……ちゃんとあったかかったよ?」


あったまれば、料理……だよね?

それにクローディアさんと伍長がうなづいた。


「海の中は火気厳禁」


「偵察中もだ」


そうそう。

それに料理の味って調味料とかじゃないの?


「そんなことだろうよ。その点俺ら歩兵隊は補給なしで放り出されたときのサバイバル訓練もしてるからな」


と調子に乗ったところで、アレックスの怒号が飛ぶ。


「セルゲイ! あんたたちも同レベルだからな!!」


言われて自分たちと私たちを交互に指さすセルゲイさん。


「ま、まて! 俺たちはちゃんと『煮る』を知ってるぞ!!」


「そうだそうだ!」


「横暴だ!」


尻馬に乗って歩兵隊が揃って抗議をはじめる。


「知ってればいいってもんじゃない!あんたら何でも煮ればいいと思ってるだろ!」


「煮とけば腹は壊さないよな?」


「だよな? 生でキノコ喰ったヤツは3日寝込んだし」


「ああ、焼いたの喰ったヤツは1週間笑い続けてたしな」


「だから『煮るは正義!』だろ?」


「はい同レベル! 殺菌剤から栄養剤までごった煮にするのは料理とは言わん!」


セルゲイさんたちは揃ってガーン!の顔になり、

結局、私たち7人は小さくなって焚火の前に並ぶ羽目になった。


クローディアさんは膝を抱えて小声で文句を言ってる。


「鱗取って焼けば食べられる……」


「焼き方なんてあるんだね……」


私が小声で返す。


「魚なら焼かなくても食べられる」


「日本製としてはそれには同意したい」


食べたことないけどサシミって魚を生で食べる文化があるってユイが言ってた。

そんな愚痴を言いあってたら伍長がぽつりと聞いた。


「火が通ればいいのではないのか」


「え? 何の話?」


「肉だ。中まで火が通れば同じじゃないのか?」


伍長の言葉に、思わずうなずく。


「そうだよねえ」


そこへ料理班のアレックスが横から顔を出した。


「伍長、ただ焼くのは原始人!

 火加減を調整して味にこだわるのが文明!

  ……お願いだから覚えて……!!」


「……火加減?」


「何その初めて聞いた言語だみたいな反応!?

 あんたメイドインチャイナだろ!?

 お国が自慢してた中華料理五千年の歴史はどこ行った!?」


「美味い不味いくらいはわかる。だが味にこだわったら偵察兵はできん」


「いやそうなんだろうけどさあ!」


平然と返す伍長と頭を抱えるアレックスさんのやり取りをみてセルゲイさんたちが笑う。


「俺らのほうがまだマシだな」


「同レベルだって言ってるでしょ!ああもうどいつもこいつも!!」


アレックスさんの叫びが雪原に響いた。


*********


そんな大騒ぎの中で、アレックスさんを中心に料理ができる組が手際よく作業を進めている。

あったかい料理を作るだけでもすごい工程。


肉を切る音。

煮える匂い。

炭で少しずつ焼かれていく香ばしい香り。

脂が落ちて、じゅ、と音がした。


「……いい匂い……」


思わずつぶやくと、伍長も珍しく小さくうなずいた。

クローディアさんはしばらく悩んでたみたいだけど、


「……食べられる、よりおいしいのほうがいいよね?」


と言ったので、私と伍長は顔を見合わせた。


「じゃあ、余裕ができたらアレックスさんに料理教えてもらおうよ。

 ただ食べられるだけじゃなくて、おいしい味になるように……」


「……がんばる」


「煮るなら任せろ。いくらでも教えてやる」


「セルゲイさんたちも教わる側だからね?!」


さっき同レベルっていわれてたのにどうしてそんなに自信満々かなあ!?


7人で焚き火の周りに座りながら、

漂う匂いにお腹を鳴らし続けた。


こういう日もある。


あ、久しぶりのお肉は涙が出るくらい美味しかった。 

次の日からしばらく狩りの要望が増えたのは……しょうがない、よね。


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