12話 11ヵ月くらい アラスカー五大湖間 ②
ナツメです。
この後お風呂使ってからベッドで寝られるとなったら、皆がすごい勢いで夕飯を終わらせて散っていきました。
もっと味わおうよう……
皆の勢いに気圧されてあわあわしてたら、いつの間にか残ってるのはアレックスさんと私とクローディアさんだけ。
どうしよ?片付け手伝ったほうがいいのかな?
「ほれ、お前らもさっさと風呂入ってこい。こっちの片づけは俺がやるから心配すんな」
「アレックスは入らないの?」
クローディアさんに問われて、アレックスは首を振った。
「俺はそういう習慣なかったからな。洗浄剤で十分だ」
そうだよねえ。
「まあ初めてなら一回経験しといてもいいんじゃないか?」
そう言って後片付けに戻っていく。
うーん、でも、……洗浄液につかりに行くんだよね? なんか気が進まないなあ。
シャワー動いてたらあったかいシャワーだけでいいのに。
クローディアさんと顔を見合わせて、しょうがない、行こうかって感じでお風呂へ向かう。
なんで更衣室に男と女の区別があるんだろ?
一応女のほう使って全部脱いでクローディアさんと外へ。
……寒い。
床はあったかいけど裸には吹く風が冷たい!
「あ、ナツメにクローディア、こっちこっちー」
湯だまりの縁に裸で腰掛けてるユイが呼んでる。
一緒にジョンやハロルドも入ってる。
頭に畳んだタオル載せてるのは何なんだろ。
でも、その前に……
さーむーいー!!
クローディアさんはアラスカの海にいたくらいだから平気かな?って見てみたら
縮こまって裸は寒い……って震えてる。
そうだよね。裸で外に立ってるんだから、いくら強化兵でも寒いよ。
このまま入っていいの?
「あーはいはい落ち着いて。
はい、この手桶でお湯汲んで、軽く洗ってから入る!」
わざわざお湯から出てきたユイが説明してくれる。
洗浄液に入るのに洗うの?
お湯はあったかいからうれしいけどさあ。
ユイに指導されるがまま、クローディアさんと2人してざっと洗ってからお湯だまりへ。
40度くらいかな? あ、頭まで潜らなくていいんだ。
私にはちょっと深いから端の方の浅いところで手足伸ばして……
……違う。
これ、洗浄液と違う!
あったかいし……なにこれ、気持ちいい……
うへえ、力はいんないよぉ……
「わたし、ここにすむ」
クローディアさんがあおむけに伸びて、お湯に2つの島を浮かせたままでろんでろんに溶けてる。
「久しぶりの温泉は格別だなあ」
「血行を良くするのは健康にもいいんですよ」
ジョンやハロルドもなんか雰囲気が柔らかい。
「どうよ温泉は。これが魂の洗濯よ!」
ユイが胸を張って宣言してる。
むき出しの胸もつやっつやだ。
ごめん、私が悪かった。
洗浄とは違うよこれ。
「たまに無性に入りたくなるのよね。今までは戦争中だからあきらめてたけど、これからは我慢しなくていいなら温泉めぐりでもしようかな」
ユイが真剣な顔で何か言ってる。
「ユイってたまに年寄り臭いよね」
「そりゃあなた。私らみんな10年くらい年取ってないもん。精神くらいは育つわよ」
聞いてたジョンやハロルドもうんうんってうなづいてる。
どう見ても20代前半なユイだけど、いくらなんでもその年で佐官なんてなれるわけがない。
実年齢は……はい、黙ります。
軍の人って、技術が完成した時点で成長固定されたんだって。
退役させてる余裕は人類にはないって。
だから見た目も変わらないし、衰えもしない。
もちろん私たち強化兵も固定済み。
グエンのおじいちゃんみたいに、技術ができた時点でもう年寄りだった人もいるけど、
それでも死ぬまでずっと前線に出せるってことでもある。
まあ、寿命まで止まるわけじゃないんだけどね。
解除はできるって話だけど、皆どうするのかな?って聞いてみたら
「除隊したら即解除するよ。子ども欲しいし」
てハロルドが言いだした。
「君はまず相手がいないだろ」
「そりゃジョンも同じだろ!」
「妻はいた」
「「「ジョンって結婚してたのー!?」」」
「戦前にな」
「あ……すまん」
「気にするな」
何か微妙な空気になっちゃったな。
そうだよね。戦前ってことは……
「ユイは誰かいないの?」
「え、私? いると思う?」
いないか。
「ちょっとまちなさいナツメ。それどういう顔!?」
「だってユイがいると思う?って聞いたんじゃん!!」
「私、固定時にこの年だよ?! 開戦時なんて未成年だからね!」
あ、そうか。
固定されると、女の人は生理も止まるし、恋愛とかそういうのも薄くなるとか。
男の人もなんか影響あるんだって。
前にその話になった時、歩兵隊の人たちが微妙な顔してた。
……そりゃ普通に恋愛とかないわー。
ドノバンさん、どれだけクローディアさんのこと気に入ったんだろ。
そんなことを考えながらお湯に浮いてるユイとクローディアさんの胸部装甲と、自分の虚無な装甲をつい比べてしまう。
固定解除されたら追いつけるのかな……




